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大きな人生の転機がありました・・・

十三時代〜とさみち〜(完結)

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少年少女の13歳の物語です
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第13話

年が明けて元旦。
新しい年を迎えて、綾奈は、輝明と一緒に初詣に出掛けた。
晴れ着の振袖を着て髪も結ってもらった綾奈。
もちろん、意識するのは輝明。
どんな反応をするか、綾奈は不安だったが、
綾奈の晴れ姿を見た輝明は、照れ笑いして俯いてしまった。
まぶしくて直視出来なかったと言った方がいい。
輝明にしてみれば、純粋にど真ん中であった。

綾奈「ねぇ、何とか言ってよ。」

綾奈が催促すると、輝明はテレながら答えた。

輝明「ものすごくかわいいよ。」

でも、輝明は笑っていた。
綾奈は、からかわれているのだと思った。

綾奈「馬子にも衣装とか思ってるでしょ?」
輝明「そんな事ないよ。だって、俺以前から言ってたじゃん。
   綾奈は和装が似合うって。」

綾奈「本当に?」
輝明「ホントだって。」
綾奈「ありがと。」

そんな事があってから、地元で一番大きな神社にやってくると、
輝明と綾奈は、二度目の初詣の参拝を済ませた。
もちろん、一度目は家族とのものだ。

輝明「何お願いした?」
綾奈「輝君の合格祈願に久留美の全快祈願。それと家族の健康。」
輝明「自分の事は?」
綾奈「あ、忘れてた・・・」
輝明「健気な奴。」
綾奈「でも、輝君は、私の事お願いしてくれたんでしょ?」
輝明「まぁな。」
綾奈「何お願いしてくれたの?」
輝明「言ったら御利益が無くなるから言わね。」
綾奈「ずるい、私には言わせたくせに!」

それから2人はおみくじを引いた。
これは今日初めてだ。
輝明は中吉、綾奈は大吉だった。悪くない。
輝明は、一番気になる学業の欄を見て笑った。

輝明「努力は報われます・・・だってさ。激しく無難だな。」
綾奈「微妙だね・・・」

そして綾奈は、久留美の分も引いておこうと、もう1枚おみくじを引いた。
しかし、そのおみくじを見て綾奈はゾッとした。
それは、凶だった。
すぐに健康面のところを見ると、
「大病を患う虞(わずらうおそれ)あり」と書かれていた。

綾奈(本人じゃないのに引いたから・・・
  これは久留美じゃなくて、私に対する天罰だよね・・・)


綾奈は、そう思う事にして、よぎった不安をかき消した。
それから綾奈は、輝明のために合格祈願・学業成就の御守り、 
久留美のために病気平癒・無病息災の御守りを買った。
そして2人は、久留美の病室を訪ねた。
けれども、綾奈は、久留美に対して後ろめたくて
あんまり久留美の顔を見れなかった。
あの凶のおみくじが、ずっと頭を離れなかったのだ。
余計な事をしてしまった・・・綾奈は、本当に後悔していた。


正月が終わると、輝明はいよいよ受験本番である。
まずは、私立の受験。しかしそれは滑り止め。
本命は、地元の県立高校。
そして輝明は、滑り止めに私立を2校受けたが、
どちらも合格し、とりあえず中学浪人は避けられた。
また、久留美も、大きな回復を見せる事こそ無かったが、
容態が悪化する事もなく、平穏に過ごす事が出来ていた。
綾奈も、あの凶のおみくじの事を忘れられるようになっていた。

ところが・・・

それは、輝明の県立高校受験が、いよいよ明日という日だった。
輝明にお弁当を作る約束をしていた綾奈は、
早起きするためにその夜は、かなり早めにベッドに入った。
緊張する事もなくすぐに眠れたが、嫌な夢を見てしまったのである。
それは、久留美が、綾奈にお別れをいう夢だった。

久留美「綾奈、今までありがとう。私、神様になるから・・・」
 綾奈「な、何言ってんの?」
久留美「今度は、私が綾奈を守ってあげるね。」

久留美がどんどん遠のいていく。
手を伸ばして呼びかけても届かない。
久留美は笑顔のまま・・・

綾奈は、目覚まし時計よりも早く目を覚ましてしまった。
背中には、汗をびっしょりかいていた。

綾奈(まさか・・・)

