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夜が更けて、オンナがうとうとしていたとき
玄関のドアが開く音がした。
高之だった。
少し足元がふらついている。
酔っているらしかった。
高之はオンナが寝ているのを見て
小さな小箱をテーブルの上に静かに置いた。
祥子に渡しておいた携帯が、布団の上に
転がっている。
「使い方、わからなかったとかいうんじゃ・・・」
そう言いかけて、画面に目をやると
打ちかけのメッセージがあることに気づいた。
それを読んだ高之は、携帯を置き上を見上げた。
一つ深呼吸をしてから、寝ているオンナに
顔を向けたとき、目から大粒の涙が1つこぼれ落ちた。
「なんでだよ・・・」
高之はすすり泣いた。
「死ぬなよ、頼むから。
俺を一人にして行かないでくれよ。
どうして死ぬんだよ。
頼むから、行かないって言ってくれよ!」
その声にオンナが目を覚ました。
「あ、おかえり、高ちゃん」
そう言ってすぐにまた目を閉じようとするオンナの肩に
高之の肩が重なった。
高之の息はたばこと酒の匂いでくさかった。
だが、オンナはそのまま動かなかった。
自分の頬に高之の涙が落ちてきたからだった。
初めて出会った日からたぶん好きだった。
その気持ちは今でも変わらない。
「高ちゃん、お願いがあるんだけど」
しばらくしてそう言うと、きつく抱きしめていた
腕を高之がほどいた。
泣いて真っ赤に腫らした目だった。
「二人の結婚式、したい。」
高之は困惑した顔を見せた。
オンナは来ていたパジャマのボタンを
ゆっくりとはずした。
痩せ細った肩が現れた。
それから高之の顔を両手でやさしく覆った。
唇を重ねると、しょっぱい涙の味がした。
生まれて初めて、好きな人と心を許しあう。
触れ合う。
そう考えるだけで熱いものがこみあげてきた。
好きだった。
高之がずっと好きだった。
腕を伸ばせば抱きとめてくれる。
自分が欲せば相手も欲してくれる。
高之と1つになれることが嬉しかった。
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