アルビノについてのマニアックな知識をひけらかすブログ

長いので「アルビノについての(略)ブログ」でいいです。基本的に文献レビューです。

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   分割した記事の第2弾です。お手数ですが、先に言い訳を読んでください。戦後の遺伝学の啓蒙書を古い順にご紹介してます。
   今回は遺伝学者の田中克己の本が1960年代に立て続けに2冊あるので、それを取り上げます。にも書いたとおり、この当時は遺伝性疾患の子どもが生まれることは「悲劇」であり「不幸」であるという考えが「常識」として浸透しており、それに対する批判が登場するよりも以前の本です。そのへんのことをふまえておいてください。

田中克己, 1964『遺伝相談――気にする人・気にしない人のために』講談社.(講談社ブルーバックス、1975年、第15刷、440円)
   カバーの折り返し部分に推薦文が書いてあって、まず「この本を読んで非常によかった」と感想を述べています。「遺伝の恐ろしさ」は誰もが知っているけれど、「自分のことでない間はそんなに関心もないままにすぎる人のほうが多い」。そんな人びとにとっても「この本は、大変おもしろく、楽しく、すらすらと読めて興味深く」、さらには「才能、奇形に至るまで親切にいきとどいた説明」には感服する。それだけでなく、「結婚についても、全ゆる角度から親切な説明があり、青年男女の読み物としては最適の本だと思う」と推薦文らしいベタ褒めです。
   さて、著者は結婚と遺伝について何度も書いたり話したりする機会があり、「研究室に直接たずねてくるかたがたや、質問の手紙」にも答えていくうちに、「相手がなにをほんとうに知りたいのか、悩みの源泉はどこにあるのか、どういうふうに説明すれば理解してもらえるか」などがわかってきたので、それをまとめようと考えていたそうです。
   遺伝相談は「自然科学だけでは片づかない」ことでもあり、「いつのまにか身上相談」になるのも珍しくなく、結局のところ本人や周囲の「人生観・結婚観」に大きく左右される。でも「人生観にしろ、結婚観にしろ、正しい科学的裏付けがなくては、ただの迷信とあまり違わない」から、「遺伝学の立場から裏付けをしながら答える」のが本書の目的です。また、誰もが遺伝のことを考えなければならないのは、「家庭人、社会人としてくらしていくためには、もって生まれた遺伝的個人差の意味を知ることが必要」であり、「結婚生活だけでなく、広く社会における対人関係」にも役立つからだとも書いてます(「序に代えて」より)。推薦文も含め、本書のサブタイトルにある「気にしない人」にも読んでほしいという意図がよく伝わってきます。

   「序に代えて」で著者は、全体の構成を説明しており、「1. 人には個人差がある」「2. 頭の良い子を持つには」「3. 薬のききかたも遺伝する」「4. 男女の子供を産みわけられるか」「5. 血液型をめぐって」「6. 遺伝からみた国際結婚」「7. 親子鑑別」「8. 近親婚は悪いか」までが前半部分で、遺伝からみた結婚のあり方を話題にした章です。後半は「9. 色盲と血友病」「10. 奇形と遺伝」に始まって各章で具体的な疾患を紹介し、それに続いて「14. 優生保護法と遺伝」「15. 遺伝からみた家族計画のあり方」「16. 遺伝病と結婚」とより広い視点からの話をして、最後に「17. 遺伝病もなおる」で締めくくっています。

