アルビノについてのマニアックな知識をひけらかすブログ

長いので「アルビノについての(略)ブログ」でいいです。基本的に文献レビューです。

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   いつもお世話になっている「見た目問題」解決NPO法人のマイフェイス・マイスタイル(MFMS)のなかでは、アルビノは「見た目問題」の疾患のひとつに位置づけられています。日本アルビニズムネットワーク(JAN)スタッフでもありMFMS理事でもある粕谷くんがアルビノ当事者ということもあり登場する頻度は多いです
   これは基本的にはよいことです。ただ僕はいつの間にアルビノが「見た目問題」の代表的な疾患として扱われるようになったのだろうと不思議に思うのです。いや、別に揚げ足取りをするつもりもないのですが、「見た目問題」におけるアルビノの位置づけって微妙なところな気がします。
   そのような次第で「見た目問題」あるいは「ユニークフェイス問題」が誰を対象にしているのかちょっと文献をあさってみました。結論から先に言うと、関わる人や団体が増えるにつれてゆるやかにすそ野を広げていったという感じです。

   MFMSは、NPO法人ユニークフェイスの事務局長をやっていた外川浩子さんが2006年に独立して作った団体で、基本的な問題意識はユニークフェイスから引き継いでいます。ユニークフェイスは、1999年3月にジャーナリストの石井政之さんが『顔面漂流記』を出版したのと同時に設立されました。『顔面漂流記』の巻末には「顔に疾患、損傷などがある当事者のためのセルフヘルプグループ『ユニーク・フェイス』への連絡について」と、各支部の世話人と連絡先が載っています(石井 1999: 284)。些細なことですが、「ユニーク」と「フェイス」の間にナカグロが入ってますね。
   さておき、これは、セルフヘルプグループとしてのユニークフェイスがどんな人のためにあるのかを説明しています。だから、「ユニークフェイス」とは誰なのかという定義ではありません。でも、「どこに=顔に」「何がある=疾患、損傷などがある」「どんな人=当事者」というおおよその定義のプロトタイプにはなっています。
   3月に結成後、ユニークフェイスは少しずつ注目を集め、度々新聞でも取り上げられるようになりました。比較的早いものでは「病気やけがで顔に傷やあざなどのある人や家族が、お互いに悩みを共有するグループ『ユニークフェイス(固有の顔)』を結成」と書います(鯨岡 1999)。ここでは新たに「病気やけが」による「傷やあざ」というふうに原因と結果を分けた書き方になり、当事者だけでなくその家族も含むことが明記されました。
   それからもいろんなメディアに登場し、2000年代初頭に立て続けにユニークフェイス関連書籍が刊行されました。これらの中では、ユニークフェイスという言葉は2つの意味で用いられており、ひとつはユニークフェイスの当事者をさし、もうひとつはグループ名です。以下は、一例として解放出版社の一問一答シリーズです。
