"やいたもん"の文学館

大きな人生の転機がありました・・・

十三時代〜とさみち〜(完結)

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最終話

久留美が長い闘病生活を終えて帰宅した夜、
綾奈と翔矢は、輝明の時と同じ仏間に安置された久留美と一夜を共にした。
綾奈は、久留美に思い出を語りかけながら、
久留美の写真を何枚も撮り、
静かに眠る久留美とツーショットやスリーショット写真を撮ったりした。
そして、綾奈が久留美にキスをすると、
それに続いて、翔矢も最初で最後のキスを冷たい久留美の口唇にした。
それは、双子の片割れとして、
また幼馴染みという友としての最後のたむけであった。
綾奈は、それを写真に収めた。

綾奈「何か、お別れなのに、お別れっていう気がしないね。」
翔矢「久留美がいるからだろう・・・見えないところにさ。」
綾奈「そうたね。この辺にいて、いろいろ言ってるんだろうね。」
翔矢「でも綾奈。そんな事言って明日泣くなよ。」
綾奈「ううん、思いっきり泣く。泣きたいもん。」
翔矢「何だそれ?」
綾奈「気が済むまで泣いたら・・・私、次の日から、生きていけそうだから。」
翔矢「・・・・」

その時だった。翔矢の心に久留美が語りかけてきたような気がしたのは。
久留美が、まだここにいる内に、しておかなければならない事・・・
翔矢は、久留美に背中を押されたような気がした。

翔矢「綾奈・・・だったら、俺と一緒に生きていかないか?」
綾奈「え・・・」
翔矢「俺・・・お前の事、ずっと守りたい・・・」

それは、2人がずっと待っていた瞬間だった。
今まで言いたくてずっと言えなかった事、
今まで聞きたくて仕方なかった言葉、
今、突然その時が来て、2人は静かに見つめ合った。

綾奈「・・・本当に、私の事守ってくれる?」
翔矢「久留美の前で嘘は言わない・・・
   俺と・・・結婚しよう。」


それは、輝明でさえ綾奈に言えなかった言葉。
それを言った瞬間、翔矢は輝明を超えた・・・
翔矢は、綾奈をそっと抱き寄せた。

綾奈「ずっと、私の傍にいるって約束してね。」
翔矢「・・・ああ。とりあえず、綾奈が死ぬまでは死なないさ。」
綾奈「絶対だからね・・・」

その時、翔矢は、久留美の声が聞こえた気がした。

「クサイ奴・・・」

でも、そう言った久留美の顔は笑っている気がした。
そして・・・その翌日、久留美の通夜が行われ、
さらに翌日、葬儀が行われて、久留美は骨になった・・・


それから・・・月日は流れて半年後。
11月18日、綾奈は14歳の誕生日を迎えた。
その夜は、綾奈の家と翔矢の家の総出で綾奈の誕生日が祝われる事になっていた。
そして、その日の夕方、
綾奈と翔矢は、輝明と久留美が眠る墓所を訪れた。
天気は晴朗、風はさわやか、空は美しく赤く染まっていた。

翔矢「綾奈は、相変わらず、毎日ここに来てるのか?」
綾奈「もちろん。輝君や久留美に撮った写真を見せたり、
   愚痴を聞いてもらったりしてる。」

翔矢「綾奈にも愚痴があるんだ。」
綾奈「うん。翔君が部活で忙しくて、デートに連れてってもらえないとか、
   そのくせ試合の時は弁当作れってうるさくてとか、
   毎日仏壇には手を合わせてねって言ってるのにしないとか。」

翔矢「俺の愚痴ばっかかえ?」
綾奈「うん。」
翔矢「嬉しそうにうなずきやがって。」

翔矢は、墓前に背を向けると、そこから見える景色に見入った。
自分の家の屋根も見える。

翔矢「俺たちって、毎日兄貴や久留美に見られてんだな。」
綾奈「そうだよ。だから、だらしない事してたら、すぐに怒られちゃうんだから。」
翔矢「うらめしや〜ってか?」

2人は、大声で笑った。
そのあと、綾奈は、しばらく墓標を見つめていた。
神戸家之墓・・・
神戸輝明 享年15・・・
神戸久留美 享年14・・・

綾奈「ねぇ、翔君。翔君と結婚したら、私もこのお墓に入るんだよね?」
翔矢「え? ま、まぁな。」

神戸綾奈・・・私は、どれくらいまで生きるんだろう。
2人のお祖母ちゃんとか、ひいお祖母ちゃんの年齢まで生きるのかな・・・
そんな事を思って、綾奈は、ちょっと笑ってしまった。

翔矢「俺たちまだ中学生だぜ。墓入る話なんてすんなよ。」
綾奈「だって、輝君と久留美がいるところだもん。楽しみで・・・」
翔矢「楽しみぃ? 勘弁してください。」
綾奈「いいじゃない。だって、ここが私の故郷だもん。」
翔矢「・・・・」
綾奈「私は、翔君に守ってもらって幸せな一生を送る。
   でも、それだけじゃない。死んでも、みんなと一緒の世界が待ってる。
   私には、一生を終えた時に待っててくれる人がいる。
   いつでも帰れる場所がある・・・」


そう言った瞬間、綾奈の頬に熱いものが一筋流れたが、
それを黄昏時の少し冷たい風が乾かした・・・

綾奈「でも・・・」

そう言うと、綾奈は翔矢と向き合った。

綾奈「翔君、浮気したら許さないよ。絶対に私をお嫁さんにしてね。」
翔矢「・・・分かってる。」
綾奈「幸せにしてね。」
翔矢「分かってる・・・」
綾奈「一緒に、人生満足しようね。」
翔矢「ああ・・・」
綾奈「じゃあ、誓いのキス。」

翔矢は、輝明と久留美が見つめる前で、綾奈にキスをした。

綾奈「それじゃ行こうか。私の14歳の誕生日を祝ってもらいに。」

そして2人は、仲良く手をつなぐと、
「また来るね」と言い残して、神戸家の墓所を後にした。


こうして、綾奈の十三時代は終わった。


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