嫌な予感をひきずりながらも、
綾奈は、少し早いけれども起きて、輝明の弁当の支度をした。
約束の時間になると、綾奈は、弁当を輝明の家に届けた。

綾奈「試験、頑張ってね。」
輝明「ああ、まかせとけって。」

すると輝明は、周囲に誰もいないことを確認すると、
玄関で綾奈を抱き寄せ、その口唇にキスをした。

綾奈「ちょ・・・」
輝明「おしっ、気合入った!」
綾奈「もう!」

そして輝明は、綾奈と母親に見送られて、受験へと出掛けていった。
その日の天気は快晴。空気は2月だけあって冷たかったけれど澄んでいた。


輝明を見送ってから、綾奈も登校し、いつものように授業を受けていた。
ところが・・・それは2時限目が終わった中休みの時だった。
翔矢は、校内放送で職員室に呼び出され、告げられたのである。

担任「妹さんが危篤らしい。」

翔矢は、すぐに綾奈の下に走っていた。
そして、綾奈と一緒にすぐさま病院に向かったのだった。

第12話

クリスマスを前にして、輝明と綾奈の交際がお互いの両親の知るところになった。
きっかけは綾奈。ある日、母親にそれとなく聞かれ、白状するところになった。
白状すると言っても、別に隠していたわけではなかったが・・・
親たちも、うすうすは感付いていたようだ。
あとで聞いたら、輝明も親に聞かれていたが、
輝明は、その時否定したそうだ。
それを聞いて、綾奈は口が軽かった自分を責めたが、
親たちは、交際に反対していたわけではなかった。
むしろ、歓迎していた。
お互いの家の両親が昔から仲が良かった事もあるだろう。
輝明も綾奈も、互いの両親から信頼され、
「うちの子お願いね」みたいな感じで、交際は、親公認のものとなった。
輝明も綾奈も、全く気にして無かった呪縛だったが、
一応存在したそれが解き放たれた事で、何か自由になれた気がして嬉しかったが、
それ以上に、親に知られている事が気恥ずかしくて仕方なかった。


そして迎えたイブの夜。
輝明と綾奈は、久留美の病室にいた。ここで3人で明かす事にしていた。
それは、交際が親公認になる前から綾奈が決めていた事だ。
ただ、綾奈はこの日、少し疲れ気味だった。
時間も、まだ9時。
病院では消灯の時間でも、盛り上がるのはこれからという時にも関わらず、
久留美の隣でベッドに横になっていた綾奈は、眠りこんでしまっていた。

久留美「あれ、綾奈もう寝ちゃってる。」
 輝明「最近、いろいろ忙しかったみたいだからな。」
久留美「お兄ちゃんがわがまま言ったんじゃないの?」
 輝明「・・・まあ、否定はしない。」

綾奈の愛らしい寝顔を見つめて、輝明は、ちょっとした感謝を感じていた。
綾奈は最近、輝明の弁当を作ってくれたり、
輝明がデートが出来る日時にあわせるようにして、
自分の都合をつけるようにしてくれていた。
結構大変だったろう。
そう思うと、輝明は、綾奈が無性にいとおしくなるのだった。

久留美「でも、私も人の事言えないけどね。
    綾奈には苦労かけっぱなしだし・・・」


身の回りの事だけでなく心の事も・・・

 輝明「まあ、寝かせてやれよ。イブだから惜しい気もするけど。」
久留美「本当は、私の事、邪魔だと思ってるんでしょう?」
 輝明「別に・・・」
久留美「でも、本当に邪魔してるんだよ。」
 輝明「ん?」
久留美「綾奈は、お兄ちゃんだけでなく、私の恋人でもあるんだから。」
 輝明「なにそれ?」
久留美「デートしたりキスしたり。」
 輝明「キスって?」
久留美「もちろん、口と口。」
 輝明「お前ら、そんな事やってんの?」
久留美「悪い?」
 輝明「・・・・」

