アルビノについてのマニアックな知識をひけらかすブログ

長いので「アルビノについての(略)ブログ」でいいです。基本的に文献レビューです。

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   分割した記事の第3弾です。毎度すいませんけど、まだの人は先に言い訳を読んでください。戦後の遺伝学の啓蒙書を古い順に紹介してて、1960年代の残りです。1970年まではかなりたくさん出てくるので、探すのに苦労しません。何度も同じこと言いますが、この頃も遺伝性疾患の子どもが生まれることが「悪魔ののろい」だなんて表現されてました。批判を受けるより前の、当時の「常識」です。

児玉浩憲, 1968,『結婚・遺伝・生命――親子の証明』三省堂.(三省堂新書、1972年、第7刷、200円)。
   「序にかえて」は、遺伝学者の田島弥太郎が書いてます。遺伝について「解説するとなると、いくらやさしくしたつもりでも、素人にはついて行けなくなる」が、かといって「余りに程度を下げてしまったのでは、体系だった知識として理解できなくなってしまう」。田島自身も「わかりやすい表現で、遺伝の現象や近代遺伝学の内容を体系的に解説した手頃な本が欲しい」と思っていたところに、本書の校閲を依頼されて「はからずも私の日頃の希望が実現」したと感じたそうです(「序にかえて」より)。
   で、本書の著者は遺伝学者ではなく新聞記者です。「不都合な遺伝病までが子孫に伝わ」り、「ときには悪魔のしわざのように、思いもかけぬ異常が現われ、周りのものを悲嘆のどん底につき落とす」ことがある。「一人前の人間として成長するには環境も教育もたいせつにちがいありません」けれども、「われわれが運命づけられている遺伝についても知っておくことが必要」ではないか。そこで、「発展のめざましい遺伝学の成果を学者だけに独占」させておくのはもったいないし、「われわれ自身の生活に、またよりよき子孫を残すために、その知識を活用すべきだ」という思いで、本書を執筆したとのことです(「はじめに」より)。

   目次では、「1. 身近な遺伝」で血液型や「天才」の遺伝、さらに「悪魔ののろい」として遺伝要因と環境要因それぞれの先天異常を紹介し、「2. 遺伝のルール」でメンデルの法則や染色体、細胞について説明し、「3. 遺伝魔術の種明かし」ではDNAやアミノ酸やタンパク質の機能など、分子生物学の内容にも踏み込んでおり、身近な話題から専門的な知見へと進んでいく構成になってます。「序にかえて」で田島も書いていることですが、新聞記者らしく時事的な話題を盛り込んでいます。

   1章4節「悪魔ののろい」では、環境要因と遺伝要因の両方を説明しており、まずは当時としては記憶に新しいサリドマイドに始まり、徐々に遺伝要因に移っていきます。そして、「ずばり遺伝する以上」は「肉親に同じ異常の現れる確率がかなり正確にわかるので、注意しさえすれば不幸な出産を避けることもできる」と、いくつかの疾患を紹介し、そのなかで「全身性白子」をあげています(p.49-51)。
   この本もその後に続くのは「近親結婚の罪と罰」で、欧米諸国に比べて日本は割合が高いことを示し、「白子は他人同士の結婚では1万人につき0.3人ぐらいなのに、いとこ結婚では3人と、10倍も危険なのです」「白子や全色盲の両親を調べてみると、その半数がいとこ結婚です」などといくつかの具体例が続き、いとこ結婚をやめれば「恐ろしい異常児の出生」が減らせると書いてます(p.51-3)。
   そこまで説明した後で、保因者の多さに話が進むのですが、そこではで紹介した田中克己の言葉を「警告」として引用したうえで、「白子、全色盲、フェニルケトン尿症、小頭症などの因子はそれぞれ100人に1人ぐらいの割合で分布していると推定」でき、誰もが「悪い因子」をもっているわけだが、「実際にこのような異常児がそれほど多くないのは、幸運にもたまたま夫婦が同一の悪い因子をもち寄らなかっただけ」だと述べています(p.53)。

大倉興司, 1970,『病気と遺伝――遺伝相談(改訂第3版)』創元社.(創元医学新書、1975年、改訂第3版第4刷、630円)
   初版は1962年、改訂版は1967年で、改訂第3版が1970年です。「一般の人たちも、感染性疾患に対して注意を払う以外に、生まれつきの異常や遺伝性の疾患に対する関心を深めてきた」のだが、「わが国では今だに人類遺伝学の真の重要性は必ずしも十分に認識されて」いない。そこで、「一般の人にも、また臨床医の方たちにも、遺伝とはどういうものかを知ってもらい」、なおかつ「われわれの所に相談に来る前に、一応の知識をもってもらうために」書かれた本です(「はじめに」より)。なお、初版以降「急速に新しい事実も増え、遺伝相談としての要求も変わってきた」からたびたび改訂をしたのだが、「改訂のたびに、各章のバランスもくずれ」「配置もうまいとはいえなくなった」ことについては、「御了承願いたい」とのことです(「再改訂の序」より)。