   冒頭の最も簡潔な活動主旨は「ユニークフェイスは病気やけがなどが原因で、機能的な問題の有無にかかわらず、明らかに『ふつう』と異なる容貌をもつ人たちの集まり」です。さらに本文でもう少し詳しい補足があり、「ユニークフェイスは顔や体にさまざまな症状がある人を対象に活動」しており、「顔や体の機能に問題があってもなくても、遺伝、病気、外傷などが原因で明らかに目立つ容貌である人とその家族」が参加していると続きます。そして、「会員のかかえている症状は、血管腫、太田母斑、リンパ管腫、頭蓋骨変形、小耳症、レックリングハウゼン病、円形脱毛症、アトピー性皮膚炎、熱傷瘢痕(やけどによるケロイド)、口唇・口蓋裂、顔面部のガン、交通事故による傷跡、などです」と具体例をあげています。それだけでなく、「外見に特徴が出てしまう病気、症状をすべてカバーしています。皮膚などの病気はたくさんの種類があります。『見た目の違い』のある病気・状態の人をすべて受け入れています」と書いています(松本ほか編 2001: 8-9)。
   あげられている具体例が何であれ、最後の引用にあるように「外見に特徴が出てしまう病気、症状をすべてカバー」してるというのが重要です。すそ野は限りなく広く、上記の具体例は、あくまで2001年時点で会員だった人たちの症状をあげているということです。「たくさんの種類」があるためユニークフェイス関係者もまだ把握してない症状も含み込むことを示唆してます。
   また、2001年にはこの他にも『顔とトラウマ』(藤井・石井編 2001)と『見つめられる顔』(石井ほか編 2001)が刊行されていて、『一問一答』も含めて、いずれにおいても巻末に「主な」疾患、外傷、症状についての解説があります。説明文もついているので、ここでの具体例は少なめで、血管腫、太田母斑、リンパ管腫、レックリングハウゼン病、口唇・口蓋裂、小耳症、円形脱毛症、熱傷があがってます。あわせて、個別の疾患ごとのセルフヘルプ・グループの紹介があり、さらにもっと詳しく知りたい人のための読書案内があるのが特徴的です(藤井・石井編 2001: 211-20; 石井ほか編 2001: 191-2; 松本ほか編 2001: 93-5)。
   さて、「すべてカバー」しているなかで何をもってして「主な」と言えるのでしょうか。「主な」疾患だからといって、他に比べてより困難に直面しているとか典型的だとかではないだろうし、個別の症状を超えて共有できる問題を軸にしているのだから、そうやって「誰が誰より大変だ」と比較することには意味はありません。また、実数がわかってないのがけっこうある以上、患者・当事者の数が多いから「主な」と言ってるのでもないでしょう。
   数限りなくある症状のうち、ユニークフェイスの問題意識を共有し会員になって活動に参加しているメンバーの症状を、さしあたり「主な」ってことで選んでるんだと思います。例えば、会のなかで中心的な役割を担い、メディアからの取材にも応じているメンバーが血管腫やリンパ管腫、レックリングハウゼン病だったとか。また、口唇・口蓋裂や円形脱毛症、熱傷などは、すでにそこそこの歴史をもった個別のセルフヘルプ・グループがあり、ユニークフェイスとも交流してて両方の会員になってる人もいたとか。以上について、「主な」の選び方が恣意的だなどという指摘は妥当ではありません。同じ問題意識を共有する人びとを「すべてカバー」しているとはいってもすべてを例示できないから、今いるメンバーから判断しただけなのですから。