   アルビノに言及してあるのは、まずは8章の「近親婚は悪いか」です。この章では最初に、世界的にみても日本では近親婚が非常に多いという事情を説明し、続けて「近親婚の悪影響が最もはっきり現れるのは、まれな劣性遺伝病の場合である」と具体例に進みます。そしてその一番手に「たとえば白子の遺伝子と正常な遺伝子の組合わせ」を使って、劣性の遺伝形質の伝わり方を解説してます。それから保因者とは何か、他人同士と近親同士だとどれほど違うのかを述べ、具体例として「生まれつきの聾唖者」に続けて、「白子は他人結婚で4万人に1人、イトコ結婚で3500人に1人だから、10倍以上も違う」と書いてます。さらに「白子の両親も半数はイトコ同士」だから、いとこ婚を禁止したら次の世代では「白子は半数に減る」と続けてます(p.103-5)。
   この後は、いくつかの劣性の遺伝性疾患を紹介して、「保因者は見分けられないか」という話が始まります。そこでは無カタラーゼ血液症とフェニールケトン尿症の保因者の診断がまずは例示され、「また、信頼度はかなりおとるが、白子の保因者はふつうの人よりも、いくらか色素が少なく、まぶしがる傾向が強いようである。もちろん、色白の人がみな白子の保因者というわけではない」と述べてます。それに続けて、両親がいとこ結婚で「弟二人に白子がでた」という「保因者の可能性が強い」女性から相談を受けた実例を紹介し、そのときは「保因者と結婚しないように気をつけるほかない」から、「色の白い美男子は避けて、色の黒い男性を選ぶようにすすめておいたが、その後どうなったかは知らない」だそうです(p.106-7)。
   ところで、8章の最後のほうでは「近親婚をするかたに一つだけ覚悟してほしいことがある」といって、他人同士の結婚で遺伝性疾患の子どもが生まれても「不可抗力としてあきらめがつくかもしれない。しかし、近親婚の場合は、危険が大きいのを知りつつ結婚しているのであるから、そこに異常児が生まれたとしたら、あきらめきれない後悔が残るのではないだろうか」と(p.114)、なんだか自己責任論的な忠告をしてます。
   先に進みまして、次は10章の「奇形と遺伝」で、数多くの遺伝性疾患を列挙するなかで、劣性遺伝のひとつに「全身白子」があがってます(p.152)。14章「優生保護法と遺伝」では、法律の条文から運用、さらには優生手術の実施状況までずいぶんと詳しく解説してあって、そのなかで優生手術の対象疾患として別表4の「顕著な遺伝性身体疾患(ハンチントン舞踏病、白子など22種類の疾患)」もあがってます(p.194)。ところで著者は、優生保護法は「優生と母体保護という二つの目的を持っているはずであるが、当局はどうも優生に対する熱意がたりないように思われる」と、各都道府県の優生保護審査委員会のメンバー構成などに苦言を呈しています(p.196-7)。
   さておき、次はまたしてもですが、16章「遺伝病と結婚」です。「劣性の遺伝病には重症で悲惨なものが少なくない。幸いにも患者の数は少ないが、その遺伝子を一つだけ持った保因者は思いのほか多い。たとえば、白子は2万人に1人しかいないが、白子遺伝子の保因者は100人に1人の割合と推定されるから、日本人の中に100万人もいることになる」と、今回も一番手で登場します(p.206)。さらに続けて「同病あいあわれむという、ことばのとおり、同じ遺伝病のもの同士の結婚も多いが、これがしばしば不幸に不幸をかさねる原因になる。白子同士が結婚すると子供はみな白子になってしまう。私は白子夫婦を二組知っているが、一組のほうは子供が二人とも白子である。もう一組は、心ある人が指導したのであろう、妊娠しないように優生手術を受けたということである」と、これまた一番手の例です(p.210-1)。
   その後にまた出てきます。遺伝相談をやっていると「この異常がどちらの親から伝わってきたかという、いわば責任のなすり合い」に直面することもあるそうです。で、たとえば「全身白子の相談」を受けたときに、「両方の親から白子遺伝子が一つずつ伝わった」のだから、「白子に関しては両方の親の責任が平等」だと説明したら、後日「相手の側から遺伝したに違いない、相手が隠しているのだろうと、おたがいに疑っていた」のが解消したとお礼状をもらったというエピソードを披露してます(p.213-4)。

