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アルビノは、20世紀遺伝学では注目されていたけど、21世紀ゲノム学では全然注目されなくなったという話については論文を書きました⇒。そのなかでも簡単にふれていますが、アルビノはいわゆる特定病因論と相性がいいです。
とても当たり前に聞こえますが、特定病因論とは特定の病気には特定の原因があるという考え方です。これは、感染症には特定の病原菌との間に一対一の対応関係があるという19世紀細菌学のモデルが基本になってます。
20世紀以降、特定病因論が病気の原理を説明してくれるという有効性をよりいっそう確実にしたのは、遺伝性疾患でした。もちろんそれは、多因子性遺伝ではなく単因子性遺伝です。ギャロッドが先天性代謝異常概念を発表したのが1908年で、それが後のビードルとテータムの一遺伝子一酵素説に引き継がれましたが、これまた一対一の対応関係をうまく説明しています⇒。当然そこには、20世紀遺伝学の黎明期にはすでにメンデルの法則に従うことがわかっていた単一遺伝子病のアルビノが含まれたわけです(ディクソン 1981: 79)。
でも、疾病構造が変化した現代では、飲酒・喫煙の習慣や日頃の食事と運動、職場や住居の衛生状態、発症を抑制する遺伝子の存在やら加齢やら体質などなど、たくさんの要因が複雑にからみ合っている生活習慣病なんかが医療の主な対象です。これらは、たったひとつの原因だけでは説明できなくて、ひとつだけを何とかしても治癒するとは限らないので、特定病因論は有効ではありません。現在では、こうした複雑なものを説明しようとする確率論的病因論のほうが支配的です。だから今さら、アルビノの出る膜はないわけです。
参考文献
ディクソン, バーナード(奥地幹雄・西俣総平訳), 1981,『近代医学の壁――魔弾の効用を越えて』岩波書店.
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