|
映画のロケ現場というのを始めて訪ねた。場所は、練馬区大泉の東映撮影所である。作品は、日本国憲法
公布60周年を記念した「日本の青空」。監督は「アイ・ラヴ・ユー」や「アイ・ラヴ・フレンズ」「GAMA
−月桃の花」などで著名なベテラン大澤豊である。大澤監督は、黒澤明や勅使河原宏などの助監督として
研鑽を積み、失聴者など、所謂「少数者」の視点に立った作品群で知られており、特に「GAMA-月桃の
花」は沖縄戦を被害を受けた市民の立場から描いた優れた作品として有名。出演は、高橋和也、藤谷美
紀、加藤剛、宍戸開、その他多数。日本国憲法はアメリカによる「押し付け」である、という議論はかな
り根強いものがあって、改正論者が事あるたびに持ち出す理屈である。しかし、それは決して正鵠を得て
おらず、日本国憲法には当時の日本人の平和への強い思いが込められている、という視点からこの作品は
構想されている。GHQの起草した「日本国憲法草案」の手本となった「憲法草案要綱」を起草した鈴木安
蔵にスポットをあてた作品だが、鈴木安蔵はそれほど一般に知られた名前ではないはずである。しかし、
彼は、戦前の治安維持法弾圧犠牲者第一号といわれる人物で、敗戦直後結成された「憲法研究会」の実質
的事務局長として活躍した。
今日(12月17日)は、午前中肌寒い曇り空。撮影所に入ったときは、鈴木安蔵宅の庭先での撮影が進行し
ていた(もちろんスタジオ内のセット)。現場の緊張感は相当凄まじく、俳優の演技に何度もダメだしを
する大澤監督に、この映画にかける情熱を見る思いがした。午前中のロケが終わって昼の休憩時に、若き
日の鈴木安蔵役を務める高橋和也さん、鈴木安蔵の妻役の藤谷美紀さん、そして大澤監督と記念写真を撮
る機会があった(ファンの方には申し訳ないが、実は、2人とも私はよく知らない^^;)。その後、大澤監
督を交えて歓談。この作品を撮ることになった経緯や、進行状況などに関する話を直接聞くことが出来
た。白洲次郎に焦点をあてようという意見が当初あったが、大澤監督は、いろいろ文献を読んでみて、白
洲にはあまり魅力を感じず、鈴木安蔵により惹かれたと話しておられた。
本日はTBSのNEWS23のクルーも取材に訪れていたが、制作側によると、彼らはここ数日連続して取材に訪
れており、この作品の製作過程を緻密に追っているとのことで、いずれNEWS23で特集として取り上げられ
る予定ということだ(放送日時は未定)。現在、撮影は終局に入っており、年内にはクランクアップ。来
年1月、2月を通じて編集、音響処理などを行い、来年春以降の公開を目指しているということである。
教育基本法が改正され、憲法改正への足取りが加速することが予想されるなか、先の大戦という大きな犠
牲の上に成り立った憲法は、今その存在意義があらゆる方面から再確認されねばならない時期に来てい
る。映画「日本の青空」は、その為の一つの歯車としての意義を十分持ちうるだろうと思うし、私も来年
の公開を、心待ちにしたいと思う。
尚、自民党の鳩山邦夫氏が旗を振って、日本国憲法がアメリカに押し付けられた結果、如何に日本が日本
的美質を喪失したかを論じる「憲法アメリカ押し付け論」映画も、同じ東映撮影所で撮影されており、
まさに呉越同舟の趣だが(こちらも機会があればロケ現場を見てみたいものだ)、日本国憲法が公布され
た当時、戦争放棄を謳った憲法は、戦争で疲弊した、多くの日本人の感情に訴えるものがあったし、素直
に受け容れられるものであった。あれから60年、時代は変わって、「反戦・平和の神通力はもう失われた
のだ」「戦後からは決別しなければならないのだ」という感情が若い人を中心に広がりつつある。しか
し、戦後民主主義の「批判的検討」という土台の上に立って、日本国憲法の理念の先見性と有効性を再確
認し、それを多くの若者に伝える必要性を再確認する一日となった。
尚、本日は、鈴木安蔵の娘さんや、お孫さんなど、親族の方もロケ現場を訪れており、話をうかがうこと
が出来た。
*尚、私が「批判的検討」という場合、それは、保守派言論人が言うような、「否定的」を意味しないことを申し添えておきます。「様々な角度から光を当て確認する」とでも言った意味です。「批判」とはすなわち、物事をコンテクストの中で理解するための知的枠組みを作る作業であると個人的には理解しています。
大澤豊監督のプロフィール:
http://homepage3.nifty.com/kobushi-pro/main02.html
参考資料:
竹前栄治 シリーズ 日本国憲法制・検証 1945-2000 資料と論点(第一巻)憲法制定史ー憲法は押し付けられたか 小学館
小西豊治 憲法「押しつけ」の幻 講談社現代新書
古関彰一・勝又進 劇画 「日本国憲法の誕生」 高文館 (TOMさんの紹介)
古関彰一 新憲法の誕生 中央公論社
田中彰 小国主義ー日本の近代を読み直す 岩波新書 (あつこさんの紹介)
武田清子 戦後デモクラシーの源流 岩波書店
「法と民主主義」2005年4月号【397号】特別企画●鈴木安蔵先生生誕100周年記念 (yfqsx494 さんの紹介)
|
映画「日本の青空」を週金読書会で製作委員会に参加・支援することになりました。1人1000円のチケットがありますからお知らせします。
2006/12/26(火) 午前 9:13
はじめましてよろしくお願いします。私もこの映画や「GAMA」を観ました。TBさせてください。
2007/10/20(土) 午前 7:35
ロケ現場もご覧になったのですね。いいですね。
2007/10/20(土) 午前 7:36