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五.合同警備(上)

 神奈川県警本部長は、本部庁舎の執務室で不機嫌だった。
「私は、こういう事態を恐れていたんだ」
「申し訳ありません」
 小田は執務机の前で頭を下げた。死体が丸腰だったので最初は誰も気づかなかったが、斎藤は個人所有の拳銃を携帯していたのだ。自宅にあった拳銃がないとの連絡に、県警は騒然となった。遺留品中にも該当する拳銃はなし。それは殺害犯が拳銃を奪った可能性を示していた。
「もう一度確認するが、斎藤警部が所持していたのは警察拳銃ではないんだね?」
 机の脇に立つ大野は内心の苦笑を噛み殺し、厳粛な表情で小田に質問してきた。
「はい。府警および県警で、持出しがなかったことを確認。拳銃も正式に登録された物でした」
「なら一安心だが、そもそも拳銃携帯で上京というのは尋常でない。もしその朝鮮人が犯人なら、そういう相手との接触時に問題はなかったかどうか……」
 県警本部長は、それを理由に県警の責任を回避したげだった。
「仰る通り手落ちがあったなら問題ですが、経緯に充分通じていた筈の斎藤警部の行動としては不自然です」
「しかし……いいかね、これは警官殺しなんだ。しかも現場は連絡所設置署管内、それも目と鼻の先と言うじゃないか?いつ……まさか内部から漏れてはいないだろうね?」
「現在のところ、末端から漏れた形跡はありません」
「末端からはだと?君は私も疑っているのかね?」
 県警本部長は達磨のように紅潮、大野がやれやれと言うように視線を天井に投げた。
「失言でした。申し訳ありません」
「もういい……だが、マスコミが勘づいた以上……」
「仰る通り、経緯がどうあれ公開捜査しかありません」
「売られた喧嘩、でもある。受けて立つしかないが……」
「全関係者に拳銃携帯を発令しますので、ご了承願います」
「わかった……ご苦労だった」
 小田は大野と肩を並べて退室した。
「案の定と言っては不謹慎だが……」
「問題は府警への説明ですね。県警に任せるか中央を間に入れるか、局長と相談しますが迷うところです」
 その足で、検証が続く現場に直行。死亡推定時刻は昨夜〇時前後。グラウンドを囲む金網が暗がりで切り破られ、地面には、矢倉の下まで何かを引きずった跡。犯人は無抵抗の被害者をグラウンド外から運び、ロープで首を吊り下げたと思われた。
「犯人の足跡は?グラウンドの泥が付いた筈だが?」
「それがあいにく、直後の俄雨で流れてしまったようです。グラウンド内の足跡も、靴底の溝とか模様が残っていませんでした。一番上にビニールのカバーか何かを履いて入ったのでしょう。これでは靴の種類の特定は無理ですね」
「現場検証で我々も使うやつだな」
「グラウンドを出て外したとしたらお手上げです。逆に見つかれば手がかりになりますが……」
「そうか……咄嗟に袋か何かで代用しても、計画的犯行なら不用意に証拠は残すまい。目撃情報は?午前〇時前後なら終電で帰宅する住民もいた筈だが」
「それが、昨夜は丁度例の俄雨に気を取られたか、これといった目撃情報はまだ出てきていません」
「続けてくれ。足跡に細工した分油断して、他に証拠を残しているかもしれない」
 小田はそう指示すると見廻した。高層マンションも数棟点在しているが周囲には街灯もなく、夜間は真っ暗に近かったと思われる。斎藤はなぜ、このような場所に現れたのか?

――井出ですが……
「小田です」
――君か。どうだったね?
「県警本部長は立腹しておられました。先に鄭を検挙していれば斎藤警部殺害は……」
――防げたのではないかと?
「ただ犯人が誰にせよ斎藤警部の動きを察知していた、つまり情報が漏れていた可能性があります」
――君は本部長も疑ったそうだね?
「……」
――今、電話で泣きつかれたばかりだよ……ついでに少し話したが、犯人が近辺にいた可能性では私も同感だ。
「恐れ入ります。そこで今後の対応ですが、本部長にも申し上げましたが、公開捜査しかありません」
――しかし府警も黙っていまい?面子もあろうし……
「そうですが、鄭への対処が後手に廻った同士、理解は得られる筈です。言い訳ととられると確かに面倒ですが……」
――うまくやることだな……平壌対策はどうする?
「鄭の情報をリークしましょう。我々がマークしていると。目算が当りにせよ外れにせよ、何か動きをする筈です」
――暴発のおそれはないか?試合の準備も進んでいるし。
「は……」
 小田は言葉を濁した。北朝鮮代表は海外クラブ所属選手が北京入りし、一足先に最終調整中のチームに合流。中でも安智平(アンチピョル)ら数人の在日Jリーガーには日本のマスコミが張り付き、連日のように親善ムードを盛り上げていた。
「いつまでも後手に廻っていては甘く見られます。今は正面検挙の姿勢で、プレッシャーをかけるべきです」
――君の言い分は尤もだが大阪府警、それに明日には韓国・北朝鮮の警備陣も来日するから事前に調整したほうがいいね。平壌へは私からも盧氏に話しておこう。