良い悪いの問題じゃない。
輝明は、綾奈と久留美がキスをしていたと知っても、
ちょっとは驚いたが、別に構わないとは思っていた。
けれども・・・よく考えれば、久留美と兄妹で間接キスしている事になる。
それを思うと・・・何とも複雑な思いだった。

輝明(それは問題だよな・・・でも、俺は別に構わないけど・・・
  いや、構わないって事は無いけど、でも、久留美も嫌だろう・・・ 
  でも、ぜんぜん嫌じゃないみたいだし・・・)


輝明は、自分と間接キスしている事に対する気持ちを久留美に聞きたかったが、
聞くと、なんか変な感じになる気がして聞けなかった。
「そんな変な事意識しないでよ」と返されるのも格好悪かった。

久留美「それにしても、お兄ちゃんとこんな風に話すの久しぶりだね。」
 輝明「そういえば、サシで話すのは、しばらく無かったな。」
久留美「しかも、イブの夜。イブの夜に兄妹仲良くって・・・
    押さない子供ならともかく、自分らが中学生と思うと、軽く惨めだね。」


久留美はそう言って笑った。
でも、間に綾奈がいる。
綾奈が、みんなを幸せな気持ちにしてくれる。

久留美(綾奈の家の隣に生まれてよかった・・・)

綾奈の寝顔を見つめて、久留美は心の底からそう思った。
こうして、兄と親しく話せるのも綾奈のおかげ。
でも・・・そんな幸せな時でも考えてしまう自分の命の期限。
こうして輝明と話せるのも、今夜が最期になるかも知れない。
そう思うと、少し切なくなった。

久留美(でも、思い出はあの世に持っていけるよね。)

けれども、生きていなければ言えない事もある。
そう思った時、久留美は、どうしても輝明に言っておきたい事があった。

久留美「お兄ちゃん、綾奈の事だけど・・・」
 輝明「なんだよ?」
久留美「絶対にお嫁さんにしてあげてね。」
 輝明「え? そ、そんなのまだ考えてねぇよ。」
久留美「じゃあ、考えて。綾奈の事、絶対大切にするって約束して。」

久留美の目は真剣だった。
その目を見た輝明も真剣になった。

久留美「私、綾奈の家族になりたい。そしたら、ずっと綾奈の傍にいられる。
    でも、私のためじゃなくて・・・
    お兄ちゃん、綾奈が好きだから恋人になったんでしょう?
    だから、絶対に大切にして、お嫁さんにしてあげて。
    他の人を好きにならないで・・・」


輝明は、綾奈の寝顔を見つめた。
結婚・・・それは輝明も考えてはいた事だった。
まだ早いと思っても、このままずっと綾奈を好きでいて、
そのまま結婚出来たらいい・・・そんな事を思ったりする事もある。
それくらい綾奈か好きだ。それは間違いなかった。
だからそれは、久留美に言われるまでもなかった。

輝明「ああ、分かったよ・・・」

輝明は、ぼそっとそう返した。

久留美「私は、死んでも綾奈の傍にいるからね。」
 輝明「幽霊じゃ見えないから、
    文句があるなら、生きてて言え。」


それを聞いた久留美は、クスっと笑って言った。

久留美「じゃあ、お言葉に甘えて、文句をもうひとつ!」
 輝明「えぇ〜〜〜?」

久留美は、久しぶりに兄をおもちゃにして遊ぶのだった。
イブの夜は、そんな感じで過ぎていった。

まさかこの時に、すでに運命の時がすぐ間近まで迫っていようとは、誰も知る由もなく・・・

第11話

11月18日、久留美は、久しぶりに病院の外に出た。
浦島太郎というのはこういう事を言うのだろう。
親の車で、久しぶりに通る病院から家までの帰り道、
あったはずの家や店が取り壊されていたり、
新しい家や店が建っていたり。
それは、最近流行のアハ体験で景色が変わったくらいのもので、
浦島太郎というには大袈裟だったかも知れないが、
この街でずっと暮らしてきた久留美にとっては、
自分のいないところで変わってしまった故郷の景色を見るのは初めてで、
ちょっとした衝撃と戸惑いを感じた。
自分がいなくても、世界は変わっていく・・・
そんなさみしさも感じた。
ただ、街からはずれ、家に近付くほど、
何も変わっていない以前のままの景色が残っていた。
そして自宅・・・病院からは、5〜6kmの距離。
この車で10分くらいの距離を帰ってくるのに、
まさか数ヶ月もかかるとは思わなかった。
しかも車椅子。歩けないわけではなかったが、
転んだりすると危ないとの事で、不本意ながら乗せられた。
久留美は、玄関の前で、自分の家を見上げた。