田中克己, 1968,『結婚の遺伝学』講談社.(講談社現代新書、1972年、第5刷、240円)
   「遺伝病」や「奇形」「精神薄弱」の子どもが生まれる「危険をいくぶん減ら」し、「悲劇を防ぐ」ため、遺伝からみた結婚のありかたについて具体的な例を示して疑問に答えるのを目的にした本です。「結婚するあなたの幸福を100%保障するわけにいかないのは残念であるが、せめて後悔しないですむように、いくらかでもお役に立てば」とのことです(「序にかえて」より)。いろいろな遺伝相談のエピソードも盛り込みつつですが、上に紹介したのと同じ著者の本なのでだいたい似たようなことが書いてます。

   内容は、まず「1. 親と子の遺伝のルール」で遺伝のしくみを解説し、「2. 遺伝病のあれこれ」で具体的な疾患をあげ、「3. 遺伝病を防ぐ」で改めて遺伝する疾患としない疾患を説明したうえで、どうやってそれを予防するかを示し、最後に「付 遺伝相談はどこで受けられるか」まで載せている、実用的な構成になっています。

   1章5節「遺伝の期待とスリル」で優性遺伝の説明をして、続く6節「誰もが持つ悪い遺伝子」で劣性遺伝の説明をしてます。で、劣性の遺伝性疾患の場合は保因者がとても多いわけで、色素性乾皮症の保因者は75人に1人、「白子の遺伝子は100人に1人」、フェニールケトン尿症は60人に1人程度と推定される、と具体例をあげていきます(p.50)。
   次ページでは上記も含めた7つの疾患について保因者の頻度と患者の頻度をまとめた表が示され、誰もが「悪い遺伝子」を必ずもっており、「遺伝学の立場からいえば、完全な人間など1人もありっこない」というところに落ち着きます(p.51)。
   さらにその次の7節「血族結婚は避けたい」では、まず血族結婚はよくないと誇張されすぎているが、「無害のことも多い」と過剰な心配をしないように注意をうながし、他人同士の結婚でも「油断できない」と述べたうえで、上記と同じ7つの疾患について両親がいとこ同士の割合を示しています(p.52-6)。そして、著者が遺伝相談を受けたときのエピソードを紹介し、「子どもで悪質遺伝子が重なるといっても、たとえば、ろう唖の遺伝子と白子の遺伝子とを一つずつ持つのなら、病気は現れない。同じ種類の悪質遺伝子が重なるのがいけないのである。だから、ろう唖遺伝子の保因者と白子遺伝子の保因者とが結婚しても、子どもに害はない。同じ遺伝子の保因者同士が結婚した場合だけが危ない」と答えたと書いてます(p.57)。
   次ページで再び表を使って、5つの疾患について、他人同士の結婚といとこ同士の結婚とでどれほど割合が違うかを示し、「白子は他人結婚で4万人に1人の割合であるが、イトコ結婚なら13倍も危険が高まる」など、やっぱり危険だという話をします。しかし、血族結婚の「害」が非常に大きいように思えるかもしれないが、血族結婚とは関係のない「異常」もたくさんあるとフォローもしてます。
   で、結局のところ「やはり血族結婚は好ましくない」という結論にいたりまして、「たとえば、生まれつきのろう唖は約3分の1がイトコ結婚の子であるし、白子は半数がイトコ結婚の子であるから、もしいますぐイトコ結婚を全部やめさせることができたとしたら、私たちの子どもの世代には、生まれつきのろう唖が現在の3分の2に減り、白子は半分に減る」と続けます(p.58-9)。
   2章の「遺伝病あれこれ」では、いくつかの遺伝性疾患をかなりの紙幅を割いて家系図つきで詳細に紹介しているのですが、そこにはアルビノは登場せず、3章の「遺伝病を防ぐ」で多数の疾患を一覧したなかに簡単に「全身白子」の説明文があるだけです(p.184)。そして3節「遺伝病は防げるか」で、各種治療や予防の方法を解説しており、参考資料としてあげた優生保護法の別表に小さく「白子」が載ってます(p.208)。



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