 同日午後、大阪府警の捜査員が新幹線で上京してきた。
「申し訳ない」
「顔を上げて下さい。泳がせるという指示なら致し方ないでしょう」
 斎藤の直属の上司、外事課長代理の長島明洋警視(ながしまあきひろ)は、警備本部捜査員の平身低頭を、穏やかにそうフォローした。
「……やはり鄭の仕業なのでしょうか?」
「現時点では最優先マーク対象です。捜査線に浮上後は姿を消していますが」
「生活圏外に潜伏先を確保していたかもしれませんね」
「女の所かもしれません」
「女?」
「アパートに出入りしていた形跡があり、素性を確認中です……大阪では全く異性の影がなかったとか。同性愛主義者、との見方もあったそうですね?」
「それは半分冗談だったんですが、身辺に女っ気がなかったのは事実です。斎藤の意見も同じだったと思いますが、その女も一味でしょう……遺留品は?」
 警務課から届けられた遺留品が机上に並べられた。ショルダーバッグの中で持ち主を待っていた下着の替えや洗面用具、死亡時に身に付けていた財布、手帳……
「これは……ページが破られていますね」
 手帳の異状に気づいたのは長島だった。
「えっ?」
「ここに、鄭とは断言しませんが犯人に不都合なことが記してあったなら、奪った可能性は大ですね」
「何が、書いてあったのかな?」
 府警の捜査員達はなおもページをひねくり回していたが、一人が急にシャープペンシルで塗りたくり始めた。
「どうした?」
「これですよ」
 一見白紙だったページに、白く一行の数字が浮き上がっていた。

 000X―XXX―X―XXXXXXX

「これは……?」
「ペン先の跡が次のページについていて、拓本の原理でそれを浮き上がらせてみたんです」
「何かな?電話番号にしては長いし……」
「他の何かとの組合せかもしれませんね」
「かもしれないが……各電話会社に確認だ」
 番号を控えた捜査員が電話に向かう一方、他の捜査員達は残されたページや他の遺留品を調べたが、手がかりになりそうな物は何も見つからなかった。
「電話の線も望み薄ですね。000で始まる番号は、現在国内に存在しないそうです」
「だが実際にこのページが消えている。もし殺害犯が奪ったのなら、この数字は大きなヒントになる筈だ」
 長島はそう言い、あらためて県警の捜査員達を見た。
「あなたがたに解読をお願いしたい。ここでキャッチした情報のようなので。よろしいですね?」

四.工作員(下)

