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貧困とグローバル化

貧困とグローバル化
ヴァンダナ・シヴァ
訳:志満 直実
http://news.bbc.co.uk/olmedia/cta/events2000/reith/shivav.ram

最近、農民の自殺が流行しているため、私はパンジャブのバティンダをこの間訪ねました。パンジャブはかつてはインドで最も成功した農業地帯でした。今日、農民の全員が負債と絶望に悩まされています。広大な土地は浸水した砂漠になりました。また、高齢の農民が指摘するように、殺虫剤の頻繁な使用が授粉者である蜂や蝶を殺してしまったため、木さえも実を結ぶことをやめてしまいました。

そして、パンジャブだけがこの生態学的、社会的な災害を経験しているのではありません。昨年私は、やはり農民が自殺をしていたワランガル、アンドラ・プラデシュにいました。伝統的に食用の豆類や雑穀、稲を育てていた農民は、種子商人が「ホワイトゴールド」と呼び、農民を億万長者にしてくれるはずのハイブリッドの綿の種子を買うよう、種子会社に誘惑されました。しかし、代わりに彼らは貧民になりました。

従来の種子は、保存がきかず毎年高いコストで購入しなければならない新しいハイブリッド種に替わりました。ハイブリッドは害虫の攻撃に非常に弱いものです。ワランガルでの殺虫剤の支出は、1980年代の250万ドルから1997年の5000万ドルへと、2000パーセント急増しました。現在農民は、支払えない負債から永久に逃れることができるようにと、同じ殺虫剤を自殺に使っています。

企業は現在、コストと生態学的リスクが更に増大する、遺伝子組み替えの種子を導入しようとしています。そのため、アンドラ・プラデシュ農業組合のマラ・レディーなどの農民が、ワランガルでモンサント社の遺伝子組み替えのボールガード綿を根絶しました。
3月27日には、自分の2エーカーの農地に深い掘り抜き井戸を掘った時の借金が返済できなかったため、25歳のベタヴァティ・ラタンが自らの命を絶ちました。5000万人以上が渇水にあっているグジャラートやラジャスタンの井戸もそうであるように、今その井戸は乾燥しています。

干ばつは「自然災害」ではありません。人がつくるものです。それは、地域のニーズのための水をあまり必要としない食用作物のかわりに、水を必要とする輸出用換金作物を育てるために、乾燥地帯で不足する地下水を採掘した結果です。

このような経験は、新しい世界経済に対して己惚れるのは大変に間違っていると私に教えてくれます。このレクチャーの中で、グローバル化が一般の人々の生活に与えるインパクトについて、立ち止まって考える時であると私は唱えます。これは維持能力を達成するのに重大です。

昨年のシアトルと世界貿易機関の抗議は、再び考えることを皆に強いました。このレクチャーシリーズを通じ、人々はグローバル化を当然のこととして、維持可能な開発の様々な面について言及してきました。私にとっては、私たちが何を行っているか、今が根本的に再評価する時です。グローバル化の名のもとに私たちが貧困層に行っていることは、残忍で許されません。次々と明らかになるグローバル化の惨事を目撃している今、これは特にインドで、とりわけ食物と農業で明らかです。 

誰が世界を養うか?私の答えは、多くの人の答えとは非常に異なっています。 

それは女性と小規模農家です。彼らは第三世界における主要な食料供給者であり、生物多様性と取り組んでいます。支配的な前提に反して、それらの生物多様性に基づいた小規模農家は、産業的単一栽培より生産的です。 

食料生産の豊富な多様性や持続可能なシステムは、食料生産の増加という名のもとに破壊されています。しかし、多様性の破壊で、豊富な栄養源が消えてしまいます。1エーカー当たりの栄養量を計った場合、生物多様性の観点から見た場合には、産業農業や産業漁業のいわゆる「高収穫高」は、食物や栄養をより多く生産していることを意味しません。

収穫高(Yield)は通常、単一の作物の単位面積あたりの生産を意味します。生産高(Output)は、種々の作物や生産物の生産の合計を意味します。単一栽培として全体に単に1つの作物を植えれば、もちろんその個々の収穫高は増加するでしょう。様々な作物を混ぜて植えればそれぞれの収穫高は減りますが、合計の生産高はとても高くなります。収穫高は、小規模農場での小規模農家の食物生産を消滅させるように定義されています。これは、自分の段々畑で今日もbarnyard millet(イヌビエ)、Amaranth(アマランサス)、Pigeon Pea(キマメ)、Black gram(ヒヨコマメ)、horse gram, Glycine Max(大豆)、Glycine Soya、−畑の無限な多様性−を栽培し、チプコ運動への加担に反対して戦った私の故郷のヒマラヤの農家のような、第三世界での多くの女性による栽培を隠滅させるものです。生物多様性の観点からは、生物多様性に基づいた生産力は、単一栽培の生産力より高くなります。私はこれを、多様性の高生産に対する無分別、私たちの畑や世界に単一栽培をもたらす「心の単一栽培(単一文化)」と呼んでいます。

メキシコのチアパスのマヤの農夫たちは、1エーカー当たりトウモロコシをたった2トンしか生産しないので、非生産的として特徴づけられています。しかし、マメやカボチャ類、野菜や果樹などの多様性を計算に入れると、総生産高は1エーカーあたり20トンになります。 

