叛乱 1954年/新東宝 監督/佐分利信
細川俊夫・山形勲・丹波哲郎・佐々木孝丸・鶴田浩二
藤田進・御木本伸介・沼田曜一・島田正吾・辰己柳太郎ほか
伊勢神宮と明治神宮に参内する一人の軍人。
なにやら狂信的な妄想に憑りつかれた様子。相澤中佐。
わたしの行動が正しいなら天誅を成功させよ
わたしの行動が邪であれば未遂に終わらせよ
なんじゃコリャ・・・どこの酔っ払いの戯言よ。
まるで下駄を飛ばして天気を占うの如し
こんな基地外じみた祈願をする時点で狂信なのであるけれど、すでに相澤本人に自覚なし。
そして取り返しのつかない凶行。永田鉄山を殺害する。
この相澤と似たような狂信の集団がいた。
自称こそ右翼なれどもナチスドイツと似た社会主義革命・全体主義みたいなものだから左翼思想ということになる北一輝に洗脳されし皇道派の青年将校たち。226事件の実態は〈尊王〉といいつつ〈天皇親政〉を利用して国家を改造し社会主義体制に衣替えせんとするもの。
権門上に傲れども国を憂うる誠無し
財閥富を誇れども社稷を思う心無し
そういえば幕末にも清河八郎なる詐欺師みたいなの居たよね。
将軍を警護し治安維持するぞーーー、と浪士を集めといて、じつは尊王倒幕だと^^;
そうはさせるかと将軍警護・治安維持を貫いた浪士たちは
近藤勇・土方歳三・山南敬助・井上源三郎・沖田総司・長倉新八・原田左之助・藤堂平助ほか。
かれらは壬生浪士組。その後に新撰組と改める。
だいたい統制派・皇道派と分けることに無理もある。
統制派は永田鉄山が鎮座して抑えているからこそ統制がとれていたのに、その永田を殺害したら、統制派の将軍たちは浮足立つ。次のポストは誰だ、自分が要職に就けるかと。
重なるのは2009年からの民主党政権。小沢一郎の戦略で政権を奪えたのに、狡猾な官僚に篭絡されるまま(小沢を座敷牢に閉じ込めとけば自分たちが好きなようにやれる)と勘違いした政治家たち。
非公開の軍法会議の意味するところ。相澤と、226事件の青年将校たちは鉄砲玉に利用された。
やることさえやってくれれば、あとは用済み。余計な事喋られちゃ困る。死刑。
相澤を唆して永田を葬ったことで反って皇道派は天皇の信任を損ねた。
権門上に傲れども国を憂うる誠無し
財閥富を誇れども社稷を思う心無し
皇道派を一掃する口実を得た統制派は、どっちでもない満州派の石原莞爾を閑職に退け、予備役に編入させる愚挙に出た。こうして永田・石原という2つの頭脳を失った日本の悲劇。
政治音痴の東条英幾や財閥が日本を三等国家に貶めた。その意味では言い当てている。
永田・石原のいない陸軍中枢はバカ揃いだから開戦を回避できず、日本は負けたのだから、515事件、相澤事件、226事件という流れは、日本を破壊させた根源ともいえる・・・
その昔まだ若い頃、2月26日にテレビで放送していたのです。
偶然だったけれどモノクロの暗い映像の珍しさに目が止まったのでした。途中から視たので当時はストーリーすらも知る由もない。視たのは反乱鎮圧の場面からだった。
わけわからず、ただならぬ怨念が伝わるような迫真の演技をみたのです。
この作品はホラー映画や怪談モノではないのに、いかなるホラー映画よりも恐ろしいものでした。
その怖ろしさに気を病みそうになりながらも銃殺のエンディングまで焼き付いて離れず・・・
あれからトラウマみたいに残ってしまい、
気になって気になってたまらず、折に触れて幾つもの文献を読みました。
権門上に傲れども国を憂うる誠無し
財閥富を誇れども社稷を思う心無し
二階に上げられ梯子を外され、逆賊の汚名を着せられた青年将校たち。
まるで本人たちの怨念が宿るかのような俳優陣の熱演。すこしだけ救われる気がするのです。
制作陣・俳優陣による鎮魂の思いが込められているようで。合掌。
無論いかなる大義名分があろうとも
軍人によるクーデターは断じて許されてはならぬものですから
その意味では死刑判決やむなし。
されど銃殺も逆賊の汚名も、私は承服し難し。
せめて名誉ある自決を認めて然るべきだったのでは?
元禄の赤穂浪士のように。
獄中の磯部浅一の叱責に共鳴せるものなり。
忠ならんと欲すれば功ならず、功成らんと欲すれば忠ならず…
悲憤の処刑から八十二年
いまに生きる私にさえ悲憤の情は酌めるなり。
弁護士もつけさせず、弁明の機会すらも与えず
一方的なる裁可は暗黒裁判そのもの。どれほど無念だったか。
もういちど言いますよ。
いかなる大義名分あろうとクーデター決行は許されない。
その意味では軍法会議の判決〈死刑〉やむなし。
されど蜂起に至る心情は共感するところあり。
少なからず情状酌量の余地あり。
せめて名誉の自決させられなかったのか!
元禄の赤穂浪士のように。
この映画では触れてない5・15事件(犬養首相の殺害)。
あの温厚な東郷元帥に――厳しく処罰して可し――と断じられるほどの許されざる暴挙。
国軍とは外敵から祖国を守るためのもの。いかなる理由・大義名分があろうと不平不満があろうと
自国の指導者を武力で排除してはならない。
にもかかわらず、この時なぜか全国から減刑嘆願が集められた。ここも謀略の匂いがする。
その山と積まれた嘆願書に威圧された裁判官が厳正に下すべき判決を曲げてしまった。
この甘さが226事件の伏線となったともいえる。
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