久留美(懐かしい。自分の家なのにね。
   私、まだ13歳だよ・・・そんな事思うの、もっと先の予定だったのに・・・)
 

そんな久留美を綾奈が大声で迎えた。

綾奈「お帰り久留美!!」

今日は、綾奈の誕生日。
それにあわせて久留美は外泊許可を取ったわけで、
今日の主役は綾奈なわけだが、
綾奈にしてみれば、そんな事どうでも良かった。
自分の誕生日なんかより、久留美の一時帰宅の方が何万倍も嬉しかった。
綾奈にしてみれば、今日の主役は久留美だった。

その夜、綾奈の家で、綾奈の家族だけでなく、
久留美の家族も全員が集まって、綾奈の誕生パーティーが行われた。
しかし、主役のはずの綾奈は、
自分の誕生会も輝明もそっちのけで久留美に付きっきり。
パーティーは、結局、形は誕生会、
中身は、久留美の一時帰宅を祝うものとなった。


楽しい時間はあっと言う間に過ぎて、
夜も遅くなると、綾奈は、
久留美と一緒に久しぶりに久留美のベッドで寝る事にした。
久留美は、これに翔矢も誘ったが、翔矢はこれを断った。
昔は、3人で寝る事など、当たり前にしていた事なのに・・・

久留美「あいつ、彼女に義理立てしてるんだよ。」

まあ、いろいろ複雑な事情がある事は確かだ。
そして2人は、部屋の明かりを消してベッドに入った。

久留美「自分のベッドなのに懐かしい・・・
    もしかしたら、もう帰って来れないと思った事もあったから、
    ちょっと感動しちゃってるよ・・・」

 綾奈「私もだよ。でも、私は帰ってくると思ってたよ。
    だって、久留美は、土壇場でいつも強かったもん。」

久留美「でも、良かった。綾奈が13歳になるのを見届けられて。
    自分が13歳まで生きられた事も不思議だったけど、
    とりあえず、今日まで生きてこれて感謝してるよ。」

 綾奈「駄目だよ、そんなんじゃ。これから長い人生が待ってるんだから。」
久留美「本当に・・・待ってるかな・・・」
 綾奈「・・・・」
久留美「私は、今日を生きるので精一杯の身分だから、
    先の人生なんて今は考えられない・・・」


こういう時、久留美を叱ってでも、励ますべきだったかも知れない。
けれども綾奈は、それをしなかった。
久留美の苦しみの全てを分かっているわけではないが、
闘病生活は間近で見てきた。
だからこそ知っていた。
ひたすら励ましたって、時に軽々しくなってしまったり、
時に苦しみに耐えろと言うばかりの無理強いになってしまって、
返って久留美を苦しめる事がある事も。
弱音を吐きたい時は、思いっきり吐かせて、
それを聞いてあげた方が良い時もある。
ただ、空気が重くなって、それを感じた久留美が言った。

久留美「ごめんね、変な空気にしちゃって。」
 綾奈「ううん、大丈夫だよ・・・」
久留美「でもさ・・・綾奈だから言っちゃうけど、
    最近考えるんだ・・・どうしたら13年の人生で満足出来るかなって。」

 綾奈「・・・どういう意味?」
久留美「私、いつ死んじゃうか分からないから・・・
    どうせ死んじゃうなら、人生に満足して死にたいと思って。
    でも、どうしたら13歳で人生満足出来るかなって・・・」