ジャワでは、小規模農家は家庭菜園で607種を栽培しています。サハラ以南のアフリカでは、女性が120種類の異なった植物を栽培しています。タイのある家庭菜園には230種、アフリカの家庭菜園には60種以上の木があります。

コンゴの田舎の家族は、農場の50種を超える木から、葉を食べます。 

東ナイジェリアの研究で、1世帯の農地のたった2パーセントしか占めない家庭菜園が、その農場の総生産の半分になることが分かりました。インドネシアでは、家計収入の20パーセント、国内の食物供給の40パーセントが、女性が管理する家庭菜園からです。 

FAO(国連食糧農業機関)によって行われた研究でも、小規模の生物多様性のある農家の方が、大規模で産業的な単一栽培よりも何千倍も多くの食物を生産できることが明らかになりました。
また、より多くの食物を供給することに加えて、多様性は干ばつと砂漠化を防ぐための最良の戦略です。 

増え続ける人口に持続的に供給するために世界が必要としているのは生物多様性の強化であり、化学物質の激化や遺伝子工学の激化ではありません。女性や小規模農家が生物多様性を通じて世界に供給している一方、遺伝子工学や農業のグローバル化なしでは世界が飢えるだろうと、私たちは繰り返し言われてきました。遺伝子工学で多くの食物が生産されず、実際にはしばしば収穫減少につながることを示すすべての経験的な証拠にもかかわらず、空腹の者に供給するために利用可能な唯一の代案として、常に推進されています。

だから私は、誰が世界を養うかと訊いているのです。 

多様性へのこの意図的な盲目、自然の生産、女性による生産、第三世界の農家による生産への盲目が、破壊と、創造かのごとく計画された横領を許しています。

盲目の治療法として、非常に軽蔑された「金色の米」遺伝子操作されたビタミンA米の例を取りましょう。遺伝子工学なしには、私たちがビタミンA欠乏を排除することができないと仮定されています。しかし、自然は私たちに豊富で多様なビタミンA源を与えてくれています。もし精米がなされていなければ、米自身がビタミンAを提供してくれます。もし除草剤が私たちの小麦畑に噴霧されていなければ、ビタミンAを提供してくれる美味しくて栄養豊かな緑黄色野菜として、私たちにはブタクサ、アマランサス、からし菜があるでしょう。

ベンガルの女性は、緑黄色野菜として160種以上の植物を使います。少数を挙げるだけでも、Enhydra fluctans, Spinacea oleracea, Rumex vesicarious, Amaranthus gangeticus があります。

しかし創造の神話は、自然の多様な贈り物や、この多様性を用いて子供や家族にいかに食べさせるかという女性の知識を否定し、ビタミンAの創造者としてバイオテクノロジストを示します。

自然、地方経済、小規模自律生産者に破壊を与える最も効率的な手段は、その生産を目に見えなくすることです。 

家族やコミュニティーのために生産する女性は「非生産的」「経済的に不活発」として扱われます。女性の仕事、維持可能な経済の中でなされた仕事の価値を下げることは、資本主義的家父長制によって構築されたシステムの自然な結果です。このようにして、グローバル化は地方の経済を破壊し、破壊自体が成長として計算されます。

また、女性自身の価値が下げられます。田舎や先住のコミュニティーの女性の多くは、自然の過程と共に効果的に仕事をするので、多くの場合それらの仕事は、支配市場に動かされる「開発」や貿易政策に矛盾しています。また、ニーズを満たし、維持を保証する仕事の価値が一般的に下げられているので、生命と生命を維持するシステムがあまり育まれないことになります。

維持可能で再生可能な生産の価値切り下げや不可視性は、食物の分野において最も著しいものです。家父長的な労働の区分が家族やコミュニティーを扶養する役割を女性に割り当てている一方で、家父長的な経済や科学の家父長的な見方は、食物を提供するという女性の仕事を摩訶不思議にも消してしまいます。「世界を養う」ことは、現実にそれを行う女性から分離されるようになり、グローバルアグリビジネス(地球規模の農業関連産業)やバイオテクノロジー企業に依存するように計画されています。 

しかし、食物における産業化や遺伝子工学の使用、また農業貿易のグローバル化は、貧困層の扶養のためではなく、飢えを作るためのレシピです。 

いたるところで、農民は産業生産のための高価な資材を買うために、産物の代価として自らが受け取る金額より多くを出費しており、食料生産は負の経済になっています。その結果は、貧しい国でも豊かな国でも起こる、上昇し続ける負債と自殺の流行です。

経済のグローバル化は種子産業の集中化、殺虫剤の使用の増加、最終的には負債の増加に繋がっています。資本集約的で企業にコントロールされた農業は、今まで農民が貧しいながらも食物を自給自足していた地方へ広がっています。グローバル化によって産業農業が導入された地方では、より高いコストが小規模農家の生き残りを事実上不可能にしています。

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すみませ〜ん。このシリーズ転載バカボンさせて下さい。

2007/9/24(月) 午前 10:44 [ - ] 返信する

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長文の論文ありがとうございます。
お勉強の為に、転載させていただきます・・・
続きも宜しく・・・

2007/10/8(月) 午前 10:55 [ - ] 返信する

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