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綾奈は、病院からの帰り、久留美の家に寄り道をした。
そして、真っ直ぐ輝明に部屋に向かった。
それは、写真部について聞くためでもあり・・・
綾奈が輝明の部屋に入ると、
輝明は、ベッドの上で音楽を聞きながら寝転がっていた。
綾奈「だらしないなぁ・・・」
輝明「何だいきなり。しかも、入ってくるなりダメだしかよ。
ところで、何のようだよ?」
綾奈「輝君に、私の制服姿を見てもらおうと思って。」
綾奈が制服姿を見てもらいたい人、それが輝明だった。
実は輝明こそ、綾奈が密かに魅かれている人だった。
輝明は、特別格好良いところもなければ、
勉強やスポーツが出来るわけでもなく、モテるわけでもない。
ただ、幼馴染みと言うだけ・・・
でも、それが綾奈にとって大きかった。
思春期を迎えた綾奈の中で、
気が付けば、輝明が一番気になる存在になっていた。
しかし、そうとは知らない輝明の反応はそっけなかった。
輝明「何で?」
綾奈「何でじゃないよぉ。可愛い後輩がお披露目に来たんだから、
可愛いとか綺麗とか、それくらいの事パッパと言えないの?」
輝明「えぇ〜? そんな歯が浮き過ぎて総入れ歯になりそうな事言えませ〜ん。」
綾奈「もう、気が利かないんだから・・・」
綾奈は、普段は引っ込み思案でおとなしい感じであったが、
知り合いには、今みたいに話せるタイプだった。
輝明もその1人であり、先輩だけど、タメ口で話せた。
綾奈は、輝明のお世辞の期待を諦めて、ベッドの縁に腰掛けた。
綾奈「ところで、写真部ってどんな部活?」
輝明「何だよ、いきなり。」
綾奈「私、写真部に入ろうかなって思って。」
輝明「お、いい心掛けじゃん。歓迎するよ。」
輝明の説明によれば、写真部の活動は、基本的に個人単位で部員も少なく、
定期的な集まりも、1週間に一度あるかないかくらいだという。
聞けば聞くほど、綾奈にとっては好都合な部活だった。
輝明「それにしても、何で写真部なんだ?」
綾奈「久留美の勧め。私は人見知りするから、知り合いがいる方がいいだろうって。
それに、ウンチだから、文化部の方がいいって・・・」
輝明「なるほどね。確かに綾奈には文化部の方が似合うかも。
でも、俺なんかは、芸道部とかも似合うと思うけどな。」
綾奈「芸道部って?」
輝明「茶道とか華道とかやってるところ。着物とか着るからさ、
綾奈には着物とか似合うだろうなって思って。」
輝明の言葉に、綾奈は少し気恥ずかしくなった。
着物が似合うと言われて嬉しかったのもそうだが、
そういう風にちゃんと見てもらっていた事が嬉しかった。
綾奈(一応、女として見てもらってるのかな?)
ただ、いろいろ考えた上で、綾奈は、写真部に入る事を決めた。
そして綾奈は、早々と入部手続きを取ると、
その日から放課後は、輝明と一緒に行動する事が多くなった。
何より、綾奈は、ちゃんとしたカメラを持っていなかった。
デジカメでいいよと言われて、それで写真を撮っていたが、
やはり、輝明の一眼レフのカメラと比べると、
何か、写真部として、ちゃんと活動出来ていない気がした。
だから、時々輝明のカメラを借りて写真を撮ったりもした。
綾奈「私も一眼レフのカメラ欲しいな・・・」
輝明「大事なのは、何で撮るかじゃなくて、何を撮るかだから。
最近のデジカメは、普通のでも性能が良いから大丈夫だよ。
久留美も、綾奈が撮った写真見て喜んでんだろう?」
綾奈「うん、まぁね。」
綾奈の周りには、撮りたいものがたくさんあった。
綾奈が住む町は、はっきり言って田舎だ。
周囲を山に囲まれ、街道や鉄道沿い、市役所周辺に街が広がっていたが、
その何倍もの広い田園風景が周囲に広がっていた。
綾奈の住む住宅地は、市役所がある街よりももっと北、
もっと田園に囲まれ、もっと山に近い場所にあったが、
だからこそ、被写体には困らなかった。
今の綾奈は、春の自然の景色を写真に収めるのが楽しくて仕方なかった。
そんな感じで、綾奈の中学生活の出だしは順調だったが、
しかし、そんな輝明と綾奈は、早速、学校で噂のカップルになっていた。
新入生があると、新入生や先輩たちは、
男なら女、女なら男と、同級生や後輩たちの中で、
誰が可愛いか格好良いかと品定めをし、それが恋愛に発展していく事も多いが、
輝明と綾奈は、一緒に行動する事が多かったため、
そんなカップルのひとつとして注目されていたのである。
その噂は、すぐに輝明や綾奈の耳にも入ってきたが、
2人は、友達にはそれを否定するか、曖昧にしていた。
綾奈が曖昧にしていたのは、自分の気持ちに嘘をつけない部分もあったからだ。
綾奈(噂が本当でも・・・私は構わないんだけど・・・)
そんな事さえ思っていた。
そんなある日の放課後、いつものように輝明と2人で写真を撮りに出掛けると、
輝明は、カメラを構えようとする綾奈にこう言った。
輝明「今日は、綾奈を被写体に写真を撮りたい。」
綾奈「え?」
輝明「綾奈をモデルにして写真を撮りたい。」
突然の言葉に、綾奈は唖然とした。
しかし輝明は、以前から、誰かをモデルにした写真も撮ってみたかったという。
今まで頼める人がなく諦めていたが、綾奈なら・・・と思ったのだ。
綾奈「私なんかでいいの?」
輝明「悪かったら頼まないよ。」
輝明にそう頼まれたら、綾奈に断る理由はなかった。
すると輝明は、綾奈と一緒に地元の城山公園に向かった。
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