まずは、憲法改正 !!

コメント・TB許可制開始。荒らし・宣伝は闇の向こうへサヨウナラ !!

Time Up

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 水口外相の公用車は宵闇の衆議院第二別館前を疾走、首相官邸の車寄に滑り込んだ。大階段を登り執務室に足を踏み入れた彼女は、応接セットに端坐する田宮真砂子(まさこ)に絶句した。先年内外を驚かせた電撃更迭の後を襲ったのは他ならぬ水口で、その後は絶交状態だった。
「お久しぶりです……私も関係するお話ですか?」
「私がそう判断しご足労願いました」
 そう言いながら部屋に現れたのはこの官邸のあるじ……小宮山雄一郎(ゆういちろう)だった。
「総理!ご無事ですか?お怪我は?」
「この通り五体満足です……田宮先生が北京にお持ちのパイプからメッセージが届きました」
 腰を降ろした小宮山は顔から笑いを消し、本題に入った。
「先刻、報告を受けましたが……事実なのですか?」
「イランも同じ事実を確認しています。情報照合の結果、一部の独断などではないと結論づけました」
 同席していたイラン大使が、小宮山の言葉に頷いてみせた。
「警察は早くから察知していたようですが、私には何も……」
「まあ、現場でどう判断したかはわかりませんが、結果的にはよろしかったのでは?」
「……」
「先方は内々に処理したいと伝えてきました。決裂は避けたいようです」
「なかったことにする、ですね?」
「安永(やすなが・内閣官房)長官は激怒するでしょうが機密保持のためです。但し同時に今後の戒めとして、関係者には超法規的措置を講じます」
 水口は蒼白になっていた。
「対朝外交方針も変更――ですか?」
「今は事態収拾が最優先ですが……」
 小宮山は一旦言葉を切り、あらためて水口の顔を見据えた。
「潮時でしょう。あくまでカードのつもりでしたが、勿体ぶらず速やかに実行すべきだった。それが真の、歴史の清算にもなる……ご理解いただけますね?」
 室内を重苦しい沈黙が支配した。それは水口にだけでなく、近隣諸国に理解的な田宮にも苦渋の決定だった。
「刀と言えば、日本刀は時々素振りで空を斬ることが大切とか……至急各方面に指示しますので、よろしく」
 小宮山はそう言って立ち上がった。

 翌未明、香港を発った中国民航ツポレフ一五四チャーター機は垂直尾翼中央に五星紅旗を浮かび上がらせ、月夜の雲海を一路北上していた。
 中国の亡命受容れが魚珍禹に伝えられたのは午前〇時過ぎ。テレビとパソコンは急に不通、新聞を買いに行かせた部下は戻らない。情報から隔絶され用心深くなっていた魚だが、人民武力部政治委員の朱文甫(スムンボ)が北京に入れた電話口で先方が確約したと聞いて愁眉を開き、急かされるまま支度、空港へ直行。服務員が勧めるワインで一眠りの後トイレに立ち、便器に座ったまま思いに耽る。黄が訪日中だが何か異変……と思い到った瞬間ドアが開き、正面に立った服務員が抱えた毛布から飛び出した銃弾が魚の心臓を貫いた。服務員姿の許貞恵が客室に戻ると、蒼白の朱が着席していた。
「同志のご協力で祖国の危機は救われました」
「……」
「何か召し上がられますか?」
「――要らん!」
 怯えを怒声で隠した朱に許は乾いた微笑を返し、永遠に空席となったテーブルから、下剤を混入していたワイングラスを持ち去った。
 数時間後、北京首都空港に着陸した中国民航機から或る物体が降ろされ、定刻を遅れ待機中の定期便に積み替えられると、朝焼けの中を平壌へ飛び立っていった。

 中川への、監察の事情聴取は未明に終了。始発で帰宅すると、部屋のパソコンに見慣れた送信元のメールが届いていた。

 差出人名をどうするか迷いました。貴方がこれを読む時には……全て知っている筈ですね?
 私の運命がねじ曲られたのは二年余り前。新潟に帰省中、東京にいた筈の恋人の、目立たない場所で会いたいというメールに赴いた、海岸近くの林で覆面姿の男達に襲われ、袋に閉じ込められて小さな船に乗せられました。数日後、山間の収容施設でやっと目隠しを外され、中央ホール正面に飾られた金一成親子の写真で、自分が北朝鮮に拉致されたとわかりました。
 絶えず、互いの猜疑心を煽る工作……そしてある日、囚人同士殺し合え、生き残った一人だけ帰してやると言われました。鈍っていた判断力で理解できたのは、ここで死ぬか皆を殺すかの二者択一。それでも最後の二人になった時自ら喉を掻き切った女性の、死に際の微笑は今でも憶えています。
 次に送られた施設でも再び…そして最後に生き残った私の前に鄭が現れ、静かな山奥のコテージで銃を始めとした武器の扱い、素手で相手を倒す方法などあらゆる戦闘技術を叩き込みました。訓練は過酷でしたが彼は初めて、私を一人の人間として扱ってくれました。
 一年後、中国旅行中の女性としてやっと日本の土を踏んだ私は、今度は松嶋早紀にすり替わり…貴方と出会いました。警察官と知った時は迷いましたが、鄭は好都合と言いました。上部の判断で、彼は不満そうでしたが。
 拳銃はスタンドの発煙筒騒ぎの隙に座席を壊し、修理業者が仕込む手筈です。騒ぎを起こさせた学生は鄭が口を封じ、それに気づいた斎藤さんは私が殺しました。その後移った……先が飯田さんの部屋とは計算外でしたが。その飯田さんにアジトを突き止められたのは多分まだ貴方を愛していた、彼女の勘だったのでしょう。そして私にも隙があった…貴方を愛してしまったから。また一緒に、サッカーを観たかった…
 北朝鮮による日本人拉致は何百人にもなりますが、その一部は日本に戻っているのです。正体を隠し、いつ来ると知れぬ指令を待ちながら。こんなことで血を流すのは私で最後にして下さい。
                         中川 早紀

 警察が調べたところ、発信元は五月十五日午後、町田市内のインターネット喫茶。店員の証言では同時刻黒いキャップの若い男が入店、二十分程で立ち去ったと言う。服装から警察は、片桐幸子と断定。鄭が語った約束に触れていないのは、実現しないとの覚悟ゆえか。
 着信は試合当日午後四時。全てが終わる頃届くよう送ったのだ。


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