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クリスマスを前にして、輝明と綾奈の交際がお互いの両親の知るところになった。
きっかけは綾奈。ある日、母親にそれとなく聞かれ、白状するところになった。
白状すると言っても、別に隠していたわけではなかったが・・・
親たちも、うすうすは感付いていたようだ。
あとで聞いたら、輝明も親に聞かれていたが、
輝明は、その時否定したそうだ。
それを聞いて、綾奈は口が軽かった自分を責めたが、
親たちは、交際に反対していたわけではなかった。
むしろ、歓迎していた。
お互いの家の両親が昔から仲が良かった事もあるだろう。
輝明も綾奈も、互いの両親から信頼され、
「うちの子お願いね」みたいな感じで、交際は、親公認のものとなった。
輝明も綾奈も、全く気にして無かった呪縛だったが、
一応存在したそれが解き放たれた事で、何か自由になれた気がして嬉しかったが、
それ以上に、親に知られている事が気恥ずかしくて仕方なかった。
そして迎えたイブの夜。
輝明と綾奈は、久留美の病室にいた。ここで3人で明かす事にしていた。
それは、交際が親公認になる前から綾奈が決めていた事だ。
ただ、綾奈はこの日、少し疲れ気味だった。
時間も、まだ9時。
病院では消灯の時間でも、盛り上がるのはこれからという時にも関わらず、
久留美の隣でベッドに横になっていた綾奈は、眠りこんでしまっていた。
久留美「あれ、綾奈もう寝ちゃってる。」
輝明「最近、いろいろ忙しかったみたいだからな。」
久留美「お兄ちゃんがわがまま言ったんじゃないの?」
輝明「・・・まあ、否定はしない。」
綾奈の愛らしい寝顔を見つめて、輝明は、ちょっとした感謝を感じていた。
綾奈は最近、輝明の弁当を作ってくれたり、
輝明がデートが出来る日時にあわせるようにして、
自分の都合をつけるようにしてくれていた。
結構大変だったろう。
そう思うと、輝明は、綾奈が無性にいとおしくなるのだった。
久留美「でも、私も人の事言えないけどね。
綾奈には苦労かけっぱなしだし・・・」
身の回りの事だけでなく心の事も・・・
輝明「まあ、寝かせてやれよ。イブだから惜しい気もするけど。」
久留美「本当は、私の事、邪魔だと思ってるんでしょう?」
輝明「別に・・・」
久留美「でも、本当に邪魔してるんだよ。」
輝明「ん?」
久留美「綾奈は、お兄ちゃんだけでなく、私の恋人でもあるんだから。」
輝明「なにそれ?」
久留美「デートしたりキスしたり。」
輝明「キスって?」
久留美「もちろん、口と口。」
輝明「お前ら、そんな事やってんの?」
久留美「悪い?」
輝明「・・・・」
良い悪いの問題じゃない。
輝明は、綾奈と久留美がキスをしていたと知っても、
ちょっとは驚いたが、別に構わないとは思っていた。
けれども・・・よく考えれば、久留美と兄妹で間接キスしている事になる。
それを思うと・・・何とも複雑な思いだった。
輝明(それは問題だよな・・・でも、俺は別に構わないけど・・・
いや、構わないって事は無いけど、でも、久留美も嫌だろう・・・
でも、ぜんぜん嫌じゃないみたいだし・・・)
輝明は、自分と間接キスしている事に対する気持ちを久留美に聞きたかったが、
聞くと、なんか変な感じになる気がして聞けなかった。
「そんな変な事意識しないでよ」と返されるのも格好悪かった。
久留美「それにしても、お兄ちゃんとこんな風に話すの久しぶりだね。」
輝明「そういえば、サシで話すのは、しばらく無かったな。」
久留美「しかも、イブの夜。イブの夜に兄妹仲良くって・・・
押さない子供ならともかく、自分らが中学生と思うと、軽く惨めだね。」
久留美はそう言って笑った。
でも、間に綾奈がいる。
綾奈が、みんなを幸せな気持ちにしてくれる。
久留美(綾奈の家の隣に生まれてよかった・・・)
綾奈の寝顔を見つめて、久留美は心の底からそう思った。
こうして、兄と親しく話せるのも綾奈のおかげ。
でも・・・そんな幸せな時でも考えてしまう自分の命の期限。
こうして輝明と話せるのも、今夜が最期になるかも知れない。
そう思うと、少し切なくなった。
久留美(でも、思い出はあの世に持っていけるよね。)
けれども、生きていなければ言えない事もある。
そう思った時、久留美は、どうしても輝明に言っておきたい事があった。
久留美「お兄ちゃん、綾奈の事だけど・・・」
輝明「なんだよ?」
久留美「絶対にお嫁さんにしてあげてね。」
輝明「え? そ、そんなのまだ考えてねぇよ。」
久留美「じゃあ、考えて。綾奈の事、絶対大切にするって約束して。」
久留美の目は真剣だった。
その目を見た輝明も真剣になった。
久留美「私、綾奈の家族になりたい。そしたら、ずっと綾奈の傍にいられる。
でも、私のためじゃなくて・・・
お兄ちゃん、綾奈が好きだから恋人になったんでしょう?
だから、絶対に大切にして、お嫁さんにしてあげて。
他の人を好きにならないで・・・」
輝明は、綾奈の寝顔を見つめた。
結婚・・・それは輝明も考えてはいた事だった。
まだ早いと思っても、このままずっと綾奈を好きでいて、
そのまま結婚出来たらいい・・・そんな事を思ったりする事もある。
それくらい綾奈か好きだ。それは間違いなかった。
だからそれは、久留美に言われるまでもなかった。
輝明「ああ、分かったよ・・・」
輝明は、ぼそっとそう返した。
久留美「私は、死んでも綾奈の傍にいるからね。」
輝明「幽霊じゃ見えないから、
文句があるなら、生きてて言え。」
それを聞いた久留美は、クスっと笑って言った。
久留美「じゃあ、お言葉に甘えて、文句をもうひとつ!」
輝明「えぇ〜〜〜?」
久留美は、久しぶりに兄をおもちゃにして遊ぶのだった。
イブの夜は、そんな感じで過ぎていった。
まさかこの時に、すでに運命の時がすぐ間近まで迫っていようとは、誰も知る由もなく・・・
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