 綾奈「13歳でなんか・・・人生満足出来ないよ・・・」
久留美「分かってる・・・でも、無理にでも自分を納得させて死にたい。
    死ぬ時泣くのは嫌だから・・・」

 綾奈「ねぇ、久留美・・・もうそんな事言わないでよ・・・」

そう言って、久留美を抱きしめた綾奈は泣き出してしまった。
その瞬間、久留美の目頭も熱くなった。
親友の綾奈にこんな事言っている自分が情けなくて悔しくて・・・
今更ながら、自分の運命を久留美は恨んだ。
だけど、これが現実・・・
久留美は、意を決して言った。

久留美「ねぇ、綾奈。私、綾奈にお願いがあるの・・・」

涙を拭きながら綾奈が「なに?」と聞き返すと、
久留美は、とんでもない事を口にした。

久留美「私とセックスしよ・・・」

綾奈は絶句した。
そして、その言葉を聞いた瞬間、
綾奈の脳裏に、輝明と見たあのビデオの光景がよみがえった。

 綾奈「な、何言ってんの?」
久留美「私がもし生きてたら、もうすぐ経験する事でしょう?
    とりあえず、綾奈に恋人感覚とキスは教えてもらったから、
    あとは、セックスすれば、13歳でも人生満足出来るかなって。」

 綾奈「わ、私たち、女の子同士だよ!?」
久留美「あれ? 綾奈は、やり方知ってるんだ?」
 綾奈「え?」
久留美「誰に教えてもらったのかな? お兄ちゃんかな?」

図星だけに綾奈は何も言えなかった。
久留美は、そんな綾奈を見ていやらしく笑っていたが、
でも、内心は、綾奈が本気でうらやましかった。

久留美(私だって、生きていたい・・・
   でも、死んじゃっても後悔したくない。)


そして久留美は言った。

久留美「ごめんね綾奈。でも、綾奈の裸で、私の裸を抱きしめてくれるだけでいいんだ。
    自分の裸を、好きな人の裸で抱きしめられたら、
    どんなに気持ちいいのかなって、それが知りたいだけだから・・・」

 綾奈「・・・・」
久留美「セックスなんて言っておどかして悪かったけど・・・
    本当にそれだけだから。」


綾奈は、少し押し黙った後、こう言った。

 綾奈「じゃあ、ひとつだけ約束して。」
久留美「なに?」
 綾奈「生きるって約束して。死ぬ前の思い出にするつもりでこういう事したくない。
    私は、久留美に生きて欲しいし、そう信じてるから。
    だから、生きるために・・・久留美が頑張れるなら、する。
    だから、必ず生きるって約束して!」

久留美「・・・うん、分かった。約束する。」

すると綾奈は、ベッドから出て、着ていたパジャマを脱ぎだした。
それを見た久留美も、ベッドの上で上半身だけ起こして、
着ているパジャマを脱ぎだした。
そして、お互い一糸まとわぬ姿になると、
綾奈は、おもむろにベッドに戻り、
布団の中、自分の裸で、久留美の裸を優しく抱きしめた。

久留美「綾奈の肌気持ちいい・・・」
 綾奈「久留美、大丈夫? 寒くない?」
久留美「うん、ぜんぜん。綾奈があっためてくれるし。」
 綾奈「そう。でも、寒かったら言わないと駄目だよ。
    体に障るんだから。」

久留美「綾奈のおっぱい、結構おっきいね。」
 綾奈「もう、そういう事言うなら、もうしないよ。」

そう言いながらも、綾奈は、いとおしくいとおしく
久留美の闘病で傷つき、やせ細った体を抱きしめた。
そして願った。
私の命の半分を久留美にあげてください・・・と。

久留美「私、今日のこの感触、ずっと忘れないからね・・・」

そして2人は、しばらくそのままお互いの体を温めあったのだった。

第10話

輝明は、7月の終わりに部活を引退すると、
受験生として、講習や模擬テストなどで忙しくなって、
休日などでも、なかなか綾奈との時間を作れなくなっていった。
しかしそういう時、綾奈は、決まって久留美に会いに行っていた。
久留美も、綾奈が来てくれる事が一番嬉しかった。
もちろん、家族や友達が来てくれる事も嬉しかったが、
久留美の中での綾奈の存在は、家族や親しい友達を100人以上集めても、
遠く及ばないくらいに大きなものだった。
今の久留美にとって、綾奈は、世界で一番大好きな存在だった。
そう、まだ恋人がいない久留美にとっては・・・