   で、ここまでにはまだアルビノは登場してません。なぜなら2001年時点でユニークフェイスにはアルビノの会員は1人もいなかったはずで、JANもドーナツの会もなかったからです。アルビノ当事者が、っていうか僕が会員になったのは2002年4月でして、その後2002年から2004年にかけてはニュースレターにアルビノ当事者の会員、っていうか僕が出てきます。定例会報告などで。それから記憶は曖昧だけど、2002年末か2003年春頃には事務局長になる前の外川さんにも会ってる、と思います、多分。
   そのような次第で、財団からの助成を受けて2003年に作成したPR用のパフレットの会員の症状一覧には「先天性色素欠乏症」がもれなく入ってます。ただこれは、アンケートによって明らかになった2002年秋現在の当事者会員の症状を全部載せているので「主な」ではないです(ユニークフェイス 2003: 9)。そのほか、『そよ風のように街に出よう』から関西在住の会員数名が取材を受けた記事に、アルビノ当事者の男性、っていうか僕が出てきます(牧口・岡本 2003)。

   それから数年は手元にある資料が手薄で、2006年に公開されたドキュメンタリー映画『ユニークフェイス・ライフ』を紹介した新聞記事などがありますが、書き方は設立当初とほぼ同じです。MFMSが2006年にできて、最初に開催したオープンミーティングが2008年10月で、このイベントの案内が新聞記事になってます。それによれば、MFMSとは「顔のあざや脱毛症など『見た目』の問題に悩む人を支援する」団体です。やっぱり新聞記事は簡素ですね。このときはJANも参加したので「体の色素がない『アルビノ』や円形脱毛症、サリドマイド被害者の当事者団体」と紹介してもらってます(小川 2008)。ほかの2つが説明なしなのに対して、「体の色素がない」と説明せねばならないあたり、世間一般ではまだまだ認知されてなかったとわかります。
   以降、JANとドーナツの会はMFMSとの連携を深めていき、MFMSが発行する「見た目問題」総合情報誌『マイフェイス』の創刊号のインタビュー記事はアルビノ当事者の2人、っていうか僕と粕谷くんになりました。さらに『マイフェイス』では、毎号粕谷くんのコラムも読めます。
   また、当然創刊号では代表の外川さんが「見た目問題」とは何であるのか説明しています。それによると、「『見た目問題』とは、顔や身体に生まれつきアザがあったり、事故や病気によるキズ、ヤケド、脱毛など『見た目』に症状のあるみなさんが日々ぶつかっている問題」と定義されています。そして、「主な症状」のページにあがっているのは、アルビノ、口唇・口蓋裂、脱毛症、太田母斑、単純性血管腫、白斑、ヤケド、顔面神経麻痺、レックリングハウゼン病、アトピー性皮膚炎(色素沈着)です(外川 2010: 3-5)。
   MFMSは基本的にユニークフェイスの問題意識を引き継いでいると先に書きましたが、軸足の位置は多少異なっていて、特に個別疾患のセルフヘルプ・グループとのネットワーク作りに力を入れてます。そして、おそらくその結果ですが、新たにMFMSと関係するようになった団体があると「主な症状」が更新されます。だから、『マイフェイス』最新の6号では、眼瞼下垂、トリーチャーコリンズ症候群、乾癬、魚鱗癬が加わってます(外川 2011: 4)。

   ユニークフェイス問題であれ「見た目」問題であれ、そのカテゴリーに含まれる症状はたくさんあります。核になる定義を明確にしながら、その範囲を明確にしないことで、同じ問題意識を共有するすべての人びとをカバーできる可能性に開かれているというのが強みではないでしょうか。以前、西倉実季さんがMFMSのワークショップで、単純性血管腫の石井ではなくユニークフェイスの石井として活動を続けてきたことに意味があると評価してました。個別の疾患の枠を超えて連携したから「主な症状」が一定にならず、誰が関わってるかによって毎度違うものになるけど、この必然は肯定されてよいです。
   で、アルビノはそこに途中から入っていって、けっこう積極的に関与したから「主な症状」に含まれるようになっただけです。他の症状も同様に、どれかひとつ「代表的な」あるいは「典型的な」ものがあるわけではないはずです。

参考文献(発表年月順)
石井政之, 1999,『顔面漂流記――アザをもつジャーナリスト』かもがわ出版.
鯨岡秀紀, 1999「『固有の顔』に理解を――あざや傷の悩み共有する会結成」『毎日新聞』1999年8月2日夕刊.
藤井輝明・石井政之編, 2001,『顔とトラウマ――医療・看護・教育における実践活動』かもがわ出版.
石井政之・藤井輝明・松本学編, 2001,『見つめられる顔――ユニークフェイスの体験』高文研.
松本学・石井政之・藤井輝明編, 2001,『知っていますか? ユニークフェイス一問一答』解放出版社.
NPO法人ユニークフェイス, 2003,『いろんな顔で話そう』NPO法人ユニークフェイス.
牧口一二・岡本尚子, 2003,「それぞれに違った顔を持っている――顔のNPOユニークフェイス」『そよ風のように街に出よう』68: 1-6.
小川慎一, 2008,「『見た目』で悩まないで――脱毛症など当事者が体験語る」『東京新聞』2008年9月27日.
外川浩子, 2010,「『見た目問題』とは」『マイフェイス』1: 3-5.
外川浩子, 2011,「『見た目問題』とは」『マイフェイス』6: 3-4.

2013.1.30 『そよ風』追加

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