"やいたもん"の文学館

大きな人生の転機がありました・・・

十三時代〜とさみち〜(完結)

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少年少女の13歳の物語です
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第8話

家に帰った輝明と綾奈は、輝明の家の庭で花火を始めた。
浴衣姿で花火にはしゃぐ綾奈。
そんな綾奈に、輝明はまたカメラを構えていた。

綾奈「写真ばっかり撮ってないで、輝君も花火しようよ。」
輝明「そんな事より、キス写真撮ろうよ。」
綾奈「・・・・」

そして輝明と綾奈は、
頬を寄せ合ってアップでパシャ!
綾奈が輝明のホッペにチュでパシャ!
輝明が綾奈のホッペにチュでパシャ!
おでこをくっつけて、見つめ合う2人の横顔をパシャ!
それから最後に口唇を重ねて横顔をパシャ!
・・・と、立て続けに写真を撮った。

綾奈「何か恥ずかしい・・・」

撮った写真を画像で確認してそう言ったが、
撮っている時は、思った以上に楽しかった。
キスしてる自分なんて、中学生になるまでは考えられなかったけれど、
それを今、当たり前のようにして楽しんでいる。
綾奈は、自分の中で世界観が確実に変わっている事を実感すると共に、
それ以前の自分が、とても幼く思えた。

花火が終わると、2人は風呂に入って着替える事にした。
もちろん、別々に。ただ、綾奈は、輝明の家の風呂を借りた。
先に綾奈が入り、あとから輝明が入った。
綾奈が、汗をさっぱり流すと、
パジャマ代わりのジャージに着替えて輝明の部屋に入った。

綾奈「お風呂空いたよ。」
輝明「分かった。じゃあ、俺も行って来るわ。」

綾奈は、輝明が風呂を終えるまで、輝明の部屋で待つ事にした。
何気なくテレビを見ていたが、気になるのは輝明のベッドだった。

綾奈(一緒に寝るんだよね・・・)

それは、幼馴染みとしては初めての事ではなかったが、
付き合い始めてからは初めての事だ。

綾奈(やっぱり、違うんだろうな・・・)

綾奈がそんな事を考えていた時だった。
テレビのチャンネルは、バラエティ番組に合わせていたが、
そこで、あるお笑い芸人がこう言ったのである。

芸人「健康的な男だったら、エロ本やビデオのひとつふたつ、
   自分の部屋のベッドに隠し持ってますよ!!」


その言葉が、妙に強く綾奈の印象に残った。

綾奈(輝君も・・・まさかね・・・)

そう思いながらも、綾奈は、輝明のベッドの下を覗いていた。
すると・・・「あれ?」と思う影が見えた。
まさかまさかと思いつつも、綾奈は、その影に手を伸ばした。

綾奈「・・・あった・・・」

それは、明らかにエロ本と分かる雑誌が2冊と、
ラベルが何も貼られていないビデオテープが2本だった。
綾奈は、おもむろにその1冊をぺらぺらとめくってみた。
どんな形態であろうと、女の人が裸で写っていればエッチなもの・・・
そんな認識だった綾奈にとって、
雑誌に載っていた女性たちは、ありえない想像を絶する格好をしていた。

綾奈(輝君だって男の子だもん・・・でも・・・)

その時だった。突然、部屋のドアが開いた。
風呂を上がった輝明が部屋に戻ってきたのである。
エロ雑誌を見ている姿で輝明と鉢合わせ。
綾奈は、雑誌に夢中で、輝明が近付いてくる足音に全く気付かなかった。
綾奈は、慌てて雑誌やビデオをしまおうとした。

綾奈「ご、ごめんなさい・・・」

謝るしか出来なかった綾奈だったが、
輝明は、動揺を隠しながら綾奈を通り過ぎ、
いつもの感じでこう言った。

輝明「綾奈、俺の事軽蔑した?」
綾奈「け、軽蔑なんてしないよ・・・」

それは嘘ではなかった。
衝撃が大きかっただけ。綾奈にとっては、ただただそれだけだった。

輝明「綾奈は、そういうの見た事ないの?」
綾奈「うん・・・無い・・・」
輝明「じゃあ、一緒に見ようか?」
綾奈「え?」

すると輝明は、ビデオテープのひとつを取り、
それをデッキにセットした。
綾奈は、戸惑いながらも、輝明のする事をただ見守るしか出来なかった。
そして輝明は、ビデオを再生した。
その映像を見ながら、綾奈は、
事ある毎に息を呑み、うめき声を上げ、体をビクつかせた。
それは、綾奈が初めて見る本物のセックスの映像であった。
輝明は、自分でも「何やってんだろう」と思いながらも、
その映像を見て反応する綾奈の姿を後ろから見守っていた。
もしかしたら、これで綾奈に軽蔑されるかも知れないと思いつつも、
中3の男として抱く思いを、綾奈に理解して欲しいとも願っていた。