 五月十一日。
 横浜国際総合競技場は時ならぬ人の群れで溢れていた。新横浜駅周辺の商店会が毎年主催している行事で、五月に入り日中は汗ばむ気候とて、来場者の中には半袖も目立っていた。
 競技場のゲート内側はスタンドに接した数層のコンコース。その外側は地上に達する吹抜けで、周辺には主催者や後援企業のブースや出店が所狭しと並んでいる。警備本部と別に港北警察署も東ゲート広場隅に設置した広報ブースに尚子が加藤と座っていると、斉木達交通課の警官がやって来た。交替の時刻である。
「ご苦労様です。どうですか、人の出入りは?」
「お隣に食われて閑古鳥だよ」
 加藤が顎で指した消防署のブースには、荷台に家屋の模型を組んだトラック。模型が地震そっくりに揺れる、防災訓練の実演用だ。内外で災害が相次ぐ近年は関心も高く、体験見学者の長蛇の列が絶えなかった。
 ブースを離れると東ゲート手前、警備本部付近の出店でたこ焼きと飲み物を買い、広場中央の大階段に腰を降ろす。正面の仮設ステージ上ではアマチュアバグパイプ愛好家グループの、ゆるやかな演奏が流れていた。
「中川のカミさん、結構気晴らしになったみたいだな」
「そうね」
 尚子は言葉少なに答えた。彼女が以前中川と付き合っていたのを加藤は知らない。
 観客席の中から時ならぬシンバルの音。次の演目である韓国民族音楽の演奏だ。白と黒に赤、青、黄のラインという、五色で構成した衣装、そしてシンバルを交えた独特のリズム。打楽器だけで構成されているが、大陸的というべきか、和太鼓より開放的で流れるような旋律だ。
「外国人も目立つわね」
「まあ、さすがに六年前程じゃないが」
 欧米系と思われる金髪の白人、黒髪のラテン人、肌の露出が少ない中近東らしい女性、そして黒人。日本を始め各国代表チームのジャージ姿も目立つ。
 会場のあちこちをビールの販売員が巡回している。背負ったサーバーから伸びるホースの先に注ぎ口があり、注文を受けるとコップに注いで売るのだ。試合で彼らが場内を売り歩く姿は今や風物詩となっていた。
 このイベントに合わせ港北署が今年「一日署長」として招いた若手女優、黒崎麻由美もまもなく競技場へ巡回に来る。今朝の朝礼で制服に全身を固めた彼女は、全署員を前に用意された原稿を読み上げた。
「本日は『港北パフォーマンス二〇〇八』警備任務ご苦労様です。去るワールドカップでは地域の皆さんとも協力、各国チーム関係者、観戦者の安全と円滑な大会進行を確保した労を大とするところであります」
 ここまではお決まりの素人スピーチだが、彼女はその後にこう続けた。幹部署員やマネージャーが急に慌てたのは、当初の原稿になかったのか。
「なお先日も当署管内で立籠り事案が発生、幸い速やかに解決しましたが昨今の情勢の中、テロ他の事案発生は充分予想されます。今後も各員が、あらゆる事態で職務を完遂されるよう期待して本日の訓示と致します」
 訓辞を結ぶと、全署員の敬礼に本物顔負けの機敏さで答礼。あの新幹線ジャックで思うところがあったようだが、彼女も知らない、否、決して公表できない任務を抱える警備任務関係者には一層重い「訓辞」だった。
 次の演目が始まったのをしおに、東ゲートをくぐり場内へ。外部の喧騒が嘘のように静かなコンコースからは、入口越しにグラウンドが見える。今日開放している入口の一つからスタンドに入る。各入口脇に立つのは私服ながらスーツに無線のイヤホン、見る者が見れば警官とばればれだ。加藤がエスコートを気取り肘を開いたが尚子は気づかず、取り残された加藤に警官の一人が吹き出し、睨まれると慌てて真顔になった。
 収容人員七万二千人のスタンド内側には陸上競技用トラックに囲まれた、長さ百七メートル、幅七十三メートルのグラウンド。四隅の仮設フットサルコートではアマチュアチームが試合中。このスタンドが無料開放される機会は滅多にないが、チーム関係者や休憩をとる来場者くらいしかおらず閑散としている。二人は入口に近い座席に腰掛けた。
「あそこで総書記が観戦するのね」
 尚子が指した先、二人が座った丁度向かい側の一階西スタンドの中央だけ、座席の色が淡いピンクとなっている。さらにその中央奥、半透明の仕切りに半ば隠れVIP席が並んでいた。仕切りは防弾ガラスで、万一の時はその陰で身を護るのだ。
「この距離で、例えばここから狙ったりできるか?」
「うーん、私は無理ねえ。美奈ちゃんならできるかな」
「腕前の問題かあ?いくらなんでも拳銃じゃ遠すぎるよ。やはりライフルとかでないと」
「あ、でも銃とは限らないかも」
「と言うと?」
「UAEのアトランタ五輪予選だったかな、バックスタンドからグラウンドに撃ち込まれた照明弾がVIP席の来賓に命中して、耳が取れる重傷になったんだって」
「嘘だあ」
「中近東のサポーターも過激らしいわね。やっぱりアトランタ五輪予選で、ホーム側のシリアがクウェートに負けてた試合の最中、グラウンドに何が投げ込まれたと思う?」
「さあ……」
「コンクリートの破片」
「へ?」
「シリアサポーターが座席を壊して投げ込んだの。クウェートの選手にぶつけて無効試合になるのを狙ったみたい。でも審判が倒れた選手に『勝っているんだから立て』って言ったら、起き上がって競技に復帰したんだって」
「フーリガンか。サポーターが座席の上に立っているのはよく見るが……」
 二人の会話を裏付けるように、一階北スタンドで業者がブルーの座席を取り替えている。出店で買った烏龍茶を加藤が差し出すが、狙撃計画で頭が一杯の尚子は礼を言い受け取ったきりで、それ以上の反応を期待していた加藤は仕方なく仕事の話に戻る。
「今の照明弾の話さあ……事故を装った計画的テロということはないのかな?」
「それなら間違いなくニュースになってたと思うけど……暗殺じゃなくて実は脅迫とか、別の目的だったのかもね」
「どの程度警戒すべきか、情報量が少ないからなあ……例えば西スタンドからなら拳銃でも狙えるし」
「でも、入口の金属探知機でチェックできる筈よ?」
「そうだけど、今は非金属のものもあるとか……」
「そう言えば、映画で見たけど……どうかなあ?至近距離ならともかく、ある程度火力も要る筈だし。そんな代物が出回っているのかどうか……」
「今はなくても、じき現れるだろうけどね。いたちごっこさ」
 加藤はそう言いながら、あたりを見廻した。
「でもこうして見ると、大きいよなあ」
「試合でスタンドにもっと観客がいると、見た目にはそんなに感じないのよ。その分、迫力がすごいけどね」
「ふうん……」
 それにしても彼らはどうやって計画を実行するのか。自分達はそれを防ぐことができるのだろうか?

