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家に帰った輝明と綾奈は、輝明の家の庭で花火を始めた。
浴衣姿で花火にはしゃぐ綾奈。
そんな綾奈に、輝明はまたカメラを構えていた。
綾奈「写真ばっかり撮ってないで、輝君も花火しようよ。」
輝明「そんな事より、キス写真撮ろうよ。」
綾奈「・・・・」
そして輝明と綾奈は、
頬を寄せ合ってアップでパシャ!
綾奈が輝明のホッペにチュでパシャ!
輝明が綾奈のホッペにチュでパシャ!
おでこをくっつけて、見つめ合う2人の横顔をパシャ!
それから最後に口唇を重ねて横顔をパシャ!
・・・と、立て続けに写真を撮った。
綾奈「何か恥ずかしい・・・」
撮った写真を画像で確認してそう言ったが、
撮っている時は、思った以上に楽しかった。
キスしてる自分なんて、中学生になるまでは考えられなかったけれど、
それを今、当たり前のようにして楽しんでいる。
綾奈は、自分の中で世界観が確実に変わっている事を実感すると共に、
それ以前の自分が、とても幼く思えた。
花火が終わると、2人は風呂に入って着替える事にした。
もちろん、別々に。ただ、綾奈は、輝明の家の風呂を借りた。
先に綾奈が入り、あとから輝明が入った。
綾奈が、汗をさっぱり流すと、
パジャマ代わりのジャージに着替えて輝明の部屋に入った。
綾奈「お風呂空いたよ。」
輝明「分かった。じゃあ、俺も行って来るわ。」
綾奈は、輝明が風呂を終えるまで、輝明の部屋で待つ事にした。
何気なくテレビを見ていたが、気になるのは輝明のベッドだった。
綾奈(一緒に寝るんだよね・・・)
それは、幼馴染みとしては初めての事ではなかったが、
付き合い始めてからは初めての事だ。
綾奈(やっぱり、違うんだろうな・・・)
綾奈がそんな事を考えていた時だった。
テレビのチャンネルは、バラエティ番組に合わせていたが、
そこで、あるお笑い芸人がこう言ったのである。
芸人「健康的な男だったら、エロ本やビデオのひとつふたつ、
自分の部屋のベッドに隠し持ってますよ!!」
その言葉が、妙に強く綾奈の印象に残った。
綾奈(輝君も・・・まさかね・・・)
そう思いながらも、綾奈は、輝明のベッドの下を覗いていた。
すると・・・「あれ?」と思う影が見えた。
まさかまさかと思いつつも、綾奈は、その影に手を伸ばした。
綾奈「・・・あった・・・」
それは、明らかにエロ本と分かる雑誌が2冊と、
ラベルが何も貼られていないビデオテープが2本だった。
綾奈は、おもむろにその1冊をぺらぺらとめくってみた。
どんな形態であろうと、女の人が裸で写っていればエッチなもの・・・
そんな認識だった綾奈にとって、
雑誌に載っていた女性たちは、ありえない想像を絶する格好をしていた。
綾奈(輝君だって男の子だもん・・・でも・・・)
その時だった。突然、部屋のドアが開いた。
風呂を上がった輝明が部屋に戻ってきたのである。
エロ雑誌を見ている姿で輝明と鉢合わせ。
綾奈は、雑誌に夢中で、輝明が近付いてくる足音に全く気付かなかった。
綾奈は、慌てて雑誌やビデオをしまおうとした。
綾奈「ご、ごめんなさい・・・」
謝るしか出来なかった綾奈だったが、
輝明は、動揺を隠しながら綾奈を通り過ぎ、
いつもの感じでこう言った。
輝明「綾奈、俺の事軽蔑した?」
綾奈「け、軽蔑なんてしないよ・・・」
それは嘘ではなかった。
衝撃が大きかっただけ。綾奈にとっては、ただただそれだけだった。
輝明「綾奈は、そういうの見た事ないの?」
綾奈「うん・・・無い・・・」
輝明「じゃあ、一緒に見ようか?」
綾奈「え?」
すると輝明は、ビデオテープのひとつを取り、
それをデッキにセットした。
綾奈は、戸惑いながらも、輝明のする事をただ見守るしか出来なかった。
そして輝明は、ビデオを再生した。
その映像を見ながら、綾奈は、
事ある毎に息を呑み、うめき声を上げ、体をビクつかせた。
それは、綾奈が初めて見る本物のセックスの映像であった。
輝明は、自分でも「何やってんだろう」と思いながらも、
その映像を見て反応する綾奈の姿を後ろから見守っていた。
もしかしたら、これで綾奈に軽蔑されるかも知れないと思いつつも、
中3の男として抱く思いを、綾奈に理解して欲しいとも願っていた。
約30〜40分程度の映像が終わると、輝明は綾奈に感想を聞いた。
しかし、綾奈は何も答えられなかった。
けれども、映像を見ていて、綾奈には、どうしても聞きたい事があった。
綾奈は、輝明に視線を向けないまま言った。
綾奈「ねぇ、輝君・・・」
輝明「・・・なに?」
綾奈「輝君は、ああいう事したいの?」
輝明は、一瞬答えに詰まったが、
ここは嘘をつかず、正直に話そうと口を開いた。
輝明「したい・・・綾奈としたい・・・」
綾奈「・・・今は・・・無理だよ・・・」
輝明「う、うん、分かってる・・・」
ちょっとだけ期待する気持ちもあったが、
綾奈の言葉で、輝明の中にあったある意味のもやもや感は、逆に吹っ切れた。
ただ、輝明は、その時とっさに思った事を口にした。
輝明「なぁ、綾奈。」
綾奈「・・・なに?」
輝明「今は・・・あれだけど、もし、俺が高校に合格したら・・・
こういう事してもいいか?」
綾奈「・・・・」
綾奈は、表情も変えず何も答えなかったが、
その瞬間、最大級の雷撃が綾奈の全身を貫いていた。
でも・・・これはいつかは経験しなければならない事。
しなければ、子供が出来ない事も知っていた。
ならば、最初は好きな人と・・・
そう思うと、それを拒む理由は見つからなかったし、
恋人として、その期待に応えたいという気持ちもあった。
綾奈は、少し長い沈黙のあと、輝明に言った。
綾奈「・・・分かった。輝君が高校生になったら・・・」
輝明「・・・ありがとう・・・」
これでこの一件は、とりあえず落着した。
綾奈は、重い約束を背負ってしまったと、約束をした後でちょっと後悔した。
でも、後悔したのは、輝明が嫌だったからではない。
輝明が高校生になるのは約1年後。
それでは、ちょっと早すぎるかなと思ったのだ。
そして、そんな約束をした瞬間、
綾奈は、不思議な感覚に襲われていた。
脳裏に母親の顔が浮かんだのだ。
その顔は、悲しそうにも怒っているようにも見えた。
そんな母に、綾奈も後ろめたい思いを抱いていた。
綾奈(ごめんね・・・お母さん・・・)
その夜、綾奈は、輝明のベッドで輝明と一緒に寝た。
綾奈が、輝明に背中を向けると、輝明は、その綾奈の背中を抱きしめて言った。
輝明「俺、綾奈の背中が好きだ。」
そして、2人はそのまま眠りについたのだった。
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