約30〜40分程度の映像が終わると、輝明は綾奈に感想を聞いた。
しかし、綾奈は何も答えられなかった。
けれども、映像を見ていて、綾奈には、どうしても聞きたい事があった。
綾奈は、輝明に視線を向けないまま言った。

綾奈「ねぇ、輝君・・・」
輝明「・・・なに?」
綾奈「輝君は、ああいう事したいの?」

輝明は、一瞬答えに詰まったが、
ここは嘘をつかず、正直に話そうと口を開いた。

輝明「したい・・・綾奈としたい・・・」
綾奈「・・・今は・・・無理だよ・・・」
輝明「う、うん、分かってる・・・」

ちょっとだけ期待する気持ちもあったが、
綾奈の言葉で、輝明の中にあったある意味のもやもや感は、逆に吹っ切れた。
ただ、輝明は、その時とっさに思った事を口にした。

輝明「なぁ、綾奈。」
綾奈「・・・なに?」
輝明「今は・・・あれだけど、もし、俺が高校に合格したら・・・
   こういう事してもいいか?」

綾奈「・・・・」

綾奈は、表情も変えず何も答えなかったが、
その瞬間、最大級の雷撃が綾奈の全身を貫いていた。
でも・・・これはいつかは経験しなければならない事。
しなければ、子供が出来ない事も知っていた。
ならば、最初は好きな人と・・・
そう思うと、それを拒む理由は見つからなかったし、
恋人として、その期待に応えたいという気持ちもあった。
綾奈は、少し長い沈黙のあと、輝明に言った。

綾奈「・・・分かった。輝君が高校生になったら・・・」
輝明「・・・ありがとう・・・」

これでこの一件は、とりあえず落着した。
綾奈は、重い約束を背負ってしまったと、約束をした後でちょっと後悔した。
でも、後悔したのは、輝明が嫌だったからではない。
輝明が高校生になるのは約1年後。
それでは、ちょっと早すぎるかなと思ったのだ。
そして、そんな約束をした瞬間、
綾奈は、不思議な感覚に襲われていた。
脳裏に母親の顔が浮かんだのだ。
その顔は、悲しそうにも怒っているようにも見えた。
そんな母に、綾奈も後ろめたい思いを抱いていた。

綾奈(ごめんね・・・お母さん・・・)

その夜、綾奈は、輝明のベッドで輝明と一緒に寝た。
綾奈が、輝明に背中を向けると、輝明は、その綾奈の背中を抱きしめて言った。

輝明「俺、綾奈の背中が好きだ。」

そして、2人はそのまま眠りについたのだった。

第7話

夏休みに入り、7月最後の週末には、地元で夏祭りが予定されていた。
花火に神輿に盆踊り、一通り揃った地元では最大の祭りだ。
そして祭りは、親の縛りが強い少年少女たちにとっては、
堂々と夜歩きが出来るイベントでもある。
そんな少年少女たちは、友達や彼氏彼女と約束をして
夜の街へと繰り出していくそんな日。
そんな少年少女の中に、輝明と綾奈の姿もあった。

綾奈は、夏を前に浴衣を新調していた。
それも久留美と一緒に。
久留美は外出出来なかったが、
久留美のいる病室からは、
祭りの最大のイベントである打ち上げ花火がよく見えた。
そこで綾奈は、夕方くらいから輝明と一緒に祭りの夜店を歩き、
祭りといえばこれ!!・・・ってな食料や雑貨を仕入れて、
輝明と一緒に久留美の病室に行き、3人で花火を見る事にしていた。
ただ、今日の最大のイベントはそれだけではなかった。
実は今夜、綾奈の両親と輝明たちの両親が、
近くの温泉地に一泊二日で外泊していたのである。
お隣同士で仲の良い神戸家と松下家では、時々そういう事があったが、
お互いの両親の都合の良い日が今日だったのだ。
だから、輝明は言った。