 五月十二日。
 新横浜駅前から環状二号線を北上、製材所のある角を左折すると、港北消防署所有のグラウンドが広がっている。その中央に大きな矢倉が組まれていた。救助訓練用で鉄骨に板張り、高さ十メートル近い物だ。
 定期点検に来た消防署員が、内側にぴんとぶら下がった男の脚を発見。板の陰で、遠くからは気づかなかったのだ。恐る恐る懐中電灯を向けると、男は安眠妨害を咎めるように両目を剥き睨みつけた。首にロープを巻き、四肢を垂らしたまま。消防署員は悲鳴をあげ、這うようにその場を離れた。
 消防署からの連絡に警察が急行。地上に横たえた遺体のシートをめくった港北署の刑事は息を呑んだ。
 男は斎藤だった。

四.工作員(中)

「ところで、当分ご滞在の予定と思いますが、宿泊先はお決まりですか?」
「柳沢課長、その件でちょっと……」
 しかめ面の工藤や目をぱちくりさせる加藤、興味ありげな斎藤を残し、中川は柳沢を廊下に連れ出した。
「何だ、急に?」
「ホテル・グレコに泊まってもらうわけにいきませんか?早紀が……心配で……」
「待て、お前……それは公私混同だぞ」
「自分もどうかとは思いましたが、身辺に不審な男も……」
「ああ、例のコンビニの……鄭に間違いないのか?」
「正直、まだ自信はありませんが、相手が鄭なら、警部に滞在してもらうだけでも……」
「抑止効果か……しかし、下手すると囮捜査になりかねないが?」
「それは大丈夫でしょう。これは言わば警護事案ですから」
「まあ、本当に逮捕してしまったら、それこそ囮捜査だが……とにかく話してみよう」
 斎藤は意外にあっさり承諾した。工藤がいればややこしくなったかもしれないが、斎藤に会い府警への義理は済ませたつもりか、姿を消していた。
「無言電話の主が鄭なら、自分の姿を見れば二度と現れんでしょう。府警に報せればどっと押しかけてくるでしょうが、それはまずいようですね?」
 斎藤はそう言って、悪戯っぽく笑った。

 夕刻、他出から戻った小田に、加藤らが斎藤を引き合わせた。京都から大阪、福岡と、今回の総書記訪問予定地をまわって来たのだという。
「発見しても今は泳がせる方針なので、それは含んでおいてもらいたい……府警はまだ知らないとか?」
「はい、休暇をとって自分の一存で参りました」
「今後協力を要請する可能性もある。当方で連絡すれば一存で来た君の立場があるまいから、自身でやってもらいたい。必要となればフォローする」
「ありがとうございます」
 中川の案内で斎藤が退室した後、小田は警察庁と県警本部に連絡を入れた。
――大阪府警か。面倒なことにならなければいいが……
 大野は慎重だった。
「わかりますが、府警は重要参考人の情報をかなり持っています。局長も了解済みです」
――ならいいが……まあ、様子を見るか。

