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綾奈は、翔矢の前で立ち上がると、
翔矢が見ている前にも関わらず、おもむろに服を脱ぎ始めた。
翔矢「な、何やってんだよ!?」
翔矢が、綾奈の腕を抑えて止めようとすると、
綾奈は、真剣な顔で翔矢に言った。
綾奈「お願い、黙って見てて・・・」
翔矢「見ててって・・・輝君との約束だから・・・」
翔矢は、それ以上綾奈を止める事が出来なかった。
そして綾奈は、ゆっくりではあったが躊躇する事なく服を脱ぎ、
やがて一糸まとわぬ姿になった。
翔矢は、思わずその綾奈の裸体に見惚れてしまった。
見ちゃいけないと思いながらも、
金縛りにあったかのように視線を逸らす事も出来なかった。
綾奈の上から下まで露になり、綾奈は、それを隠そうともしなかった。
けれども綾奈は、そんな翔矢の視線をも気にせず、
輝明の足元に立ち、輝明を見つめた。
綾奈(まだ、輝君の気持ちに応えられるよね・・・)
綾奈の心にあったのは、夏休みにした輝明との約束だった。
輝明「もし、俺が高校に合格したら・・・」
そして綾奈は、ゆっくりとひざまずくと、
そのまま輝明の亡骸に添い寝したのである。
それを見た翔矢は愕然となった。
翔矢(これが・・・約束・・・)
もう翔矢には、じっとそれを見守るしか出来なかった。
翔矢には、確かに見えたのだ。
裸になった綾奈を抱きしめる輝明の姿が・・・
そして、翔矢の目頭は熱くなった。
それは、感動でも悲しみでも怒りでもない、
悔しさ・・・いや、敗北の涙であった。
兄貴に負けた・・・翔矢はそう思った。
やっぱり忘れられなかったのだ。綾奈が好きな気持ちは。
他の人を好きになろうとして付き合っても・・・
それでも綾奈が好きだった。
だから翔矢は、もうそれ以上見ていられなかった。
次の瞬間、翔矢は、綾奈を輝明から強引に引き離していた。
翔矢「もうやめろよ!!」
そして翔矢は、生まれたままの姿の綾奈を抱きしめ、その口唇を奪っていた。
翔矢(兄貴は死んだんだ! だから、生きている俺を見てくれ!!)
翔矢は、綾奈から輝明の亡霊が消えるまで、口唇を離そうとはしなかった。
綾奈も、そんな翔矢に抵抗しようともしなかった・・・
しばらくして、口唇を離した翔矢は、綾奈に背中を向けて言った。
翔矢「もう、服着ろよ。風邪引くぞ。」
すると綾奈は、翔矢の言葉に素直に従い服を着た。
翔矢は、綾奈が服を着たのを確認すると、綾奈に向かって言った。
翔矢「なあ、綾奈。兄貴の写真撮ってやれば?」
綾奈「・・・そうだね。輝君に教えてもらったんだもんね。」
綾奈は、輝明の部屋からカメラを持ってきて、
それで輝明の写真を撮った。
そんな綾奈の姿を見つめながら、翔矢はある決意をしていた。
その翌日、輝明の通夜が行われた。
さらに翌日、告別式が行われ、輝明の亡骸は焼かれ、骨になった。
そして綾奈は、自分で持ち続けるため、輝明の骨をひとかけらもらった。
その後、高校の合格発表が行われ、輝明は高校に合格した。
輝明もまた、きちんと約束を果たしたのだった。
そして、中学校では、輝明が出席するはずだった卒業式が行われ、
輝明の友達は、皆、中学校を巣立っていった。
綾奈も、中1時代を終えて進級した。
ただ・・・
進級を前に、翔矢にはケジメをつけなければならない事があった。
それは、奈津美に対するケジメだった。
翔矢「その・・・別れたいんだ・・・」
翔矢は、怒られるかハンパなく愛想を尽かされるかの覚悟だったが、
それを聞いた奈津美は、なぜか笑っていた。
奈津美「やっぱりね。」
それは、翔矢の想定外の反応だった。
奈津美は、さばさばとしていた。
奈津美「分かってたよ。翔矢君には他に好きな人がいるんだなって。」
翔矢「・・・・」
奈津美「でも、そんな翔矢君に興味があったから・・・」
翔矢「本当にごめん・・・」
奈津美「謝らなくてもいいよ。結構楽しかったし。
忘れられないくらい・・・」
そして奈津美は言った。
奈津美「じゃあ、最後にお願い聞いて欲しいんだ。」
翔矢「・・・何?」
奈津美「これさ、悪いんだけど、私がフッたことにしてくれない?
私って、結構ええかっこしいだから。」
翔矢「・・・ああ、分かったよ。」
奈津美「ありがと、翔矢君。」
奈津美は、翔矢から離れると、笑顔で翔矢に言った。
奈津美「じゃあ、これでバイバイね。
でも、街で会ったら、友達として仲良くしてね。
じゃあね、翔矢君。」
こうして2人は、こじれる事もなく別れた。
ただ、翔矢は、ものすごく罪深い事をしてしまった気がして、
それからしばらく、気持ちが晴れない日が続いた。
けれども、これも全ては、自分の気持ちに素直になるため・・・
こうして翔矢は、綾奈と一緒に中2時代を迎えたのだった。
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