輝明「今日は、俺んちに泊まりに来いよ。」

綾奈が輝明の家に泊まるのは、昔からよくあった事。
けれども、2人が付き合い始めてからは、これが初めてだった・・・


綾奈が、新調した浴衣姿で初めて輝明の前に現れた時、
輝明は、思わず絶句してしまった。
以前から、綾奈には和装が似合うとは言っていたが、
想像していた以上に、綺麗で可愛らしく見えた。
もちろん、綾奈自身が中学生になって綺麗になったという事もあったが、
綾奈が、恋人として、自分(輝明)に見てもらえるように意識して綺麗にしてきたかと思うと、
ものすごく愛らしく思えたのだ。

輝明「可愛いよ・・・」

輝明が、本気でテレながら言うと、
綾奈は「うん」と言って、はにかんで見せた。
その笑顔がまた、すごく可愛かった。

それから2人は、夕暮れの内から
神輿も盆踊りも始まっていない
歩行者天国と化した街の通りを歩きながら夜店を見て回った。
まだ人通りもまばらで、祭りはこれからという雰囲気。
輝明は、綾奈と手をつないで、祭りの前の雰囲気を楽しみたかったが、
久留美を待たせたくなかった綾奈は、
手をつなぎながらも、その手で輝明を引っ張るようにしてお好み焼きや綿飴などを買い、
そのまま病院に直行した。

病室では、久留美が浴衣に着替えて2人を迎えた。
綾奈は、買ってきたものを広げ、久留美と椅子を並べて窓際に陣取り、
部屋を真っ暗にして、夜空に光の花が咲くその瞬間を待った。
綾奈と久留美を前にしては、輝明もおまけみたいなものだ。
綾奈も花火が始まるまでは、輝明にいろいろ気を使っていたが、
花火が始まると、久留美と一緒に盛り上がって輝明はほとんどそっちのけ。
花火を楽しむ2人の間に、輝明が入り込む余地はほとんど無かった。
ただ、輝明は、こうなる事は分かっていた。
だから、カメラを持参していた。
今は、綾奈と久留美の2人の思い出を撮るために・・・

 輝明「おい、綾奈、久留美。こっち。」
久留美「イェ〜イ!」

パシャ! 満面の笑みを並べる2人。
すると綾奈が言った。

 綾奈「じゃあ、今度は私が輝君と久留美を撮ってあげるよ。」
久留美「何言ってんの? 今度は、綾奈とお兄ちゃんを私が撮る番だよ。」
 綾奈「ううん。今度は、輝君と久留美だよ。
    どうせ、そういうツーショットを滅多に撮ろうとしないんだから。」

久留美「・・・・」

そして今度は、輝明と久留美を並べて、綾奈が写真を撮った。
確かに、この2人で写真を撮るのは珍しい。
だから、輝明と久留美は、一緒に並んでカメラを構えられて
かなり気恥ずかしかった。
ただ、お互いが抱えていた思いは複雑だった。

久留美(お兄ちゃんとこんな風に写真を撮るの・・・これが最期になるかもね・・・) 

久留美は、いつだって自分の命の終わりを意識していた。
いつ死んでもおかしくない。もしかしたら今夜かも知れない。
もし、自分が死んだら、今日撮った写真を見て、輝明はどう思うだろうか?

久留美(お兄ちゃんも泣くのかな・・・想像出来ないけど・・・)

写真を撮られながら、久留美はそんな事まで考えていた。
ただ、輝明だって、兄として妹を思う不安をいつも抱えていた。

輝明(来年もこうやって花火が見られるかな・・・)

久留美が生まれた時から、当たり前のように傍にいた妹。
時に、うざったくなる時もあったくらい当たり前の存在だった久留美。
その久留美が、いつか消えてしまうかも知れないと思うと信じられなかった。
けれども、そういう未来があってもおかしくない現在(いま)。
そして、そうなった時、自分がどうなってしまうのか想像出来なかった。

輝明(泣くかな・・・格好悪いと思って泣けない薄情な兄貴になるのかな・・・)

