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できることから始めるべしとの考えで、
経済活動はすべて、地下ドームと宇宙船とワープ装置の建設に向けて行われることに、自然と方向性が固まっていった。
日本は、地下に合計4000個のドーム、総面積800平方Kmしかなかった。
この面積では、日本の人口5千万人を収容できるが、食糧生産、生活道具生産の場所は相当欠けると予想され、ロシアにその代替ドームの提供をお願いする方法と、人工的なドームの掘削もしくは地上のドームの製造が検討された。
ロシアは、必要なドームの30倍の面積を持っていたが、軍事的な意図や、独特の戦略等により、日本が代替を求めることは不可能な状況であった。
日本は、人為的な掘削を選択した。
幸い日本は海に囲まれ、核融合炉の燃料トリチウムには事欠かない、エネルギーが相当必要な融解掘削システムでも十分ドームの製造は可能と判断した。
日本は、ドームの製造に必要な融解掘削システムの製造と、食糧生産に必要な組織培養システムの製造準備に世界に先駆けて着手した。
まず、国内にある800のドームの入り口を融解掘削システムで堀り、ドームの整備に着手した。
ドームの地面は、でこぼこであり、シリコンが主体なため、平面にならすには、融解掘削システムを応用し、スケートリンクの整備よろしく、シリコンを融解してのち冷却する方式で、整備した。
天井は、同じくシリコンで出来ており、これは、修繕する必要もない強固なものであることが判明しており問題なかった。地面の整備で事足りることは、幸いであった。
ドーム都市の試作1号は、北海道帯広地区に2122年に完成した。
居住区は、基本的に高さ80メートル(15階建のビル)とし、1家族(平均3人)辺り60平方メートルに制限した構造とした。
居住区総床面積100万平方メートル(1平方Km)、学校、寺院、教会、公園など公共の施設は居住区に設けた。
生産地区は、食糧生産地区は、タンクの高さに制限をし、1階20メートルとし、4階建を基本とした。床面積2平方Kmに合計、50棟の生産工場を建設した。
生産の内容は、食糧用組織培養設備、水耕栽培設備は新規に設け、生活必需品(電気・電子機器、家財道具、台所用品、衣服、移動機器など、あらゆる物資の生産)の生産は、地上の既存設備を移設した。
電力(エネルギー)は、当面地上の核融合炉から供給し、最終段階で、核融合炉を地下に移動する計画である。
これで5万人の生活が、この試作1号で出来るのである。
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結果は、長径不明、短径100メートルから500メートルの間のデータであった。
このデータに基づき、人間が侵入できる坑道を掘削することになり、最新の岩石融解型掘削機が導入され、1ケ月かけて、掘削された。
掘削班は、酸素ボンベを携帯し、いよいよ地底ドームに侵入した。
巨大なドームは、調査の結果、長さ5Km以上あり、ドームの天井は、ほぼ円形であり、その強度の強さを証明していた。
世界中でも自然のドームが試掘され、AT2122年までに北緯30度〜北緯60度、南緯30度〜60度に偏った地域に、ドームが多数存在することが分かってきた。
このドームは、ほぼ100メートル程度の高さで、短径200メートル前後、長径1000メートル前後のものが多く、これが同緯度に数キロ間隔で並んでいることが分かってきた。
数は、今後の調査により変動するが、北緯30度〜北緯60度では、60万個、合計面積12万平方Km、南緯30度〜南緯60度では、20万個、合計面積4万平方Kmと推計された。
これは、地球人口70億人を収容するためには、一人当たり10平方メートル必要としても十分な計算となる。又、ドームの高さ平均100メートルを考慮すると、十分な体積があることが判明した。
エネルギーは核融合炉で十分ある。
しかし、地下ドームに居住場所を設けるには、想像を絶する資材、鉄骨、セメント、プラスチック、ガラス等々が必要である。しかし、原料は地表に必要量存在する。
又、食糧は、現在は、耕地での生産がその5%を占めているが、ドームの大きさからすると、耕地での生産は不可能であり、バイオテクノロジー、中でも、組織培養技術で、いわゆるタンクの中で、食糧を生産する方式を取らなくてはならない。野菜は水耕栽培が可能である。