久留美「私も彼氏欲しいな・・・」

それは、夏休みが終わって間もない9月の日曜日の事だった。
いつものように綾奈は、久留美の世話をしに病院に来ていたが、
綾奈と2人きりになった時、久留美は、
ベッドから窓の遠くの景色を見つめて、ぼそっとそう言った。

久留美「綾奈と翔矢には相手がいるのに、私だけ・・・」
 綾奈「久留美が元気になったら、すぐに彼氏なんて出来るよ。」
久留美「まぁね。私がその気になったら、
    ジャニーズ系の中レベルくらいならコロコロ落とす自信はあるけどさ。」


綾奈は、苦笑いしながら、ちょっとだけ安心した。
けれども、久留美の憂鬱は、軽い冗談を言ったくらいでは晴れなかった。

久留美「でも・・・今のままじゃ、男は寄って来ないよね・・・」
 綾奈「・・・・」
久留美「ねぇ、綾奈。綾奈が私の恋人になってよ。」
 綾奈「へ?」

あまりの衝撃的な一言に、綾奈は、思わず声が裏返った。

 綾奈「な、何言ってるの? 私女だよ?」
久留美「いいじゃない、女同士で恋人になったって。」
 綾奈「でも、それってレズとかって言うんじゃないの?」
久留美「あれ? 綾奈そんな言葉知ってるんだ? どこで覚えたの?」
 綾奈「・・・・」
久留美「でも、それでもいいよ。今、一番好きな人を探したら、
    私は、世界で一番綾奈が好きだし。」


すると久留美はベッドに綾奈を誘った。
もっともそれはいつもの事、ベッドに綾奈と久留美が一緒に寝る事はよくある。
綾奈は、誘われるままベッドに入り、
お互い、内向きになって見つめ合った。

 綾奈「でも、女の子同士で恋人って何をすればいいの?」
久留美「普通デートでしょ? 私はキホン(基本)病院を出られないけど、
    病院内とか一緒に歩いたりとか・・・」

 綾奈「それなら、いつもやってるじゃない。」
久留美「あと、キスとか。」
 綾奈「え? 女の子同士で?」
久留美「私とキスするの嫌?」
 綾奈「嫌とかそういう問題じゃなくて・・・」

ありえない。嫌じゃないけど、ありえない。
とにかく綾奈はそう思った。
けれども、久留美のためなら、出来ない事ではなかった・・・

久留美「嫌じゃないならしてみよ。」
 綾奈「ど、どうすんの?」
久留美「どうするのはないでしょ?
    綾奈は経験者じゃない。そしたら綾奈からするのに決まってるでしょ。」

 綾奈「自分からした事なんてないよ・・・」
久留美「あ、綾奈とお兄ちゃんのキスって、そんな感じなんだ?」

久留美が、嬉しそうにいやらしく笑った。
そりゃ、ほっぺにするチュウは自分からした事あるけど、
口付けの時は・・・と、綾奈は弁解したかったが、してもしょうがない。
綾奈は、押し黙って渋い顔をした。

久留美「とにかく、綾奈が経験者なんだから。」

そう言うと、久留美は、自分と綾奈の頭に布団をかけてすっぽり隠した。
もう、なるようになるしかなかった。
意を決した綾奈は、静かに目を閉じ待っている久留美に、
軽くチュ!と口付けをした。
だが、それに久留美は拍子抜けしてしまった。

久留美「駄目だよ綾奈。それじゃなんにもわかんない!」

すると久留美は、綾奈を強引に抱き寄せ、
今度は、自分から綾奈に口付けをした。
しかも、軽く一瞬ではなく、そのまましばらく口唇を離さなかった。
綾奈は、全身が凍りつき戸惑いながらも、
目を閉じ、全てを久留美に任せた。
もう何も考えられない。頭が真っ白なままの時間が長く過ぎたような気がした。
やがて、久留美が口唇を離すと、
力を溜め込むように、ぐぅーっと体を頭から丸めて縮め、
それを一気に開放するように言った。

