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アルビノが小児慢性特定疾患治療研究事業(以下、小慢事業)の対象疾患になっていることはすでに紹介しました⇒。ただ、なぜそこに、いつから含まれているのか、いろいろ調べてみたけどわかりません。ご存知の方がいれば教えていただけると幸いです。
以下、『厚生白書』については、紙媒体のものではなく厚生労働省の白書等データベースサービスを検索しました。紙媒体のページ数はわからないので、どこの項目に書いてあるかを示しておきます。また、通知・通達の類いも厚生労働省の法令等データベースサービスがあるんですけど、公開されてないものは確認できませんでした。孫引きは正直に孫引きって書いてます。 まず基本的なことを説明すると、小慢事業は1974(昭和49)年にスタートしており、当初は医療費の公費負担が主な役割でした。ただ、もともと厚生省の事務次官通知に基づく国の補助金事業だったため、補助金削減により縮小される可能性が常についてまわりました。それが、児童福祉法に基づく安定的な事業になったのは2005(平成17)年からです(加藤 2006: 27)。 厚生労働省ホームページの小慢事業の概要によれば、対象は現在514の疾患が11疾患群に分類されています。アルビノは、先天性代謝異常という疾患群に位置づけられていて、そこでは白皮症と表記されてます。対象疾患早見表では認定基準が細かく定められていて、白皮症の「全A」は「疾患名に該当すれば対象となる」だそうです。 『厚生省五十年史』という鈍器のような本があります。それによれば小慢事業にはその前身となる医療費の公費負担制度があり、1968(昭和43)年から先天性代謝異常、1969(昭和44)年から血友病、1971(昭和46)年から小児がん、1972(昭和47)年から慢性腎炎・ネフローゼ、小児ぜんそくがそれぞれ対象になっていました。これらの公費負担制度を統合し、さらに対象疾患を拡大して始まったのが小慢事業です(厚生省五十年史編集委員会 1988: 1669)。 先天性代謝異常は、小慢事業が始まる前から公費負担制度の対象になっていたことがわかりました。ではそこに含まれていた具体的な疾患はというと、フェニルケトン尿症、先天性クレチン症、ウィルソン病、先天性無ガンマグロブリン血症です(『厚生白書 昭和43年版』>第3章:社会福祉>第1節:児童と家庭の福祉>1:母子保健>(2):母子保健対策の現状>イ:乳幼児保健対策)。 さらに、先天性代謝異常の公費負担では、小慢事業が始まる前年の1973 (昭和48)年にシスチン尿症、ホモシスチン尿症、楓糖尿症、ガラクトーズ血症が新たに加わっています(『厚生白書 昭和48年版』>各論>第4編:社会福祉の増進>第1章:児童と家庭の福祉>第2節:母子保健及び小児医療> 1:対策の現状)。少なくともアルビノは、小慢事業の前身となった医療費の公費負担制度の対象にはなっていなかったことがわかります。 「小児慢性特定疾患治療研究事業の対象疾病について」という通知があり、それによれば「その対象となる疾病を別紙のとおり定めた」そうなのですが(昭和49年9月24日 児母衛第29号)、この「別紙」を見つけられません。しかもこの通知も、厚生労働省データベースではなくて立命館大学先端総合学術研究科のデータベースからの孫引きです。 また、さしあたり1974年の10月から先天性代謝異常の対象が拡大されたようですが、具体的な疾患名が書いてません(『厚生白書 昭和49年版』>各論>第4編:社会福祉の増進>第1章:児童と家庭の福祉>第2節:母子保健及び小児医療>1:対策の現状>エ:小児慢性特定疾患医療)。 アルビノは、小慢事業が始まる前からあった公費負担制度に含まれていて、その名残で今も残っているのではないかと予想していたのですが、それはハズレでした。 さて、先の立命館のデータベースには「小児慢性特定疾患治療研究事業について」という一番最初の通知も載ってます。その通知には「小児慢性疾患のうち、特定疾患については、その治療が長期間にわたり、医療費の負担も高額」になるから、小慢事業によって「その研究を推進し、その医療の確立と普及を図り、併せて患者家庭の医療費の負担軽減にも資することを目的とする」と述べてあります(昭和49年5月14日 厚生省発児第128号)。この公費負担は、当初はもっぱら入院に限られていたのが、徐々に通院も対象にする疾患が拡大していきました。 上記にもあるとおり、小慢事業は治療が長期間にわたり、医療費も高額になる疾患を公費によって支援してくれます。そもそも、そうした患者や家族、あるいはその実情を知る医療関係者に求められて発足した制度なのでしょうから当然です。でも、アルビノが原因で入院することなんてそうそうめったにありませんし、定期的な通院もそんなにないと思われます。