 同夜、柳沢と中川は「三千院」で早紀を斎藤に紹介した。内々の歓迎会も兼ねており、加藤以下港北署の捜査員・警官も数名同席していた。
「ご迷惑をおかけします」
 言葉少なに挨拶する早紀に斎藤は笑い返した。
「事情は伺いました。相手の正体は不明だそうですが、刑事が同じ屋根の下にいれば手は出さんでしょう」
「助かります。自分が付いているべきなんですが、手が廻らず困っていたんです」
「こういう時はお互い様ですよ」
 斎藤が中川に返したその時、尚子の携帯電話に着信。発信元を確かめ
「美奈ちゃんだ……はい、飯田です」
――斉木です。どうしたんですか?伝言があるって聞いたから署に戻ってきたら、飯田さんも中川さんも退勤したって……あっ、どこかで飲んでます?
「げ、ばれた?大阪府警の刑事さんを接待中。駅前の『三千院』だけど、今から来る?」
――ああ、この間の……今からだと、十分くらいかかりますけどいいですか?
「いいわよ。じゃ、待ってるね」
 そう言い尚子は電話を切った。
「栄署か……あっちの事件はどうなったのかな?」
「栄署の事件と言いますと?」
 斎藤が食指を動かした。
「先日水死体が挙がりまして、その犠牲者が少し前に不審な人物と接触していた形跡があったんです。そういうこともあって警備になかなか専念できずにいます」
「なるほど。そう言えば例の徳田信枝逮捕もここでしたね?」
「ただ、北朝鮮を目指していたらしいのに乗っていたのは岡山行き、持っていた切符は新大阪行き。どう乗り継ぐつもりだったのか、指揮した警視庁の公安も首をかしげていました」
「こういうことではないですか?現在博多直通列車は全て『のぞみ』で、本数が減った分窓口は発覚の危険が大きいので、用心し比較的地味な岡山行きを選んだ。乗継ぎなら行先もカモフラージュできますし」
「なるほど」
「乗換えの謎も解けます。東京から徳田信枝らが乗り込む一方、恐らく仲間が新下関までの切符を用意、新大阪駅ホームで素早く切符を取り替える。その後仲間が新大阪までの切符で改札口を出る一方、彼女らは新しい切符で別の列車に乗り継ぐ。新しい切符の手配なども必要ですが、連絡を取り合えば充分可能だった筈です」
「だとすると新大阪駅でも列車の動きには注意していて、失敗もいち早く察知した可能性がありますね?」
「同感です。連絡をいただいて直ちに新大阪駅に捜査員を派遣しましたが、やはり空振りでした」
 斉木が到着したのは十分後。一緒に戻った伊東は今度の総書記警護で予備要員に指名、今日は訓練に直行したという。今や港北署のほぼ全署員が、何らかの形で警備任務に駆り出されていると言ってよかった。
 一口で警備と言うが、サッカーの試合などの大規模事案になると準備だけでも半端でない。今回のような要人警護のほか会場内外の秩序維持、前後数日間の来場者、選手、チーム関係者の安全確保。時には一部観客の所謂フーリガン化にも備えねばならず、国際試合ともなれば一定期間一般の立入りを禁止。
 その上、任務に携わる全警官の食事、寝場所、便所などの準備責任も費用も所轄持ち。不足が出れば公費補填はあるが、そうなれば余計経費節減も強いられる。特権だらけの上部と違い「貧乏暇なし」が警備現場の現実で、場数を踏み要領を心得ている者も多いとは言え、署員の苦労は部外者の想像を越えていた。
「で、どうなった?」
 斎藤に挨拶し斉木が座るのを、待ちかねたように加藤が訊ねる。
「被害者が現場にいた理由がわかりました。恋人の近所だったんです」
「恋人?」
「川上貴子(たかこ)、二十一歳。大学の同期生です」
「あれ?その名前は前に聞いたが、住所は確か……?」
「はい、最初に交友関係を調べた際、住所は大学の女子寮でそれは事実でしたが、実は付近に住んでいる従妹が海外旅行中で家の鍵を預かっており……」
「事件当夜はそこで一緒だった……と?」
「はい。数年前県下で発生した連続婦女暴行以降、女子寮が出入りを厳しくしています。実はそれまで度々異性の連込みがあり、それが以降お蔭でぱったり止んだのですが、一方で寮生の外泊が増え……」
「何だ、自業自得……」
 加藤が笑って言いかけ……眉を吊り上げた斉木の形相に黙り込んだ。
「被害者はその家の……あれ、そんな時間に何で外にいたのかしら?買物?」
「今日、この川上貴子に会ってきました。実は事件直前口論して被害者が家を飛び出し、それきりになったのだそうです。それで、事件には自分も責任があるのではとの思いから、余計にショックだったようです」
 話しながら昼間の様子を思い出したか、斉木は顔を歪ませたかと思う間もなくぽろぽろと涙をこぼし始め、他の者の何人かが加藤を睨んだ。
「あれ、何、俺のせい?」
 狼狽する加藤に代わり、柳沢が話を戻す。
「一万円男のほうは、どうなった?」
「競技場関係者やサポーターをあたった結果、Jリーグの試合で要注意人物が目撃されていました。ホーム側自由席に一人でいた男性で、特徴は黒い帽子とサングラスに白髪まじりの口ひげ。試合中もスタンドのほうばかり見ているので不審に思ったと目撃者は証言しています」
「黒い帽子に、サングラスと口ひげか……いかにも変装って感じねえ」
 首をかしげる尚子の横で斎藤が目を光らせたことに、居合わせた警官達は誰も気づかなかった。

四.工作員(上)

 やはり同時刻。
 小田は都筑センター北の百貨店屋上にいた。買物客の姿も絶えた一角のイタリア料理店では、ディナータイムのテーブルに一つずつ置かれた古風なランプが鈍く瞬いていた。
 半ば髪が白い、小柄な人物が近づいてきた。港北警察署長・酒井雅昭(まさあき)警視長。非番の今日はスラックスにスポーツシャツ。一方の小田もシャツの裾はGパンの上、前髪も額に垂らし、重大任務を帯びた警察官僚のイメージはない。
「わざわざ来てもらって申し訳ない」
「いえ、自分がお願いしたことですから。尤もご心配通り、あちらを出た後気をつけていたら、尾行がついていました。一旦横浜に出てまきましたよ」
「そうか……」
 会話が一旦途切れ、酒井が示したベンチに二人は並んで腰を降ろした。
「大野君から電話があったよ。即答できる話でないから返事は保留しているが……さて、何をしろというのかな?」
「確認しておきますがこれは、あくまで今回の任務遂行が目的で、それは部長にも進言しています」
「任務……」
 酒井は遠くを見る目になった。