でも、久留美の笑顔を見ると、心に余裕も出来るのだった。
どうせ考えてもしょうがないか・・・と。

そして、綾奈からカメラを受け取った輝明は、
再び、ファインダー越しに綾奈の笑顔を見た。
その瞬間、輝明のもうひとつの人格が現れ、
今夜の事を強く意識した。
綾奈と2人きりの夜。
段取りみたいなものは考えていた。
付き合い始めてまだ3ヶ月程度。そして、2人はまだ中学生。
恋人と言っても、相応に過ごそうとは思っていた。
けれども・・・
成り行き次第では、どうなるか分からない。
キスはしたい。一緒のベッドで寝るくらいの事はしたい。
だけど、そこまで行ってしまったら・・・
でも、そんな事をすれば綾奈が・・・
しかし・・・

輝明は、期待と不安の葛藤に駆られながら、
今夜、自分がどうなってしまうのか・・・全く自信を持てずにいた。

やがて花火が終わり、9時の病院の消灯時間を迎えて、
輝明と綾奈は、その帰り道がどんな未来の暗示となるかも分からないまま
そのすぐやってくる未来に向かって、一緒に帰途についたのだった。

第6話

綾奈たちは、1学期の期末テストを迎えていた。
けれども、翔矢との関係は、相変わらず修復されないままだった。
ただ、輝明との交際は順調で、カメラを持ってはあちこちに出掛け、
一緒にひとつのブログを作って、そこに写真をアップしたりもしていた。
1日の平均アクセス数が1000件を超える人気ブログだったりもする。
しかし、綾奈は、翔矢との関係修復を諦めていたわけではなかった。

定期テストの時期は、部活が休みになる。
もちろん、その時間を勉強に当てるためだ。
ただ、遊ぶ奴もいる。例えば翔矢だ。
翔矢は、期末テストで部活が休みになるその日から、
友達を家に呼んで遊ぶ約束をしていた。もちろん、野郎一色。
ところが・・・
翔矢は、さっさと家に帰って、友達が来るのを自分の部屋で待っていたが、
そこへ、いきなり綾奈が入ってきたのである。
その時、翔矢は、ベッドでゴロゴロしながらテレビを見ていたが、
綾奈の顔を見て、慌てて飛び起きた。

翔矢「な、何だよ綾奈!?」
綾奈「一緒に勉強しようと思って。」
翔矢「はぁ!?」
綾奈「小学校のテストとは違うんだから。
   真面目に勉強しないと、点数悪くなっちゃうよ。」


そう言って綾奈は、部屋のテーブルに、
スポーツバッグに入れて持ってきた勉強道具を広げ始めた。

翔矢「ちょっと待てよ! 勉強は自分の家でしろよ。
   俺は、これから友達が来て遊ぶんだから。」

綾奈「じゃあ、私も遊ぶ。それで、みんなが帰ったら一緒に勉強しよ。」
翔矢「はぁ!?」

わけが分からなかった。
とにかく翔矢は、綾奈を追い出そうとしたが、
そうこうしている内に、友達が遊びに来てしまった。
友達も、最初は綾奈がいてきょとんとしていたが、

綾奈「こんにちわ! 今日は私もまぜてね。」

・・・と、普段の綾奈からは考えられないほど積極的に話し掛けると、
そこは男、すぐに綾奈を歓迎した。
それからは、翔矢そっちのけで、
綾奈はゲームやパソコンなどで、翔矢の友達と遊びまくった。
綾奈は、もう正攻法で強行突破するしかないと考えていた。
だから今日は頑張っていた。

ただ、綾奈が何を考えているのか、翔矢には全く分からなかった。
しかし、ちょっとだけ嬉しくもあった。
こんな風に、綾奈と一緒に何かをやるのは久しぶりだ。
ここ1〜2ヶ月気まずかったのが嘘のように、
綾奈と翔矢は会話が出来ていた。