だからやっぱり、なぜ対象疾患になっているのか不思議なのです。 ならば、アルビノは小慢事業によってどのような恩恵を受けられるかというと、入院や通院ではなく、日常生活用具としての紫外線カットクリームです。「小児慢性特定疾患児日常生活用具給付事業の実施について」という通知があり、そこに「紫外線に対する防御機能が著しく欠けて、がんや神経障害を起こすことがある者」を対象に紫外線カットクリームを給付すると明記されています(平成17年2月21日 厚生労働省雇児発第0221002号)。そんな大げさなことにはならないけど⇒、まぁいただけるものはいただきましょう。 ただしこれは、2005年に小慢事業が法制化されたときの通知で、2001 (平成13)年から開催されていた「小児慢性特定疾患治療研究事業の今後のあり方と実施に関する検討会」の報告を受けてのものです。その検討会で日常生活用具の給付のための制度の必要性が意見として出て、その結果新たに制度化されたのが日常生活用具給付事業です(来生 2010)。つまりそれ以前は、小児慢性特定疾患を対象にした日常生活用具の給付事業がなかったってことです(ちなみに、障害者や高齢者対象の補装具や日常生活用具の給付事業はもっと前からありました。僕の遮光眼鏡もそのひとつです⇒)。 アルビノにとって、小慢事業から実質的に受けられる恩恵は、紫外線カットクリームぐらいしか思いつきません。だから、その給付事業の創設とともに新たに対象になったとすれば納得できます。でも、少なくとも法制化される以前からアルビノが小慢事業の対象疾患だったことは、国立成育医療センター研究所成育政策科学研究部の集計からわかります⇒。何のために対象に含まれたのか、いつの間に含まれるようになったのか、ますますわからなくなりました。 ところで、2005年の法制化の際には、対象疾患の見直しも行われています。委員の1人である加藤忠明によれば、その際には(1)慢性疾患であることを前提として、(2)生命を長期にわたって脅かす疾患であるか、あるいは(3)症状や治療が長期にわたって生活の質を低下させる疾患であるか、あるいは(4)長期にわたって高額な医療費の負担が続く疾患であるかなどを考慮したそうです(加藤 2006: 28)。アルビノがどれに当てはまるのかさっぱりピンとこないわけですけど、強いて言うなら(3)の生活の質の低下なのでしょうか。 なお、難病対策も同様なのですが、基本的に他の医療費公費負担制度でカバーされている疾患はもともと含まれていません。またこのときの見直しで、急性の経過をたどる疾患や症状が軽微な疾患が除外され、分類法も改められて現在の11疾患群、514疾患に落ち着いた次第です(加藤 2006: 28-9)。もちろん除外してほしかったなどと言うつもりはないですけど、軽微な疾患と見なされなかったってことですかね。それとも、特に議論の的にならずに、そのまま対象であり続けただけかもしれません。 未確認のものを確認したらわかることも出てくるかもしれませんが、とりあえず、現状はわかりませんでしたという報告です。 追記:2013.01.31
とりあえずひとつ見つけました。『母子衛生行政法令・通知集』というとても便利なものがありまして、そこに「小児慢性特定疾患治療研究事業の対象疾病について」の通知が載ってました(昭和62年7月9日厚生省児母衛第22号)。ただし、1987(昭和62)年の改正の通知なので、1974年の最初のものではありません。
それによると、「今般、対象疾病の系統化及び、個別承認分の追加等を考慮し、対象疾病を整理した」とあり、また「整理前の対象疾病については、従前どおり対象である」となってます(母子衛生研究会 1988: 332)。つまり、追加はしたけど削除はしてないということでしょう。これの別紙の先天性代謝異常の疾患群に白皮症が入ってます。
少なくとも、1987年には対象疾患にアルビノが含まれていたことがわかりました。1974年の最初の段階からあったのか、それ以降に個別の疾患が承認されて追加になったのかは不明です。仮に後者で、わざわざアルビノを追加するように求めた人がいたとすれば、当事者・家族、または医師でしょうけど、患者会や家族会などの団体がなかった当時にそんなことする人がいたとは思えない、というのが僕の印象です。
加藤忠明, 2006,「法制化された小児慢性特定疾患治療研究事業について」『和泉短期大学研究紀要』26: 27-31.
来生奈巳子, 2010,「小児慢性疾患患者に関する医療・社会制度の現状」『小児看護』33(9): 1202-8. 厚生省五十年史編集委員会, 1988,『厚生省五十年史(記述篇)』中央法規出版. 母子衛生研究会, 1988,『母子衛生行政法令・通知集(第7版)』母子衛生研究会. |
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