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雑学探偵の妄想推理とか……

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前回書きましたが、すっかり麻耶雄嵩さんにハマってしまい、現時点で7冊読破しました。





メルカトルと美袋のための殺人http://www.7netshopping.jp/books/detail/-/accd/1101672012/subno/1



一応出版された順に並べてあります(「翼ある闇」が麻耶雄嵩さんのデビュー作)。以下、ネタバレしているうえに麻耶雄嵩さんの作品を読んでいない方には全然面白くない話になっているのでご容赦ください

麻耶雄嵩さんのミステリ小説には、木更津悠也(名探偵)や如月烏有(編集者)など、魅力的なキャラクターが登場しますが、なんといっても傲慢・不遜で悪辣な銘探偵メルカトル鮎が白眉ではないでしょうか(ちなみにワトスン役は推理作家の美袋三条)。

彼は「翼ある闇」で無惨にも惨殺されてしまいます。1990年の12月初旬のことになります。麻耶雄嵩さんのデビュー作でいきなり殺されてしまうメルカトル鮎も可哀想な存在ですが、「翼ある闇」以降の作品に登場するメルカトル鮎はすべて回想のエピソード、ということになります。

…のハズですが、どうも「銘探偵メルカトル鮎は生きているのでは?」と疑っている人も多いようです(自分もその1人です)。

理由は「メルカトルかく語りき」の1編の「答えのない絵本」の中で、「そんなことをしなくても携帯電話のカメラで画面を撮れば済むことだ」という台詞があるからです。カメラ付き携帯電話が一般に普及するのはメルカトル鮎が死んでから10年も後のことです

これはいったいどういうことなのでしょうか。「麻耶雄嵩さんのウッカリ」でないとして、作品中の台詞等を調べていくと、「メルカトルと美袋のための殺人」の中に何となく伏線が張られていることがわかります。

哀しいかな、基本的に私は長編には向かない探偵だな」これはメルカトル鮎の台詞ですが、頭脳明晰すぎて事件があっという間に解決されてしまうから、という意味の他に、暗に「長編に登場する自分は虚構だ」と言いたかったのではないでしょうか。

ワトスン役の美袋三条は、いつもメルカトル鮎に酷い目に遭わされています。とある事件のときなど、殴り倒されたあげくにクロロフォルムを嗅がされて、山に捨てられたりしています。本当にメルカトルは鬼畜ですね。

なもので、美袋さんはときおりメルカトルに殺意を抱いてしまうようです。『いつか殺してやる』…彼の魂の叫びです。

つまり、こういうことなのではないでしょうか。「麻耶雄嵩イコール美袋三条。したがって麻耶雄嵩ワールドはすべて美袋三条が執筆したもの。メルカトル鮎が作品中で死んだのは、現実ではなし得ない復讐を小説中で行なった為

デビュー作の「翼ある闇」は、美袋さんが日頃のうっぷんを晴らすために執筆したものでした。そのため銘探偵メルカトル鮎は、かなり残忍(しかも少し滑稽)な死に方をしています

メルカトル鮎から「翼ある闇」の中の自分の扱いが間抜けすぎるとして、美袋さんは彼から酷い目に遭わされます。困った美袋さんは「夏と冬の奏鳴曲」で、メルカトル鮎をちょっとだけ活躍させます(そもそも彼は長編向きではないのです)。それもメルカトル鮎の気に入らず、頭にきた美袋さんは「痾」で再びメルカトルが死んだことを強調します…

てな感じで推理作家の美袋三条(麻耶雄嵩さんの分身)さんは、小説を執筆していったのではないでしょうか。メルカトル鮎は短編の活躍のみが、真実の姿なのでしょう

まあ、これはあくまでメルカトル鮎・美袋三条コンビの目線からの推測ですが(都合により他のキャラは無視)。

こんなことを妄想してしまうくらいメルカトル鮎は実に魅力的な存在です(酷い人なんですけどね)。


今回、麻耶雄嵩さんの作品を続けざまに読みましたが、ちょっと普通のミステリと違っているので、好き嫌いが分かれるところでしょう。ラストで謎が解明されてもすっきりとした気分にさせてくれません(ちゃんと謎が解明されない場合もあり!)。ただ、そこがいいんだ!とハマる人も多いと思います。
あと、短編以外は出版された順番に読まないと訳がわからなくなる可能性があるので注意が必要です。けっこう後日談が多いので。

しかし、クセになりますね。麻耶雄嵩さんという作家は。講談社から出版されたものしか読んでいないので、他の作品も探して読んでみようかな…


追記:「メルカトルかく語りき」の1編の「収束」の中に、カテジナ書という幻の本が登場します。その書を読んだ者は、キリストのごとく死後、人神となって蘇ることができるというパワーを秘めた本です。メルカトル鮎はその本を手に入れたらしいので、「翼ある闇」で本当に死んでしまったけれど、カテジナ書のチカラによって蘇ったのかもしれません

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閉じる コメント(6)

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初めまして。こんにちは。
「翼ある闇」は香月の創作だという説や、短編と長編は別の世界(パラレルワールド)という説、烏有がメルカトルを継いだ説などもありますね。
カテジナ書説というのは思いつきませんでしたが、麻耶さんならあるかもですね。。

2011/9/4(日) 午後 8:40 [ - ] 返信する

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コメント有難うございます。
この後、摩耶さんの「鴉」「蛍」と続けて読んだのですが、どちらも傑作だと思いました(「隻眼の少女」も購入済みですが、未読です)。
特に「鴉」は、メルカトルの(「闇ある翼」とは)違った過去が書かれていて、興味深いですね。

摩耶さん自体は、一体どういう風に意図して書いているのでしょうね?

2011/9/5(月) 午前 6:55 [ ヒガシ ] 返信する

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「鴉」と「翼」のメルの過去が矛盾しているところを見るとパラレルワールド説が強いかもしれないですね。
麻耶さんがこの辺の真相を明かす時は来るのでしょうか…

2011/9/17(土) 午後 11:46 [ - ] 返信する

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メルカトルは食えないキャラなので、その場その場で過去をねつ造しているのかもしれません…

本当は、まったく違った生い立ちなのかもしれませんね。

ところで今「隻眼の少女」を読んでいる最中なのですが、摩耶さんは "メルカトル"といい、"御陵みかげ"といい、奇抜な扮装をした探偵が本当に好きですね…

2011/9/18(日) 午後 11:03 [ ヒガシ ] 返信する

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メルカトル鮎検索していて来ました。私は友人と考えた末に、「阿」で烏有を弟子として教え込み、結果、「鴉」は二代目メルカトル烏有なんじゃないか、と思いました。「鴉」でメルカトルは自分(烏有)の出自を友人(鮎)の出自としています。なので短編などのメルカトルは烏有ではないでしょうか?性格や推理力までメルになってしまって変ですが。ただ、「とうり」なども含め、あの世界はかなり異質がまかり通る世界です。 削除

2012/6/27(水) 午後 5:20 [ rainy ] 返信する

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コメント有難うございます。
確かに「阿」のやりとりを思い返してみると、そんな感じもします。

「隻眼の少女」のように二代目襲名というのも、ありなのかもしれません。

ところで最近、麻耶さんの作品が読めなくてちょっと寂しいですね(何かのアンソロジーで短編を1本読んだきりです)。

何か最近の麻耶さんの作品の情報がありましたら、お教えください。よろしくお願いします…^^;)

2012/6/27(水) 午後 8:05 [ ヒガシ ] 返信する

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