組織培養の為の炭素・酸素・窒素・水素・ミネラルは、空気、岩石、海水、産業廃棄物から無限に供給できる。
又、組織培養のための遺伝子は、地球上の有用植物、有用動物のすべてが網羅されており、幾らでも合成可能である。
理屈では、地下にドームが必要数あり、建築素材もあり、食糧生産も可能である。
しかし、地球人70億人の為のすべての施設、食糧生産機能を整えるに、どれだけの時間が必要なのかが問題であった。
時間が限られている。
火星の軌道にまで至るのにあと30年しか時間がない。
それが限界だ。
国連、いやもう人類会議というのが正しいのか。生きるか死ぬかの議論は待ったなしである。
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アメリカ合衆国、ロシア、フランス、ドイツ、中国の各国は、日本のワープ技術を研究し、それぞれ相当なレベルまで到達していたが、まだ、光速の10000倍の実用化実験には到達できていなかった。
ワープはいったん置いて、ドームに話を戻そう。
第3章 自然のドームの利用と退避
アメリカ合衆国は別にして、ロシア、フランス、ドイツは同じ大陸であり、自然のドームが偏在している、特にポーランドとベラルーシ、ウクライナ、スペインにその60%以上が偏在していることもあり、その利用の政治的問題や、掘削技術の協議に多くのエネルギーが投入され、ワープはどちらかというと日本まかせであったのである。
自然のドームのない、アフリカ中部、アラブ、インド、インドシナ、インドネシアをどうするのか、ヨーロッパのドームの偏在、これらは新たな問題であった。
地球内部のドーム掘削班の経過である。
今我々は、その完成したドームで暮らしているのである。
AT2030年ごろから、資源の枯渇の問題で、盛んに、周回衛星による資源探査や、大深度の地下の掘削調査が実施された。
周回衛星のデータでは、シアル層のところどころに電波反応が異なる、電波の反応が2重3重になる場所があることが分かってきた。
又、大深度、およそ3000メートルから4000メートルの地下の掘削調査では、ところどころで、100メートル前後の地層の欠落が報告されていた。
これらのことは、いままで、興味をもつ人々はいなかった。ただ、鉱物資源の種類と量に興味があった。
今回の地球公転軌道の変化に関連した地球内部の空洞(ドーム)の必要性という観点で、地中の様々なデータの中で、この空洞を予想させるデータは注目された。
それを確信しない人々の中には、すぐさま洞窟を掘削するべきで、空洞を探すことは空論であると主張する者もいたことは確かであった。
しかし、1000平方Kmにも及ぶ洞窟をどう掘るのか、技術・装備があるわけではなかった。
自然の空洞をまず調査するのが妥当だとの意見がほとんどであった。
かくして、ドーム掘削班は、AT2119年、過去の掘削データを検証し、北海道帯広地区の掘削点を再調査することとした。
掘削点は、すでに埋め尽くされていたが、最初から掘削するのとは異なり、きわめて容易に空洞地点に到達し、その深度は、地表から1600メートル、空洞の高さは100メートル、気温18度C、湿度95%、酸素濃度5%、窒素95%、他わずかであった。
続いて、その広がりを検証するため、最初の掘削点を中心に100メートル、500メートル、1000メートルの同心円上に合計9ケ所を掘削した。
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飛行士の遺伝子ゲノムの解析が行われ、変化はなかった。
同時に搭載した、サルとバクテリアの遺伝子ゲノムの解析でも、変化はなかった。
あとは、人類の生殖能力と子孫への悪影響の問題であるが、それを検討している時間はあるのか。
「お父さん、夕食が出来ましたよ。早くいらして。スープがさめますよ。」
お母さんのすこし尖った口調である。先ほどの私の軽口が気に障っていることは確実である。3本目の缶ビールを開けて、食堂に向かった。と言っても、わずか5メートルの移動である。
今日も2人で夕食である。おけいは、最近、中央管理室の仕事がまだ終わっていないのか、友達とおしゃべりしているのか、夕食の時間に帰ってきたことはなかった。
けっこう立派な夕食である。
コーン風味のスープ、人造牛肉とピーマンの中華風青椒肉糸、麻婆豆腐である。
なんだ、オレの好物ばかり作りおって、今日は、もう2本ほどビールがいけるな。
