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「12人の怒れる男」

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『12人の怒れる男』(2007) ニキータ・ミハルコフ監督

同作品は、1957年、シドニー・ルメット監督のものがあまりに有名ですが、
TSUTAYAに行ったらいつの間にかロシア人監督によるリメイク版が出ていたので、
借りてきて一気にみました。160分という長い映画ですが、見応えたっぷりで引きこまれました。

私たちは、日常生活において色々な場面で物事を判断・決断することに迫られます。
そんな時にもしかしたら表面的な要素だけを見て、容易に判断を下しているかもしれません。
この映画はディスカッションすること・疑うことの大切さ、色々な角度や立場から物事を精査することの大切さを
思い出させてくれます。

今回は、場面がロシアでチェチェン出身の男子が、自分を養ってくれることになった将校の義理父を殺人した
疑いで容疑にかけられているという設定です。
3日間の法廷を終えて陪審員の役割を与えられた一般市民12人が会場となった小学校の体育館に集まり、
多数決が始まります。
最初は全員が「有罪」、と思いきや一人だけ「無罪」を主張。ここから陪審員たちのディスカッションが繰り広げられます。
前作でも、一人の「無罪」の主張から、最終的に全員が「無罪」へと判断が変わる、このオセロをひっくりかえすような
見事な議論の展開にドキドキハラハラさせられました。今回はどんなストーリーになっているのか。。。

まず、舞台がロシアということで資本主義社会になった後の政治の混乱、治安の悪さ、政府と軍、企業との癒着、
「机上の空論」にもなり得る「法廷」のイメージとは程遠い、生々しく現実的な問題に次々と直面させられます。

12人の一般庶民から選出された陪審員たちはそれぞれ、タクシー運転手、ハーバード大卒、医者、役者
テレビ局、芸術家、実業家、など様々な立場から議論に参加します。最初は「気乗りせず、早く終えて家に
帰りたい」という様子だった12人が次々と自分の主張を始め、それは個人的な過去の話だったり、自分の職業人
としての立場からの見方だったりします。その話し方が演技とはいえ迫力満点で、具体的な場面の想像を
かきたてられ、恐怖に陥れられたり、一人で観ているとちょっと怖くなる映画でもあります。(ちなみに私はサスペンス映画好きです)

自分がもし陪審員として議論に参加する立場だったらここまでpersuasive(説得力のある)な話し方、ロジックの組み立て方、感情表現が出来るだろうか、おそらく多くの日本人が苦手とする分野でしょう。
この映画をもし日本版でリメイクするとしたら、、、面白そうです、どなたかに挑戦してほしいですね。

12人の陪審員に運命を委ねられた、容疑者少年の行方は・・・、客観的で論理的に突き放されるのではなく、
ちゃんと救いのある結末になっています。

審議を終えて最後まで体育館に残っていた陪審員の一人が、体育館に迷い込んだ小鳥を逃がそうと、窓を
開け始める場面があります。「外に飛び立っても良いし、ここに留まっても良い、自分で決めなさい」と言い、結局その小鳥は外に逃げ出します。
作品全般を通して、ロシア文学であるかのような人間に対する深い洞察と人間を信じたい、救いたいという
慈悲の心、そんな根底に流れるテイストが、この作品を魅力的にしているのかもしれません。

もしかしたら真実さえも、自分で作り上げることが出来るのかもしれない、人間の意志や言葉に漲る力という
ものは無限の可能性を含んでいる、奇跡は起こる、そんな希望を感じさせてくれる映画でもありました。

ところで、原題「12 angry men」 の翻訳が「12人の怒れる男」とは、適切なのでしょうか。
誰も怒ってはいませんよ(笑) 「12人の熱い男達」くらいに出来なかったのでしょうか。

雨の降る日に自宅でゆっくりと鑑賞するのに、お勧めな作品でした。



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