"やいたもん"の文学館

大きな人生の転機がありました・・・

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第22話 菊と由美 3

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由美「父と言っても、本当の父ではありません。私は孤児(みなしご)でしたから・・・
   私の忍びの師であり、私を育ててくれた養父です。」

 菊「でも、どうしてその人と? 好きだったの?」

由美は、首を横に振った。

由美「女の忍びは、時にこの女の体を武器にして、
   夜床などで男を惑わし、話を聞きだしたり、その命を奪ったり・・・
   そういう事もしなければなりません。
   私は、その伽の技を習得するために、
   菊様が辰業様に嫁がれた13歳の頃、初めて父を相手に伽を知り、
   それから、その技を覚えていきました。」

 菊「・・・・」
由美「そこに情などはありません。
   父は、私を立派な忍びにするため、
   私も、立派な忍びになるためだけにそれをしました。」

 菊「今でも・・・」
由美「それが忍びですから・・・」

菊は、女忍びの想像以上に過酷な現実に絶句してしまった。
由美の胸の中で快楽に溺れながら、殺されていったものもいる・・・
そう考えると、恐ろしさのあまり身震いもした。
けれども、それで由美をケダモノと思ったり軽蔑したり、
その見方が変わる事は無かった。
自分も、由美と同じ運命の下に生まれていれば、
由美のように生きていただろうと思ったからだ。

由美「だから、私の体は汚れているのです。
   でも、辰業様は、そんな私を愛してくれました。」

 菊「・・・・」
由美「私は、それまで、伽で情など感じた事はありませんでした。
   けれども辰業様は、そんな私の境遇を全て知った上で、
   私を女として愛してくれたのです。
私は、辰業様から、女としての幸せと悦びを教わったのです。
   そして、私は、今までの私の生き方を後悔しました。」

 菊「後悔? なぜ?」
由美「辰業様に汚れていない清らかな体を捧げられなかったからです。
   忍びとして生き、自分の体を汚してきた事を心から悔やみました。」

 菊「・・・・」
由美「女として、愛する人に純粋無垢な体を捧げたい。
   私には、それが出来ませんでした。
   だから、私は、菊様がうらやましいのです。
   それが出来るのですから・・・」


純粋無垢な体・・・菊の心に、その言葉が強く印象に残った。

由美「愛する人に純粋無垢な体を捧げる事は、
   一生で一度しか出来ない事です。
   私のように道を間違えば、一生出来ないまま、
   女としての最高の悦びを知らないまま、
   女を終える事もあります。
   菊様は、まだまだお若いのです。
   いずれ、辰業様も、菊様を受け入れるでしょう。
   その時まで、純粋無垢な体を守って下さい。
   それが、女としての幸せですから。」


菊は、それを聞いて、気分が楽になったのと同時に、
自分が、ものすごく強くなった気がした。
そして、今を全て受け入られるような気がした。

その翌日、由美は、辰業の急な密命を受けて山田を忙しく発っていった。
那須の方で不穏な動きがあるらしく、それを探らせにいかせたのだ。
その夜、菊は、改めて辰業に夜床を共にする事を申し出たが、
辰業は、いつものように優しくそれを断った。
相変わらず、辰業と菊の関係は変わらなかったが、
もう菊は焦らなかった。

何年でも待とう・・・

そう思えるようになったのである。


しかし、そんな菊の心とは裏腹に、世の情勢は大きく動きつつあった。
天正8年(1580年)12月、塩谷家当主塩谷義綱が、
突然、庶兄の塩谷義通を幽閉するという事件が勃発したのである。



※写真
塩谷家の居城川崎城遠望。山並みの手前、右から左までほぼ全てが川崎城の城域。
さらに城域は向かって左手(南)に続く。

古タイヤの山

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どこの学校の校庭にもある古タイヤで出来た山
早稲田小の校庭の隅にもある
ただ、古タイヤを使って出来た山なのに、
子供だましみたいにカラフルに色をぬっただけなのに、
なぜ、普通の山を登るより楽しかったのだろうか?
今にして思えば、大人に騙されていた気もするけど、
楽しかったのは、心から本当だった
いや、大人が騙すのは当たり前だ
私も騙された事があるから、それを覚えた
でも、この古タイヤの山を登って、楽しいと思えていた時、
私は、疑う心を知らなかった
騙されていようといまいと、楽しい事を素直に楽しいと思えた
私は、この山を見て、今は子供騙しと思う
それだけ大人になった、
それだけ賢くなったのだが、
でも、そのために無くしたものがあまりにも大きかった気がする
私は、子供の頃に確かに持っていたものを捨ててしまったのだ・・・

その山の隣には、古タイヤが1本ずつ並んでいた
これも、どこの学校にもあるものだ
跳び箱のように、連続して飛んで遊んだり、
その上をバランスを取りながら歩いたりする
私にも、誰にでもあるような思い出がある
それを見た時、私は、
久しぶりに跳び箱をしたり、
その上を歩いてみたいと思った
でも、子供たちがたくさんいる
私は、恥ずかしいのでやめた

でも・・・

どうやら私は、大切なものを完全には捨てていなかったようだ
捨てていたら、ここで久しぶりに遊んでみたいなど、
微塵にも思わなかったはずだ
私は、このままの自分でいようと心に決めて、
その日は、写真を撮るだけでその場を後にした

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