夢を持ちましょう

騙されても良い、蔑まれても良い、人には真心を以て交わり、親切にしたい

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 昨年の冬か、一昨年の初冬かに 「冬来たりなば、春遠からじ」 のあの一節に

ついて、このブログを書いた。 私は若い頃にこの言葉は、万葉か古今かの時代に

大宮人が詠んだ和歌の下の句かと思って居た。 次数が七七であったから・・。

 又 誰に聞いても、長閑で平和な時代の優雅な殿上人が詠んだ、短歌の下句だと

言う人達が多かった。

 所が、もう三十年も前に尊敬する先輩が教えて呉れた。

「其れは和歌の下の句では無いよ、何とか言う西洋の詩人が読んだ詩の中の言葉だ。

 何と謂う詩か、誰が訳したのかは知らないけどね。」  是には些か驚いた。

 一体 誰が詠んだ詩なのか、誰が訳したのか、私の薄っぺらい脳味噌の中の片隅に

記憶されて、何年も何年も徒に、過ぎて行ったが、去年 偶然新聞の片隅にこの

〔冬着たりなば、春遠からじ〕の言葉を見付けた。 其処には作者が「シェリー」と

だけしか書かれていなかった。
 
 そうか シェリーと云う外人が詠んだ詩の一部か、私は新たな発見をした思いで

あった。 それからと云うものは、何とかこの詩の本当の姿を見付けたい、文献を

手に入れたい と念願していたが、過日 と言っても2月の半ばの事であるが、

罹り付けの医院の待合所で、何気なく週刊誌を見て居たとき、と或る頁に、

〔パーシー・ビッシュ・シェリーの西風の賦より〕と見出しが有って、あの

「冬来りなば・・・・」の一節が書かれてあった。 

 ウン この詩の題名は「西風の賦」なのか、乏しい私の頭脳にも一筋の光が

射して来た。 其の日からの私は、明けても暮れてもこの「西風の賦」の訳文を

何とかして手に入れたいと思ったが、さて どのような本に収録されているのか、

先ず其れを捜す事となった。 出版元も判らないし、訳者も判らない。

 一節のみとは言え、是程の名訳はそうザラには無い、シェリーと言う名前から

イギリス人であろうと考えたが、何時の時代の人物かも未だ判っていない。

 私は有名な〔上田敏〕の海潮音を持って居るが、其れには載っていない。

 3月の中頃、シェリーの詩の書かれている本が見付からない侭、私は本屋で

新潮文庫の目録集を見るとも無く捲って居たら、〔シェリー詩集 上田和夫〕と

云う文字行が飛び込んで来た。 直ちに其の詩集はないかと捜したが、残念にも

書棚には無かった。 通りかかった店員さんを呼んで、この本はないか と

訊ねたが、在庫の無かった。 

 店員さんは親切にも、「取り寄せましょうか」と言って呉れたので、是非頼む 

と言って帰って来た。 さぁ 待ち遠しい日が続いた、3月の20日 お彼岸の

日に書店から電話が掛って来た「済みません、あの本は昭和55年の発行でして、

もう 発行元にも無いそうです、相済みません」と言う事であった。

 私は一度はガッカリしたが、其れでは古本屋を当って見ようと考えた。

 勿論 こんな名張市の如き田舎町には、大した古本屋は無い、大阪で捜そう と

思い、丁度 大阪の親戚へ行く用に託けて、梅田の古本屋街へ行って其れこそ、

舌舐め摺りする様にして捜したら 有った! 文庫型の本で、確かに本の題名も

訳者の名も間違い無い。 買う前に念の為に〔西風の賦〕と言う詩が有るか否かと

紐解いて見ると、〔西風に寄せる歌〕とある。 本文を見ると、是は又 何と

長文の詩で、最後の句は「冬来りなば、春は遠からずや」と有る。

 是は違う、〔遠からずや〕ではなく〔遠からじ〕でなくてはならない。

 一瞬 気落ちがして、呆然となっていたらしい。 だが 落ちついて考えれば、

是は訳者が違うのではないか と思った。

 そうだ 同じ詩でも、訳す人に拠っては表現が異なる筈である、もう一度気を

取り直して捜して見様と思い、この本を書棚に戻そうとした時、その隣をフト

見ると「イギリス名詩選」と言う題名で訳者は「平井正穂」とある。

何の気なしに開こうとすると可笑しな事に、この本は左開きで横書である。

 目次を目で追っていると、「シェリー  西風の賦」とあるではないか!

「是や!」私の胸は轟く思いであった、その頁を繰ってみると、矢張り長い詩の

綴りが並んでいて、最後に〔冬来たりなば春遠からじ、と私は今こそ叫ぶ!〕と

有る。 嬉しかった、長い事捜していた甲斐があった、わたしはその2冊の

古本を買求めて、意気揚々と帰って来た。

 今 改めてこの 西風の賦 を詠み返して診た。 1819年の作品とあるが、

決句の穏かな表現とは、全く異なる凄まじい言葉が並んでいる。

 風 特に西風に対する、一種の呪いのような詩文である。

 まぁ 其れは如何でも良い、私は長年の夢であった〔冬来りなば・・〕の本物を

手に入れたのである。 古本ではあるが、大事にしようと思って居る。

 記念すべき其の日は、4月の8日である。
 

 


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