久留美「きっっっっもちいい〜〜〜!!!!」
 
確かに、綾奈も悪い気はしなかった。
むしろ・・・

久留美「これがお兄ちゃんのものかぁ。」
 綾奈「なにそれ?」
久留美「今まで、お兄ちゃんの独り占めだったかと思うと、
    何か、許せなくなるね。」

 綾奈「・・・・」
久留美「ねぇ、綾奈! もう1回しよ!!」
 綾奈「え〜〜〜!!!」

それから久留美は、布団をかぶったまま、
綾奈に何回も何回もキスをした。

久留美「やっぱり、綾奈は私の恋人になってね。
    またキスしようね。」

    
キスを終えた後、久留美は嬉しそうにそう言った。
実際、さっきまであった久留美の憂鬱は、完全に吹き飛んでいた。

綾奈にしてみれば不思議な感覚だった。
輝明、久留美、翔矢の兄弟みんなに好かれ、
輝明と久留美とは、恋人として付き合う事になったのだ。
そして、3人とはキスもした。
みんな違うはずなのに、みんな同じにも思えるキス。
綾奈は、久留美とキスをしている時、
輝明と翔矢とのキスを思い出していた。

綾奈(私も、みんな好きなんだよね・・・)

好きな人に好かれるのは、最高に気持ちいい事。
だから、好きな人する事も全部気持ちよかった。
キスは、一方的に好きなだけではなく、好かれている事の証。
だから、3人とのキスは、そういう意味で
綾奈にとってそれぞれ気持ちいいものだった。
綾奈にとって今日は、それを確認する1日となった。


そんな事があってから、
久留美の病状は、それまで以上に快方に向かっていった。
担当医でさえ驚くほどの回復を見せ、
やがて、外泊許可まで取れるようになっていた。
そこで久留美は、ある重要な日にあわせて外泊許可を取った。
それは、11月18日。綾奈の誕生日だった。

第9話

綾奈が、翔矢に彼女が出来たと知ったのは、夏休みに入ってからだった。
しかも翔矢は、同じ中学校ではなく、別の中学校の女子と付き合っていた。
名前は奈津美。綾奈が全く知らない人だった。
翔矢も、その彼女を家に連れてくる事もなく、
久留美が紹介してと催促しても「そのうちな」とはぐらかしていた。
ただ、別に隠していたわけでもなかった。
綾奈にはあまり見られたくない思いはあったが、
それ以上に、みんなに対して後ろめたい思いがあった・・・

奈津美は、綾奈とは正反対の性格だった。
アクティブ且つ陽気で、誰とでも気軽に話せ、
常に主導権を持っていくようなタイプ。
その辺は、久留美と似ていた。
夏休みを前に、小学校時代から付き合っていた彼氏と別れたばかりで、
新たな出会いを求めていたらしい。
その奈津美の知り合いに、翔矢の友達がいて、
その友達に翔矢が彼女を探していると相談したところ、
紹介されたのが奈津美だった。

奈津美「よろしく。」

付き合う事が決まって笑顔でそう言われた時、
翔矢は、ものすごくバツが悪かった。
綾奈を忘れるため・・・それが動機だったからだ。
奈津美も、とりあえず付き合ってみるといった軽い気持ちだっただろう。
けれども、別に好きな人がいるのに付き合う・・・
こんなに相手を侮辱するふざけた話は無い。

翔矢(最低なまんまだな・・・)

何かを変えるつもりで始めた事なのに、
何も変わってない事を思い知らされ、翔矢は愕然とした。
そして、だからこそ綾奈や久留美になんて紹介出来なかった。
こんな事の巻き添えにしたくなかったのだ。

けれども、そういう時ほど、不幸の神様が自分に降りてくるものだ。
夏休みのある日。その日は部活も休みで、
翔矢は、奈津美と一緒に電車で遠出をしていた。
地元を避けるのは、特に綾奈には見られたくないため。
なのに、その日は、偶然にも綾奈も輝明と一緒にデートに出ていて、
出掛け先で、バッタリと出会ってしまったのである。