 一九九四年十二月、国外逃亡中と思われていた日本紅衛兵メンバーが都内で目撃され、警察は山梨、長野方面へと追跡を開始したが、同十八日、捜査網を突破した一部メンバーが白馬山麓の山荘に潜入、管理人の妻を人質にその後十日間籠城。有名な「日本紅衛兵白馬山荘事件」である。
 その辣腕を「カミソリ」と綽名された警察庁長官・後藤雅史(ごとうまさし)警視監が指揮官に指名したのは警務局監察官兼警備局付・佐々木篤警視正(現警察庁長官)。警視庁精鋭と共に乗り込んだ彼は郷党意識の強い長野県警もよく掌握、工事用鉄球クレーンなどを駆使し同二十七日に突入、民間人を含め十数名の死傷者を出しながらも全員を逮捕し人質を救出した。人質は直ちに入院、捜査員が病室で事情聴取する他は衰弱を理由に面会謝絶。犯人と一週間以上起居を共にしていた彼女からの捜査情報漏洩防止が真意だった。
 だが直後、そこまでして遮断した事情聴取内容を某新聞地元版がスクープ。先を越された他紙は大騒ぎになり、すわ内部漏洩かと思われたが、真相は新聞記者が病院職員を装い病室に潜入、盗聴していたのだった。
 犯人は盗聴器の電池交換に再度侵入したところを建造物不法侵入・公務執行妨害で現行犯逮捕、だが以降の捜査は突然打切り。そして年明けの阪神・淡路大震災、地下鉄サリンという大惨事で忘れ去られていった。
 警察でも特に処分はなかったが、病院警備責任者の長野県警・酒井警備部長は間もなく警視庁地域部付部長、そして神奈川県警港北警察署長に転任。カモフラージュにワンクッション置いた、巧妙な左遷だった。

「君の任官前の話だが?」
「局公安課から漏洩との噂もあり、万一事実なら今後のためにも然るべく対処すべきでしょう。これは大野部長のお考えでもあります」
「当事者としては、コメントしかねますが?」
「……」
「第一、判決も数年前に確定しており、当時の記録を再調査するにも警備局の了承が要るが、現警備局長がうんと言うと思うかね?」
「長官に直訴する選択肢もあります。あの時も上部の意向に盲従せず指揮を執られたとか。ですから今回……」
「小田君、それはいけない」
 小田の言葉を酒井が語気鋭く遮る。ベンチの真後ろには巨大な観覧車がそびえ立ち、イルミネーションが二人の背中を蒼白く照らしていた。
「現場にも理解のあるあの方だ、確かに否とは仰るまいが、だからなおさら瑕をつけることはできない。何よりも、今回の警備任務に支障となる行動は厳に慎むべきだろう」
「申し上げた筈です。その任務遂行が目的だと」
「……」
 酒井のキャリアを狂わせたあの事件とその張本人。正面に向き直り陰になったその胸中は、横にいる小田にも読み取ることはできなかった。
「もう少し考えさせて欲しい……時間がないのはわかっている。数日中に大野君に電話するよ。今後この件で君と話すのもなしだ。実は、そのように頼まれていてね」
「は……」
「監視というのは、工藤君のことかね?」
「……」
「君達の関係はすぐわかった。ここ数日は結構楽しませてもらったよ」
「それは、お見苦しいものを……」
 小田は苦笑するしかなかった。
「まあ、事情はわかった。時間は大丈夫かね?確か今夜中に、京都へ向かう予定では?」
「最終の新幹線です。今からでしたら何とか」
「では、あまり引き止めてはいけないね。返事は、今言った通り大野君にしておくよ」
 酒井はそう言ってニッコリ笑うと、すっかり日が落ちた屋上を夕闇の中に去っていった。

