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昭信「澄殿の父上は、ご健在なのですか?」
澄は戸惑った。
気を許し過ぎて思わず出てしまった言葉・・・
しかし、そう聞かれた澄は、なぜかごまかす気にはなれなかった。
どうせ言ってしまったのなら・・・そんな気持ちになって、
なぜか、自分の身の上を昭信に聞いてもらいたい思いになっていた。
そして澄は、こう答えた。
澄「実は・・・私の父は生きています。」
昭信「なぜ一緒におられないのですか?
それとも、どこにおられるのか分からないのですか?」
澄「どこにいるかは分かっています・・・」
その少しさみしげな口調に、
昭信は、これ以上聞いてはならないと思い、言葉を控えた。
しかし澄は、言ったのである。
澄「実は、私の父は昭安様なのです。」
昭信「しょ、昭安様が澄殿の父上なのですか!?」
それは、昭信にとって衝撃の事実だった。
子供がいた事はおろか、妻帯歴があった事など
過去に色恋沙汰があったなんて、
昭安本人からはもちろんの事、
その周囲からも微塵も聞かされた事が無かったからだ。
しかも、その子が澄だったとは・・・
それから澄は、自らの生い立ちを昭信に語りながら、
昭信を円満寺の裏の母のキミの墓所に案内した。
昭信「ここが、昭安様の奥方様の・・・」
澄「契りは結んでいません。父と母が結ばれたのは一夜限り・・・
そして私が生まれ、私を生んだために母は若くして亡くなりました。
父が、毎年山田を訪れるのも、母に対する贖罪なのです。」
昭信は、静かにキミの墓前に手を合わせた。
昭信「澄殿は、娘である事を名乗り出ないのですか?」
澄「・・・名乗り出たら、父は、私の傍にいてくれるでしょうか?」
昭信「・・・・」
澄「私は怖いのです。もし、名乗り出て、父が私から離れてしまったら・・・
だから、私は待っているのです。」
昭信「昭安様から名乗り出てくれることをですか?」
澄「それでもいいのですが・・・
実は、父は今、円満寺の住職になる事を勧められているのです。
もし、父が住職になってくれたら、私は、ずっと父の傍にいられます。
そしたら、名乗りあえなくても・・・」
昭信「澄殿は、どこにも嫁がれないのですか?」
澄「私は、ずっと寺にいたい・・・
それが出来ないのであれば、せめて山田の中の家に嫁ぎたいです。
気が早い話ですが、出来るなら、父の跡を継がれる方に嫁ぎたい。
そうすれば、ずっと父と母の傍にいられる。
死んだら、父と母と共にこの山田で土になって、永遠に一緒にいられる・・・」
その瞬間、2人は妙な空気に包まれた。
澄の言葉に、昭信の心は大きく揺れ動いた。
自分がその役目を担いたい・・・
昭信は、そんな思いにかられたのだ。
でも、自分ごときが・・・
そう思っていた時だった。
思いがけぬ言葉を澄が口にしたのだった。
澄「昭信様が跡を継いでくれませんか?」
それは、眼に見えず差し伸べあっていた2人の心の手が
かすかに触れ合った瞬間であった・・・
※画像
矢板市大字山田小字六角堂にある観音堂。六角堂は現存しないが、
かつてあったと言われる六角堂や山田環往来記で語られる行人寺(寺名不詳)は、
この辺にあったものと思われる。
現に、写真向かって左手、観音堂の南側の山林の中に墓地があり、
そこに行人等の墓所である行人塚がある。
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後ろからアソコを見られると恥ずかしい♪
2007/9/4(火) 午前 11:08 [ fgd*ghs**yt5*54y ]