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瀬田君と君づけで呼んでいるが、たしか鉱山学で理学博士の学位を取っている、先祖は由緒ある武士の家系だそうだ、血筋もいい、そのうえ技術主査の要職についている、若干31歳の立派な男だ。まだ独身なので、こんどの事故が解決したら家の娘と飯でも食わせるか。
「オーイ母さん、晩飯出来たか?まだ?先にビールもってこい。
それに、瀬田君と2・3週間後に飯を食うから、おけいにも言っとけ。」
問題がひと段落したので、調子よく母さんに軽口をたたいてしまった。きっと、晩飯の時に、なにか反論されるに決まっている。「お父さん、最近、口が臭いわよ、歯医者さんに行ったら、おけいに言っとけって何?こどもじゃないから、もっとわけきかせてよ、まったく。」「それと、廊下の電灯が切れているのよ、気がつかないの、はやく直してよ、こういうことにまったく気がつかないのだから、それでよく仕事が務まるのね。」とかなんとか、対策を考えておかなくては。
それに電灯を換えておかないと、とディスプレー席を離れることにした。
ビールを台所で手に入れて、ディスプレー席に戻る。
これで、ようやく時間ができた。続きを書くか。
まず、高速の2倍からである。
試験は、宇宙船は秒速1000Kmに達した段階で、慣性飛行に入り、後方2Kmにキセノンーアルゴン同心円逆滑り装置(以下煩雑なのでKAR)発射用宇宙船を配置。
慣性飛行すなわち、加速度ゼロの状態を保つことが重要である。
当初の実験で、何回もテスト宇宙船が回収できなかった、この一つの原因は、加速度のついた状態でKASに突入すると、加速度は無限に拡大し、それはもはやKARでは補足できない状態までのスピードになると考えられていた。
それらの完了後、キセノンーアルゴン同心円滑り装置10億ボルト(以後煩雑なので、KAS−1と略)を前方1Kmに発射、同時に後方1Kmにキセノンーアルゴン同心円滑り装置22億ボルト(KASより少し小さいが速度は2倍になる電圧)(以後煩雑なので、KAR−2と略)を発射、その1秒後KAR発射用宇宙船からKARを発射。
2秒後宇宙船は、追尾してきたKARに追い越され、正常飛行に回復。
少しややこしいが、とにかく、宇宙船は2秒で120万Km飛行した。地球と月の距離の4倍である。
飛行士は、肉眼でも、太陽の位置、地球の位置、月の位置を確認し、その移動を確認した。
理論は正しかった。
飛行士は生きていた。そして、機体はまったく損傷なしで飛行している。
静止衛星と地上の管制室は、一端消えた宇宙船が2秒後にはるか遠方に移動したことを確認した。
ワープを人類が初めて経験したのである。
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