 五月十日。
 鄭を追っていた大阪府警察の捜査員が上京。邦人失踪や五百円硬貨偽造で、以前からマークしていたと言う。
「新横浜も随分変わりましたね。『のぞみ』も結構停まるし」
 新幹線で現れた捜査員はそう言った。警備部外事課・斎藤剛(さいとうつよし)警部。後退の始まった生え際に細い垂れ目、一見どこにでもいる、くたびれた中年サラリーマンだ。
「以前もいらしたことがおありですか?」
 加藤が質問する。代わりに言葉をかけるべき工藤は、仏頂面で黙り込んだままだ。
「プライムホテルですか、あの煙突みたいなホテルがまだなかった頃です」
「そうですか。プライムホテルは十数年前の開業ですから、それより前ですね」
 お茶を持参した警官が刑事課応接室を退出すると、あらためて本題に入る。
「この人物は約一年前から横浜にいたようですが、それ以前の情報がまるでないのです。把握されている範囲で、もう少し詳しく知りたいのですが」
「いいですよ。本名は鄭栄秀(チョンヨンス)、北朝鮮平安北道出身、現在四十歳。これが顔写真です」
「やはり朝鮮人でしたか……」
「大阪の総聯支部とは全く接触せず、出入りしていた組でも素性は知らなかったようですが。それも特定の組の構成員ではなく、何かあった時の……」
「隠し弾かね?」
 工藤が訊ねた。このタイミングでの大阪府警出現に内心当惑していたが、追い返せば角が立つし、必要ならその役目は小田に押しつければいい。
「そのようです。凶悪事案にも関与の疑いがありマークしていたのですが、立件寸前に逃走(ドロン)で上からは大目玉です……こちらではコックに化けとるとか?」
「中華街です。事件に関わった形跡は現在なし」
 加藤が答えた。
「大阪におった時とえらい違いですな……初めて入国が確認されたのは八年前。最初は工事現場で作業員をしていたがその後コックに転職」
「凶悪事案というと、銃器の扱いもできた……?」
「でしょう。その後どうやら一度帰国、再入国も魂胆あってのことでしょうな」
「工作員の可能性が大ということですね……そちらの上部に本件は?」
「いえ、まだ知らん筈です。まあ、それでもアンテナは立てていたので、今回こうして再会できたわけですが」
 斎藤はそう言い、机上の写真をとんとんと指で叩いた。
「わかりました。現在当方も重要参考人としてマーク、当面公表はしませんが県下を中心に所在確認中です」
「そうですか」
「それともう一つ、鄭はここで或る女性と頻繁に接触していたらしいのですが、お心当りは?」
「接触言うと、蒲団の中ではないですな?」
 斎藤は冗談めかして言ったが、目は笑っていなかった。
「記録によると相手は皆男で、ホモではと話していたくらい女ッ気はなかったですよ。帰国中異性に目覚めたのでなければ、まあ十中八九一味でしょう」

三.爆破予告(下)

 五月三日。
 中川と早紀はJR関内駅の改札前にいた。本番を一週間後に控え一日だけ出た休暇を利用、二人と尚子とのダブルデートをセッティングしたのは加藤。連休の最中とて街は内外の観光客で一杯だった。馬車道の老舗カフェレストランで加藤、尚子と待ち合わせ、新港埠頭の赤れんがパークで小休止。六年前に古い倉庫やホーム跡を大改修、石畳と芝生が広がる公園だ。映画を二本観ると外はもう日が傾き、引込線跡を遊歩道に整備した汽車道を桜木町駅前へ出てイタリア料理店で夕食となった。
「あたしは、男のところにいた女ってのが気になるな」
 早紀がトイレに立った隙に、仕事の話になる。外交懸案がまだ山積する中の総書記訪日、指揮官は警備局付ながら警務局監察官。何かと異例ずくめの警備任務だが、加藤の言葉によれば今回は何でも佐々木篤(ささきあつし)警察庁長官の指名人事で、佐々木自身帯びたこの肩書こそ思い入れではと熱っぽく語る加藤に、あの無愛想な監察官への想いを読み取った中川だった。
「素性不明というだけではね……最近は見かけないとかで、住人の記憶も曖昧だし」
「でも、さっき港北署に電話したら、今日のガサ入れ(家宅捜索)では身の回りの物に加え写真や手紙類が見当たらなかったそうだ。ちょっと出かけたという感じじゃないな」
 加藤が二皿目のパスタを注文しようと手を挙げながら言う。スリムな体型からは想像しにくいが署内で知らぬ者はない大食漢だ。
「処分して高飛び、か?」
「多分。今は港南署扱いだが、こいつとはまた関わる予感がする」
「そいつも一味かな?尚子、どう思う?」
「それが一番自然ね。警備会議で言ってた、活動支援ネットワークじゃないかしら」
「モンタージュでもばら撒けば手っ取り早いのに」
「それができれば最初から指示が出ているさ。北朝鮮絡みらしいんで慎重なんだろう」
「政治的配慮か……飯が不味くなるな」
 加藤がそう言い、運ばれてきたミートソースのラザニアを頬張ったところで、戻ってくる早紀の姿が現れた。
 食事を終え再び屋外に出ると、昼間渡ってきた汽車道はイルミネーションでライトアップされ、黒く横たわる運河の上に浮き上がっている。その時前を歩いていたカップルを、尚子が微笑して指した。
「あ……!」
 加藤の大声に振り返り赤面したのは、伊東と斉木だった。
「あ、どうも……」
「お前らもデートかよ……そう言えば栄署の仏さん、犯人の目星はまだだって?計画犯行だったらしいが……」
「ええ。だから私、一サポーターとしても許せないんです。絶対捕まえたいですね」
 早紀の前とて話はそれきりになったが、中川達もその後の経緯は聞いている。
 三浦達哉の失踪直後、付近で争っている人物二人を住民が目撃。通報で急行した警官とすれ違いで、相手らしい男が立ち去っていた。とどめを刺さず逃走した点も、警官の気配に慌てたと考えれば説明はつくのだ。被害者が現場付近にいた理由は未だ不明だが、犯人にも全く土地勘のない場所での犯行だとは考えにくく、調べれば必ず接点は見つかるだろう。
「あ、そうだ中川、お前昨日千円貸したろ?持ってるか?」
「ああ……ちょっと待ってくれ」
 中川が取り出した財布から落ちた紙片を、加藤が素早く拾い上げ
「ん?何だこれ」
「あっ!やめろって」
「何、何……あ」
 それはJリーグの観戦チケットだった。今度は中川が赤面、早紀が微笑する脇で、尚子がきまり悪げに黙り込む。目の前にあるのは早紀と観に行った去年の物だが中川のJリーグ観戦は最初でなく、そしてその時のチケットをまだ持っていることを、尚子は誰にも話せずにいた。
「茶色いものがくっついてるな。枯れ葉……じゃないよな?一年前と言うと春先だし」
「そうだな……ああ、桜の花びらだ。駅への道筋、花見代わりに通った覚えがある。そう言えば、このチケットを手配してもらったのも斉木だったな」
「そうか、奇遇だねえ……記念に飲み直すか。中華街脇に落ち着いたバーがあるんだ」
 加藤が尚子を引っ張るように、先に立って歩き始めた。