そう思って、いただきますと箸をつけようとすると、来ました、「お父さん、先ほどのなに?おけいと瀬田さんの食事を用意せよと言うの何?もっと聞かせてよ。」
ビールを一口やって、瀬田君について今日思ったことを話してやった。
「そんなこと、どうするか私にまず言ってよ、その上で、おけいに意見も聞いて、それからにするわ!早とちりで、ご先祖が武士ではなくて、百姓だったら、どうすんの、家だって武士なのに、百姓でいいの?そこんとこなどもっと正確に調べてよ。まったく。」
「はいはい、早とちりでした。申しわけありません」と、ここで言うと、勝ったとばかりに、攻撃がくるので、ここはだんまりで、ビールと料理をせっせとやって時間をおき、「うまいねこれ」とはぐらかして、その上で、「ところで、お母さん、瀬田君と会ったことあるだろ、いい男だよね、そう思わない。先祖が武士というのはそんなことどうでもいいが、人物だよ、今日の報告なぞ、はっきり言ってオレより上手だ。いい男と思うがね。」
「でも、いちおう先祖はさっそく調べるがね」「いや、うまい、このビール最近よく買ってくるが、これもいいね」としゃべりまくってごまかした。
いいタイミングで携帯ディスプレーがプププと鳴る。
瀬田君だ、鹿児島に着いたようだ。
これで、家内との苦しい夕食にもケリをつけられる。
ディスプレー席に戻り、報告を聞くことにした。やれやれ。
引き続き、光速の10000倍までの試験が順番に実施され、問題なくワープができることが証明された。
ただ、KAS、KARに必要な電力供給装置の原料が膨大であり、リチウムとアルカリ土類元素(具体的な名称は公開されていないが)の枯渇の問題があった。
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瀬田君と君づけで呼んでいるが、たしか鉱山学で理学博士の学位を取っている、先祖は由緒ある武士の家系だそうだ、血筋もいい、そのうえ技術主査の要職についている、若干31歳の立派な男だ。まだ独身なので、こんどの事故が解決したら家の娘と飯でも食わせるか。
「オーイ母さん、晩飯出来たか?まだ?先にビールもってこい。
それに、瀬田君と2・3週間後に飯を食うから、おけいにも言っとけ。」
問題がひと段落したので、調子よく母さんに軽口をたたいてしまった。きっと、晩飯の時に、なにか反論されるに決まっている。「お父さん、最近、口が臭いわよ、歯医者さんに行ったら、おけいに言っとけって何?こどもじゃないから、もっとわけきかせてよ、まったく。」「それと、廊下の電灯が切れているのよ、気がつかないの、はやく直してよ、こういうことにまったく気がつかないのだから、それでよく仕事が務まるのね。」とかなんとか、対策を考えておかなくては。
それに電灯を換えておかないと、とディスプレー席を離れることにした。
ビールを台所で手に入れて、ディスプレー席に戻る。
これで、ようやく時間ができた。続きを書くか。
まず、高速の2倍からである。
試験は、宇宙船は秒速1000Kmに達した段階で、慣性飛行に入り、後方2Kmにキセノンーアルゴン同心円逆滑り装置(以下煩雑なのでKAR)発射用宇宙船を配置。
慣性飛行すなわち、加速度ゼロの状態を保つことが重要である。
当初の実験で、何回もテスト宇宙船が回収できなかった、この一つの原因は、加速度のついた状態でKASに突入すると、加速度は無限に拡大し、それはもはやKARでは補足できない状態までのスピードになると考えられていた。
それらの完了後、キセノンーアルゴン同心円滑り装置10億ボルト(以後煩雑なので、KAS−1と略)を前方1Kmに発射、同時に後方1Kmにキセノンーアルゴン同心円滑り装置22億ボルト(KASより少し小さいが速度は2倍になる電圧)(以後煩雑なので、KAR−2と略)を発射、その1秒後KAR発射用宇宙船からKARを発射。
2秒後宇宙船は、追尾してきたKARに追い越され、正常飛行に回復。
少しややこしいが、とにかく、宇宙船は2秒で120万Km飛行した。地球と月の距離の4倍である。
飛行士は、肉眼でも、太陽の位置、地球の位置、月の位置を確認し、その移動を確認した。
理論は正しかった。
飛行士は生きていた。そして、機体はまったく損傷なしで飛行している。
静止衛星と地上の管制室は、一端消えた宇宙船が2秒後にはるか遠方に移動したことを確認した。
ワープを人類が初めて経験したのである。
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