"やいたもん"の文学館

大きな人生の転機がありました・・・

十三時代〜とさみち〜(完結)

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第3話

城山は、石垣も建物も残っていない、
地元の昔の小さな山城跡で、綾奈たちの町の東にあり、
城址公園として整備されていた。
高さはそれほど無いが、
その展望台の頂上からは、綾奈たちが住む町を一望出来たが、
普段は、あまり人のいない場所だった。

輝明は、そこで綾奈にカメラを構えた。
綾奈にいろいろと要求し、綾奈も、戸惑いながらもそれに応えた。
綾奈は、最初は撮られていることが恥ずかしかったが、
次第にそれが楽しくなっていた。
撮ってくれているのが輝明だったからかも知れない。
輝明が、レンズを通して真剣な目で自分を見てくれる。
綾奈は、それが嬉しかったし、何となく幸せな気がした。

そして、一通り写真を撮り終えると、
2人は、山の頂上にある展望用の木製のベンチに座った。
輝明は、かなり上機嫌だった。

輝明「思った通り、いい写真が撮れたよ。」
綾奈「本当?」
輝明「欲しい写真があったら現像してやるよ。」
綾奈「でも、なんか恥ずかしいな〜。」
輝明「俺の腕を信じろって。いい写真撮れてっから。」

それから2人は、真っ赤に染まる西の空を黙って見つめていた。
高すぎず低くもない展望台には、心地よい風が吹いていた。
風は、綾奈の髪をさらい、
そのほのかないい香りが、輝明の鼻をくすぐっていた。

輝明「なぁ、綾奈。」

輝明が沈黙を破った。

綾奈「なに?」
輝明「あの噂の事、どう思ってる?」

噂って何?・・・と聞き返すまでもなかった。
もちろん、輝明と綾奈が付き合っているという噂の事だ。
綾奈は、友達に冷やかされる度に、
その関係を否定したり、曖昧にしたりしてきたが、
思えば、この噂をお互いにどう思っているのか、
輝明とちゃんと話した事は一度もなかった。

輝明「綾奈はさ、俺なんかと付き合ってるって噂されて嫌か?」
綾奈「い、嫌じゃないよ・・・だけど・・・」
輝明「だけど?」
綾奈「輝君は、付き合っている人はいないの?」

そう聞き返されて、輝明は照れた。
いるからではない。いないからだ。
それどころか、今まで男女交際なんてした事がない。
中3なのに・・・と思うと、恥ずかしくもあった。

輝明「付き合っている人がいるように見えるか?」

見えない・・・とは言えない。
確かに、そういう匂いはしなかったが、
いくら親しき仲でも、そこまで単刀直入には言えなかった。
綾奈は、愛想笑いで返すしかなかった。
ところが、次の瞬間、輝明から思わぬ台詞が飛び出した。

輝明「もし、嫌じゃなかったらさ、実際に付き合わないか?」
綾奈「ぇ・・・」

綾奈は絶句した。突然の事で、頭の中は真っ白になった。
告白されてる・・・綾奈にとって、それは初めての経験だった。
正直に言うと、ラブレターをもらった事はある。しかも何回か。
しかし、小学生で、何も分からなかったから全て断っていた。
けれども、直接告白されるのは、これが初めてだった。
しかも相手は輝明・・・
冗談かとも思ったが、そんな感じではない。

輝明「俺、前から綾奈の事が好きだったんだ。
   だから、綾奈が中学生になったら、告白しようと思ってた。
   そしたら、綾奈が写真部に入ってきて同じ部活になって、
   それで一緒に行動するようになってさ、
   結構充実してたけど、だから逆に今まで何も言えなくて・・・
   でも、このまま言えないのは辛くってさ。」

綾奈「・・・・」

すると、その輝明の素直な気持ちが、
徐々に綾奈の心の扉を開いていった。

輝明「それとも、俺みたいなのが彼氏じゃ嫌か?」
綾奈「い、嫌じゃないよ。私も輝君が・・・」

それは、とっさに出てしまった綾奈の本音だった。
それを聞いた輝明は、安堵の表情を浮かべて言った。

輝明「じゃあ決まりだな。今日から俺たち、彼氏彼女って事で。」

綾奈は、付き合うなんて事をこんな簡単に決めてしまっていいのかとも思ったが、
今は、そのまま流れに身を任せる事にした。
こうして2人は、噂から、本当のカップルになった。

その帰り道・・・

輝明「この帰り道が、初めてのデートだな。」
綾奈「う、うん、そうだね。」

けれども、城山から綾奈たちの家は結構近い。
だから、話が続かなくても間はもった。
そして、家の前まで来ると、輝明は言った。

輝明「初めてのデート、早速終わっちゃったな。」
綾奈「うん、そうだね・・・。じゃあ、私これで・・・。」
輝明「ちょっと待てよ。」

綾奈を呼び止めると、
輝明は、突然綾奈の手を取り自分に引き寄せ、
きょとんとする綾奈の口唇を不意に奪った。
呆然とする綾奈に輝明は言った。

輝明「こうするのが恋人だろ? じゃあ、また明日な。」

そして輝明は、自分の家に入っていった。
その夜、綾奈は、夕飯をまともに食べられなかった。
両親からは、ダイエットでもしてるの?と言われたが、そんなではない。
風呂で湯船に浸かっている時も、キスの感触が忘れられなくて、
何度も自分の口唇を指でなぞっていた。
ベッドに入っても、なかなか寝付く事が出来なかった。

綾奈「私、恋人が出来たんだ・・・輝君と・・・」

そんな自分が、綾奈はまだ信じる事が出来なかった。
けれども、付き合う事に決まったのだ。
だから、綾奈は決意した。

綾奈(私、頑張らなくちゃ・・・)

こうして、綾奈の初恋が始まった。


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