 同時刻。
 周りに誰もいない港北署屋上で、工藤が携帯電話をかけている。呼出し音に続いて、井出が出た。
――井出です……昨夜の首尾はいかがでした、だろう?
「い、いえ……」
――間違いない。サロメの依頼主はやはり平壌だ。狙撃犯を返討ちにするから黙認しろと言ってきた。役者が違うのか、手出し無用に近いことを小田君が言っても笑っていたよ。内心はどうだったかわからんが。
「小田さんらしいですね」
――しかし日本の立場上、一度正論をぶつける必要はあると思って引き合わせた。反応は案の定だったが。
「さすが局長です」
――お世辞はいい。それより捜査状況は?
「港南署管内の男の部屋を今日、令状が出たので捜索しました。どうやらこの男が本件のキーマンのようです」
――外事の情報だったな。
「ただ、いずれにせよこの男が浮上したとなると、稲生氏がどこからの情報で動き出したかも……」
――何が言いたい?
「被害者が計画を察知したルートが明るみになれば……」
――心配かね?そうだねえ、稲生氏にリークしたのは……
「しかし、その指示は――」
――何かね?
「い、いえ、何でもありません」
――……確認しておくが、誰にも気づかれていないだろうね?
「はい、それはもう……」
――ならいい。外務省も入江課長限りだったらしく、石崎局長は「訳がわからない」と言っていたが、公になれば私も君も身の破滅だ。そこは、くれぐれも気をつけてくれたまえ。
「わかっています」
――……今日は休養日だったな。小田君の様子はどうだ?妙な動きはしていないかね?
「はい。先程横浜駅前の映画館に入ったとの報告がありました。現在は観劇中の筈です」
――港北署長の様子は?
「さあ……都筑区内のご自宅では?特に監視はしていませんが何か?」
――いや……しかし、監察官警備局付とは考えたねえ。案の定長官は一も二もなく賛成したが。
「全てを勘案した上、最善の策を考えたまでです」
――まあいい、そういうことにしておこう……
「ところで昨夜、徳田信枝の件は話題になりましたか?」
――いや、そう言えばその話は出なかったな。一〇〇万ドルの要求もそれきりだし……当の徳田が拘置中のせいかも知れないが、それも逆に不気味だな。この後菱和ビル事件で送検予定だが、移送時に逃走を企てる可能性もある。警視庁にも念を押しておこう。
「どうでしょう?徳田信枝の件もカードに使えませんか?」
――どう使うんだ?下手すると弱みを握られかねんが?
「今回の狙撃計画では、平壌に日本への借りがあります。そこで、徳田信枝から接触があれば拒否してくれと。そうすれば今後の日朝関係にもプラスになる筈だと」
――なるほど、平壌側が拒否すれば、渡朝要求自体宙に浮くわけか……わかった、盧氏に私から連絡を取ろう。君、これは誰かに話したかね?
「いえ、局長お一人ですが……伏せておきますか?」
――関知している人間は最小限にしたい。当面私限りで頼む。
「わかりました」
――狙撃計画と日本紅衛兵、別件らしいがうまくいけば同時に解決できるかもしれない。表にはできないが、後々君のことは悪いようにしないから、この調子で頼むよ。
「ありがとうございます」
 電話を切った工藤は額の冷汗を拭った。咄嗟の思いつきだったが井出の機嫌は損ねずにすんだと、人心地を取り戻した彼の唇に自嘲の冷笑が浮かんでいた。


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