"やいたもん"の文学館

大きな人生の転機がありました・・・

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第8話

家に帰った輝明と綾奈は、輝明の家の庭で花火を始めた。
浴衣姿で花火にはしゃぐ綾奈。
そんな綾奈に、輝明はまたカメラを構えていた。

綾奈「写真ばっかり撮ってないで、輝君も花火しようよ。」
輝明「そんな事より、キス写真撮ろうよ。」
綾奈「・・・・」

そして輝明と綾奈は、
頬を寄せ合ってアップでパシャ!
綾奈が輝明のホッペにチュでパシャ!
輝明が綾奈のホッペにチュでパシャ!
おでこをくっつけて、見つめ合う2人の横顔をパシャ!
それから最後に口唇を重ねて横顔をパシャ!
・・・と、立て続けに写真を撮った。

綾奈「何か恥ずかしい・・・」

撮った写真を画像で確認してそう言ったが、
撮っている時は、思った以上に楽しかった。
キスしてる自分なんて、中学生になるまでは考えられなかったけれど、
それを今、当たり前のようにして楽しんでいる。
綾奈は、自分の中で世界観が確実に変わっている事を実感すると共に、
それ以前の自分が、とても幼く思えた。

花火が終わると、2人は風呂に入って着替える事にした。
もちろん、別々に。ただ、綾奈は、輝明の家の風呂を借りた。
先に綾奈が入り、あとから輝明が入った。
綾奈が、汗をさっぱり流すと、
パジャマ代わりのジャージに着替えて輝明の部屋に入った。

綾奈「お風呂空いたよ。」
輝明「分かった。じゃあ、俺も行って来るわ。」

綾奈は、輝明が風呂を終えるまで、輝明の部屋で待つ事にした。
何気なくテレビを見ていたが、気になるのは輝明のベッドだった。

綾奈(一緒に寝るんだよね・・・)

それは、幼馴染みとしては初めての事ではなかったが、
付き合い始めてからは初めての事だ。

綾奈(やっぱり、違うんだろうな・・・)

綾奈がそんな事を考えていた時だった。
テレビのチャンネルは、バラエティ番組に合わせていたが、
そこで、あるお笑い芸人がこう言ったのである。

芸人「健康的な男だったら、エロ本やビデオのひとつふたつ、
   自分の部屋のベッドに隠し持ってますよ!!」


その言葉が、妙に強く綾奈の印象に残った。

綾奈(輝君も・・・まさかね・・・)

そう思いながらも、綾奈は、輝明のベッドの下を覗いていた。
すると・・・「あれ?」と思う影が見えた。
まさかまさかと思いつつも、綾奈は、その影に手を伸ばした。

綾奈「・・・あった・・・」

それは、明らかにエロ本と分かる雑誌が2冊と、
ラベルが何も貼られていないビデオテープが2本だった。
綾奈は、おもむろにその1冊をぺらぺらとめくってみた。
どんな形態であろうと、女の人が裸で写っていればエッチなもの・・・
そんな認識だった綾奈にとって、
雑誌に載っていた女性たちは、ありえない想像を絶する格好をしていた。

綾奈(輝君だって男の子だもん・・・でも・・・)

その時だった。突然、部屋のドアが開いた。
風呂を上がった輝明が部屋に戻ってきたのである。
エロ雑誌を見ている姿で輝明と鉢合わせ。
綾奈は、雑誌に夢中で、輝明が近付いてくる足音に全く気付かなかった。
綾奈は、慌てて雑誌やビデオをしまおうとした。

綾奈「ご、ごめんなさい・・・」

謝るしか出来なかった綾奈だったが、
輝明は、動揺を隠しながら綾奈を通り過ぎ、
いつもの感じでこう言った。

輝明「綾奈、俺の事軽蔑した?」
綾奈「け、軽蔑なんてしないよ・・・」

それは嘘ではなかった。
衝撃が大きかっただけ。綾奈にとっては、ただただそれだけだった。

輝明「綾奈は、そういうの見た事ないの?」
綾奈「うん・・・無い・・・」
輝明「じゃあ、一緒に見ようか?」
綾奈「え?」

すると輝明は、ビデオテープのひとつを取り、
それをデッキにセットした。
綾奈は、戸惑いながらも、輝明のする事をただ見守るしか出来なかった。
そして輝明は、ビデオを再生した。
その映像を見ながら、綾奈は、
事ある毎に息を呑み、うめき声を上げ、体をビクつかせた。
それは、綾奈が初めて見る本物のセックスの映像であった。
輝明は、自分でも「何やってんだろう」と思いながらも、
その映像を見て反応する綾奈の姿を後ろから見守っていた。
もしかしたら、これで綾奈に軽蔑されるかも知れないと思いつつも、
中3の男として抱く思いを、綾奈に理解して欲しいとも願っていた。

約30〜40分程度の映像が終わると、輝明は綾奈に感想を聞いた。
しかし、綾奈は何も答えられなかった。
けれども、映像を見ていて、綾奈には、どうしても聞きたい事があった。
綾奈は、輝明に視線を向けないまま言った。

綾奈「ねぇ、輝君・・・」
輝明「・・・なに?」
綾奈「輝君は、ああいう事したいの?」

輝明は、一瞬答えに詰まったが、
ここは嘘をつかず、正直に話そうと口を開いた。

輝明「したい・・・綾奈としたい・・・」
綾奈「・・・今は・・・無理だよ・・・」
輝明「う、うん、分かってる・・・」

ちょっとだけ期待する気持ちもあったが、
綾奈の言葉で、輝明の中にあったある意味のもやもや感は、逆に吹っ切れた。
ただ、輝明は、その時とっさに思った事を口にした。

輝明「なぁ、綾奈。」
綾奈「・・・なに?」
輝明「今は・・・あれだけど、もし、俺が高校に合格したら・・・
   こういう事してもいいか?」

綾奈「・・・・」

綾奈は、表情も変えず何も答えなかったが、
その瞬間、最大級の雷撃が綾奈の全身を貫いていた。
でも・・・これはいつかは経験しなければならない事。
しなければ、子供が出来ない事も知っていた。
ならば、最初は好きな人と・・・
そう思うと、それを拒む理由は見つからなかったし、
恋人として、その期待に応えたいという気持ちもあった。
綾奈は、少し長い沈黙のあと、輝明に言った。

綾奈「・・・分かった。輝君が高校生になったら・・・」
輝明「・・・ありがとう・・・」

これでこの一件は、とりあえず落着した。
綾奈は、重い約束を背負ってしまったと、約束をした後でちょっと後悔した。
でも、後悔したのは、輝明が嫌だったからではない。
輝明が高校生になるのは約1年後。
それでは、ちょっと早すぎるかなと思ったのだ。
そして、そんな約束をした瞬間、
綾奈は、不思議な感覚に襲われていた。
脳裏に母親の顔が浮かんだのだ。
その顔は、悲しそうにも怒っているようにも見えた。
そんな母に、綾奈も後ろめたい思いを抱いていた。

綾奈(ごめんね・・・お母さん・・・)

その夜、綾奈は、輝明のベッドで輝明と一緒に寝た。
綾奈が、輝明に背中を向けると、輝明は、その綾奈の背中を抱きしめて言った。

輝明「俺、綾奈の背中が好きだ。」

そして、2人はそのまま眠りについたのだった。

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