 輝明「よぉ、翔矢もデートか?」
奈津美「あ、この人、翔矢君のお兄さん? それと彼女?」

輝明と奈津美が会うのはこれが初めてだったが、
お互いの性格が合ったのか、すぐに親しく話していた。
けれども、翔矢と綾奈はぎこちなく、
互いを意識しすぎで、目すら逸らすような有様だった。

綾奈(この人が、翔君の彼女・・・)

綾奈は、奈津美を見た時、ちょっとした劣等感を覚えた。
私なんかより、ぜんぜん綺麗だし、おしゃれだし、明るいし・・・
私なんかより、ずっと翔君の彼女に相応しい・・・
輝明と話す奈津美の姿を見て、そう思ってしまった。

奈津美「じゃあ、また会おうね。」
 輝明「ああ、今度うちに遊びに来いよ。」

話したのは1〜2分くらいだ。
それからお互い、逆方向の道を歩いていった。
翔矢は、この時の不運を恨んだ。

翔矢(よりによって兄貴といる時に・・・
  よりによって奈津美といる時に何で・・・)


翔矢は、絶望しそうになる自分をごまかすので精一杯になった。


そのデートの帰り。電車から降りてしばらく歩き、
誰もいない2人きりの場所に来ると、奈津美が言った。

奈津美「ねぇ、キスしようか。」

それは、翔矢が今まで避けてきた事だった。
キスをすれば、取り返しがつかなくなるような気がしたからだ。
最低の自分が奈津美にバレた時、
キスをしていなければ、自分が最低な人間になり下がるだけで済む。
でも、キスをしたら、それだけでは済まなくなる・・・そんな気がした。
ただ、キスをしなかった理由はそれだけではなかった。

奈津美「私たち、付き合ってるのに、まだした事ないよね。」

そういう機会は、今までにも何度かあった。
でも、キスを意識する度、翔矢の脳裏と口唇には、
綾奈から口唇を奪った時の光景とあの感触がよみがえるのだった。
思えば、まだ付き合ってもいなかったのに、
一方的に綾奈の口唇を奪ったのは最低だった。
けれども・・・あのファーストキスは後悔していなかった。
それどころか、最初が綾奈で良かった・・・
翔矢は、今でもそう思っていた。
だが、奈津美とキスをしてしまったら、
その全てが否定されるような気がして、何か嫌だったのだ。
そして、奈津美とキスをしたら、
意識しなくても、綾奈のキスと比べてしまうだろう。
そういう事をしている自分を想像すると、それも嫌だった。
けれども・・・

奈津美「それとも、私とキスするのは嫌?」
 翔矢「そ、そんな事はないよ・・・」
奈津美「そうだよね。一応好きだから付き合ってるんだもんね。」

・・・そうだ。嫌いなら付き合わない。
それなりに奈津美に対する思いがあったから、ここまで来た。
それは嘘ではなかった。
だけど・・・だからと言って、釈然としない思いは残る。
そうやって翔矢が渋っていると、しびれを切らした奈津美が言った。

奈津美「もう、しょうがないな・・・」
 翔矢「え・・・」

次の瞬間、不意をついて、奈津美から翔矢にキスをした。
翔矢は、その場に立ち尽くし、奈津美が口唇を離すまで何も出来なかった。

奈津美「翔矢君って、結構オクテなんだね。
    でも、そういうところ嫌いじゃないな。」


そう言って奈津美は笑った。
とうとうキスをしてしまった。
だけど・・・ぜんぜん気持ちよくなかった。
それどころか、何か悔しかった。
正体不明の敗北感が、翔矢の全身を襲った。
奈津美に対しての怒りはなかったけれど、
自分に対する怒りがフツフツとわきあがってきた。

翔矢(最低だ俺・・・本当に最低だ!・・・)

奈津美と別れた後、
翔矢は、行き場のない怒りで、
アスファルトを右足で思いっきり踏み付けた。
その瞬間、右足にジン!と痛みが走って、やがて消えた。

翔矢(利き足じゃん・・・俺、サッカー部なのに・・・)

翔矢は、やる事なす事の全てが駄目に思えて、
ものすごく駄目人間な自分をひたすら心の中で責め続けた。

その日は、13年間生きてきた翔矢にとって、
人生で一番の最悪な日となった・・・

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