   目次は、まず「1. 知っておきたい言葉」で概念をわかりやすく説明し、「2. 遺伝のしくみ」「3. 病気の原因」で見出しどおりのことを書いてます。続く4章〜13章までは途中に「7. 血液型」をはさみますが、具体的な疾患をそれぞれ詳細に紹介しており、まっさきに登場するのが「4. 白子」です。その後「14. 保因者のはなし」「15. 近親結婚」といったん具体的な疾患から話がそれて、16〜18章で再び具体例に戻り、19〜23章では不妊や薬の効きやすさ、癌や高血圧や感染症と遺伝の関係、双生児などの話題があり、「24. 先夫の影響が子に現れるか」「25. 遺伝性疾患の治療」「26. 放射線の影響」で終わってます。「再改訂の序」にあるとおり、確かに雑多で詰め込みすぎな印象ですし、以下に見ていくとおり入門書・啓蒙書としては詳細すぎて難しいです。

   さて、4章丸ごとアルビノのことが書いてあるんですが、その前に3章「病気の原因」に少しだけ出てきます。ここでは、「白子とか色盲は遺伝子による異常の代表的な例だが」、病気の原因には様々あって、遺伝的要因だけで起こるものはむしろあまり多くないと書いてます(p.22)。で、4章に入りますと、まずアルビノの症状や病因などが書いてあります。この本の「はじめに」で「一般の人」にも知ってもらうことを目的にしたと言ってますけど、なぜアルビノになるのかを解説するにあたって、いきなり酵素が作られる化学変化の過程の構造式が登場します(p.31)。六角形で化学結合を表現したあれです。そのうえで、「白子は皮膚病ではなくて、生化学的な代謝異常と考えなければならない」と注意をうながしてます(p.32)。
   その次に「頻度と遺伝」で近親婚や保因者の話に簡単にふれながら、どれくらいの割合で生まれるか述べ(p.32-3)、「遺伝予後」で数式や家系図を示しながらいろんなパターンを詳しく解説してます(p.33-8)。なんでこんなに詳しく書いてるかというと、後々のためです。つまり別の章で「実は白子のところで述べたこととまったく同じことで、保因者の頻度が違うだけなのである」とか(p.43)、「劣性遺伝というものについては、白子のところで詳しく説明したから、ここではくりかえして説明しない」など(p.177)、個別の疾患の説明であると同時に、遺伝法則一般の説明もついでにやってるということです。
   それから4章の最後は「保因者は探せぬか」で「確実な方法というのはない」し、「科学的根拠といえるほどのものはない」けれども、「白子の人たちを見ていると、その両親はたいていの場合に、いわゆる色白の人であり、髪の毛の色も少し薄い」ということに「かなり多くの研究者」が気づいている。だから、「なるべく色の白い人同士の結婚は避けた方が無難」だと言ってます。いずれは確実な方法も見つかるだろうから、「それまではこんな方法で、消極的ではあるが危険をさけてはどうだろうか」と提案して締めくくってます(p.38-9)。
   しばらく間があいて、次は12章「目の病気」の「子供に現われる危険率(確率)を示す表」です。いくつもの眼疾患がどれくらいの割合で生まれるか一覧表にしてあって、そこに「白子」と「限局性白子」が載ってます(p.152-5)。
   その後、14章「保因者のはなし」の冒頭でまず、「色盲」に続いて「白子の両親は、必ずといってよいくらい、見かけ上は正常であるが、白子は父と母とから遺伝子を一個ずつ伝えられているのである」と例にあがってます(p.164)。ただ、この章は生化学的な検査によって保因者を発見できる疾患や、その技術・方法の紹介がメインです。だから、しばらくは出てきませんが、章の最後の「保因者の頻度」で「白子の保因者が100人に1人」とやっぱり一番手にあげてあります(p.173)。
   次の15章「近親結婚」では、どれくらいが近親結婚で生まれているか示す一覧表に「白子」がもれなく載ってます(p.184)。ですがこの章は、具体的な疾患を例示せずに数式を用いてひたすら確率の話をしているので、本文中での言及はほとんどありません。


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