"やいたもん"の文学館

大きな人生の転機がありました・・・

十三時代〜とさみち〜(完結)

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第10話

輝明は、7月の終わりに部活を引退すると、
受験生として、講習や模擬テストなどで忙しくなって、
休日などでも、なかなか綾奈との時間を作れなくなっていった。
しかしそういう時、綾奈は、決まって久留美に会いに行っていた。
久留美も、綾奈が来てくれる事が一番嬉しかった。
もちろん、家族や友達が来てくれる事も嬉しかったが、
久留美の中での綾奈の存在は、家族や親しい友達を100人以上集めても、
遠く及ばないくらいに大きなものだった。
今の久留美にとって、綾奈は、世界で一番大好きな存在だった。
そう、まだ恋人がいない久留美にとっては・・・

久留美「私も彼氏欲しいな・・・」

それは、夏休みが終わって間もない9月の日曜日の事だった。
いつものように綾奈は、久留美の世話をしに病院に来ていたが、
綾奈と2人きりになった時、久留美は、
ベッドから窓の遠くの景色を見つめて、ぼそっとそう言った。

久留美「綾奈と翔矢には相手がいるのに、私だけ・・・」
 綾奈「久留美が元気になったら、すぐに彼氏なんて出来るよ。」
久留美「まぁね。私がその気になったら、
    ジャニーズ系の中レベルくらいならコロコロ落とす自信はあるけどさ。」


綾奈は、苦笑いしながら、ちょっとだけ安心した。
けれども、久留美の憂鬱は、軽い冗談を言ったくらいでは晴れなかった。

久留美「でも・・・今のままじゃ、男は寄って来ないよね・・・」
 綾奈「・・・・」
久留美「ねぇ、綾奈。綾奈が私の恋人になってよ。」
 綾奈「へ?」

あまりの衝撃的な一言に、綾奈は、思わず声が裏返った。

 綾奈「な、何言ってるの? 私女だよ?」
久留美「いいじゃない、女同士で恋人になったって。」
 綾奈「でも、それってレズとかって言うんじゃないの?」
久留美「あれ? 綾奈そんな言葉知ってるんだ? どこで覚えたの?」
 綾奈「・・・・」
久留美「でも、それでもいいよ。今、一番好きな人を探したら、
    私は、世界で一番綾奈が好きだし。」


すると久留美はベッドに綾奈を誘った。
もっともそれはいつもの事、ベッドに綾奈と久留美が一緒に寝る事はよくある。
綾奈は、誘われるままベッドに入り、
お互い、内向きになって見つめ合った。

 綾奈「でも、女の子同士で恋人って何をすればいいの?」
久留美「普通デートでしょ? 私はキホン(基本)病院を出られないけど、
    病院内とか一緒に歩いたりとか・・・」

 綾奈「それなら、いつもやってるじゃない。」
久留美「あと、キスとか。」
 綾奈「え? 女の子同士で?」
久留美「私とキスするの嫌?」
 綾奈「嫌とかそういう問題じゃなくて・・・」

ありえない。嫌じゃないけど、ありえない。
とにかく綾奈はそう思った。
けれども、久留美のためなら、出来ない事ではなかった・・・

久留美「嫌じゃないならしてみよ。」
 綾奈「ど、どうすんの?」
久留美「どうするのはないでしょ?
    綾奈は経験者じゃない。そしたら綾奈からするのに決まってるでしょ。」

 綾奈「自分からした事なんてないよ・・・」
久留美「あ、綾奈とお兄ちゃんのキスって、そんな感じなんだ?」

久留美が、嬉しそうにいやらしく笑った。
そりゃ、ほっぺにするチュウは自分からした事あるけど、
口付けの時は・・・と、綾奈は弁解したかったが、してもしょうがない。
綾奈は、押し黙って渋い顔をした。

久留美「とにかく、綾奈が経験者なんだから。」

そう言うと、久留美は、自分と綾奈の頭に布団をかけてすっぽり隠した。
もう、なるようになるしかなかった。
意を決した綾奈は、静かに目を閉じ待っている久留美に、
軽くチュ!と口付けをした。
だが、それに久留美は拍子抜けしてしまった。

久留美「駄目だよ綾奈。それじゃなんにもわかんない!」

すると久留美は、綾奈を強引に抱き寄せ、
今度は、自分から綾奈に口付けをした。
しかも、軽く一瞬ではなく、そのまましばらく口唇を離さなかった。
綾奈は、全身が凍りつき戸惑いながらも、
目を閉じ、全てを久留美に任せた。
もう何も考えられない。頭が真っ白なままの時間が長く過ぎたような気がした。
やがて、久留美が口唇を離すと、
力を溜め込むように、ぐぅーっと体を頭から丸めて縮め、
それを一気に開放するように言った。

久留美「きっっっっもちいい〜〜〜!!!!」
 
確かに、綾奈も悪い気はしなかった。
むしろ・・・

久留美「これがお兄ちゃんのものかぁ。」
 綾奈「なにそれ?」
久留美「今まで、お兄ちゃんの独り占めだったかと思うと、
    何か、許せなくなるね。」

 綾奈「・・・・」
久留美「ねぇ、綾奈! もう1回しよ!!」
 綾奈「え〜〜〜!!!」

それから久留美は、布団をかぶったまま、
綾奈に何回も何回もキスをした。

久留美「やっぱり、綾奈は私の恋人になってね。
    またキスしようね。」

    
キスを終えた後、久留美は嬉しそうにそう言った。
実際、さっきまであった久留美の憂鬱は、完全に吹き飛んでいた。

綾奈にしてみれば不思議な感覚だった。
輝明、久留美、翔矢の兄弟みんなに好かれ、
輝明と久留美とは、恋人として付き合う事になったのだ。
そして、3人とはキスもした。
みんな違うはずなのに、みんな同じにも思えるキス。
綾奈は、久留美とキスをしている時、
輝明と翔矢とのキスを思い出していた。

綾奈(私も、みんな好きなんだよね・・・)

好きな人に好かれるのは、最高に気持ちいい事。
だから、好きな人する事も全部気持ちよかった。
キスは、一方的に好きなだけではなく、好かれている事の証。
だから、3人とのキスは、そういう意味で
綾奈にとってそれぞれ気持ちいいものだった。
綾奈にとって今日は、それを確認する1日となった。


そんな事があってから、
久留美の病状は、それまで以上に快方に向かっていった。
担当医でさえ驚くほどの回復を見せ、
やがて、外泊許可まで取れるようになっていた。
そこで久留美は、ある重要な日にあわせて外泊許可を取った。
それは、11月18日。綾奈の誕生日だった。


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