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三浦哲郎, 2010,「暁の鐘」『新潮』107(11): 298-9.
三浦哲郎については今ゴソゴソと資料を集めているところなので、ある程度まとまったらゴソッと出そうかと思っていますが、とりあえずひとつだけ紹介します。 ご存知ないかもしれないので、基本情報です。三浦哲郎(1931〜2010)は、青森県八戸市出身の作家です。6人きょうだいの末っ子で、3人の姉のうち長姉と三姉がアルビノでした。自身の家族(定位家族、生殖家族の両方とも)について数多くの小説、随筆を残しています。そのなかに『白夜を旅する人々』という作品があり(代表作ですが)、そこには、三浦がまだ幼い頃の戦前に起こった家族の顛末について書いてあります。必読です。 で、亡くなるほんの1週間前に朝日新聞にインタビュー記事が載っていて、そこでは3月に亡くなった三姉をモデルに『白夜』の続編に意欲を燃やしていると語っていました(『朝日新聞』2010.8.23朝刊)。僕はそうとうに楽しみにしていたんですが、残念でなりません。 さて、その三浦哲郎の遺稿が『新潮』2010年11月号に掲載されています。『白夜』のエンディングの後の話で、三姉が目をさますところから始まります。 わずか2ページだけですが、髪の毛の生え際のことや日の光のまぶしさについての描写なんか、とてもリアルです。多分、続きが読めないのに冒頭だけ読んでしまったことを後悔すると思います。でも、ぜひ読んでほしいです。 追記:2012.03.01 『白夜を旅する人々』の単行本が出たのが1984年10月で、翌85年10月に大佛次郎賞を受賞してるわけですが、さらに翌86年2月発行の『知識』にインタビュー記事が載っており、続編について語ってます。 三浦哲郎・武田勝彦, 1986,「白夜をゆく家族たち」『知識』50: 124-31. それによると、『白夜〜』のエンディングは続編への橋渡しになるように意識して書いたそうです。この家族には「まだまだ白夜は続く」のであって、これからは次兄が中心になって暮らしていくことになるし、(三浦自身がモデルの)幼い末っ子のことも描かれ、希望を託される存在になることを暗示していたようです。 つまり、書き終えたときからすでに続きを構想していた、ということです。 追記:2012.03.27 さらに1993年に文芸誌『民主文学』に掲載されたインタビューです。 三浦哲郎・新船海三郎, 1993,「訪問シリーズ4 三浦哲郎――短篇の心、師への思い」『民主文学』376: 152-63. 三浦が早稲田大学在学中に次兄が失踪し、その後は三姉が一戸に琴の稽古場を開いて一家を支えました。その経緯を説明した続きで、姉について次のように語っています。 まあ、「白夜・・」はみんな主人公でしたけども、あの姉だけを主人公にして、ついに暁の鐘は鳴った、白夜は明けた、という意味で、「暁の鐘」という続編を書こうと思っています。それもまた、宿題で、これはどうしても書かなきゃね。(p.162) 20年近く前にはすでに、白夜が明けたという意味の「暁の鐘」というタイトルも決まっていたようです。 |
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2012年02月10日
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