そして、楽しい時間はあっと言う間に過ぎ、
友達は、それぞれ家に帰っていった。

綾奈「じゃあ、次は勉強だね。」
翔矢「もう夕飯だぞ。」

すると綾奈は、勉強道具を入れてきたスポーツバッグから意外なものを取り出した。
「ジャーン!」と言って綾奈が出したもの。
それは、綾奈の手作りのお弁当だった。

綾奈「夕飯は、これ食べながら勉強しよ。」

用意周到な綾奈に、翔矢は唖然とするしかなかった。
そして、綾奈の弁当を食べながら、期末テストの勉強を始めた。
だが、翔矢は、勉強よりも
久しぶりの綾奈の手料理の味が懐かしくて仕方なかった。
綾奈は、普段は家の家事を手伝っていて、料理なんかも得意だった。
綾奈も料理好きで、新しいものを覚えては、
まず久留美と翔矢に味見をしてもらっていた。
そんな関係で、綾奈も翔矢の好みをよく知っていた。
その弁当には、翔矢が嫌いなものどころか、
好物ばかりが詰め込まれていた。

綾奈「分からないところがあったら言ってね。」

けれども・・・
翔矢には、なぜか怒りがこみ上げてきていた。
何で、こんなにご機嫌取りばかりするのか、
そう思うと、意味が分からなくて、
何だか馬鹿にされているような気持ちにもなって、
反発心ばかりが湧き上がるのだった。

翔矢(悪い事をしたのは、俺なんだぞ・・・)

自分を責めていたのは、綾奈だけではなかった。
翔矢も同じだったのである。

翔矢(そんなに幼馴染みって大事なのかよ。
  俺は、綾奈が兄貴と付き合ってるって分かっててあんな事したんだぞ。
  普通なら・・・それで全部終わりじゃん。今までの関係も全部・・・
  なのに、何で俺に近寄って来るんだよ・・・)


翔矢は、怯えるように疑心暗鬼に陥り、
そして、その一種の恐怖心は、どんどん怒りへと変わっていった。

翔矢(俺は・・・綾奈を好きって言ったんだぞ・・・)

次の瞬間、翔矢の体は、無意識に動き出していた。
突然、綾奈の手首を捕まえると、強引に綾奈を引っ張り、
綾奈をベッドに仰向けに押し倒すと、
翔矢は、綾奈の両腕を押さえ付けたまま、その上に馬乗りになった。
何の前触れもない翔矢の行動に、
綾奈はわけが分からず、強い力で押さえ付けられ全く動けず、
綾奈は、さすがに恐怖を覚えた。

綾奈「ど、どうしたの・・・」

少し震えた声で綾奈が聞くと、
翔矢は、怒りを押し殺したような重く低い声で綾奈に言った。

翔矢「綾奈は、俺なんかといて怖くないのかよ・・・」
綾奈「え・・・」
翔矢「綾奈は、こうなるって思わなかったのか?」
綾奈「・・・・」
翔矢「俺は、綾奈を好きだって言ったんだ。
   俺は男だぞ。好きな奴と2人きりになったら・・・
   こういう事だって考えてるんだ・・・」


だが、そう言っている翔矢の体は、わなわなと震えていた。

翔矢「俺は、こうなるのが嫌だった。
   綾奈も嫌だと思ったから・・・だから離れたんだ。
   俺は、綾奈が好きだから・・・」


翔矢の全ての言葉を聞いて、綾奈の目には涙が溢れていた。
それは、恐怖の涙でも、翔矢に対する怒りの涙でもなかった。
また、翔矢の気持ちを分かって上げられなかった、
自分を責める悔し涙だった。

綾奈(中学生になんて、ならなければ良かった・・・)

中学生にならなければ、輝明に告白される事もなかった。
翔矢だって、今まで通りの幼馴染みでいてくれただろう。
今まで通りで良かったのに・・・
でも、時は流れていく。この流れには逆らえない。
だったら・・・
綾奈は、静かに目を閉じて言った。

綾奈「だったら・・・いいよ。」
翔矢「・・・・」
綾奈「翔君が、私と一緒にいると男になっちゃうって言うなら、いいよ。」
翔矢「な!?」

綾奈は、全身を力を捨てて、その全てを翔矢に差し出した。
翔矢は、もう、少しも抵抗しなくなった綾奈を見て動揺した。

翔矢「ば、馬鹿な事言うなよ。」
綾奈「そうかも知れない・・・
   でも、もう嫌だよ。翔君とわだかまりを抱えたままでいるのは。
   だから、それで翔君の気持ちが晴れるなら・・・
   また、昔のように仲良くいられるなら・・・」


翔矢は愕然とした。

翔矢(俺は、綾奈に何を言わせてんだよ・・・)

すると翔矢は、綾奈を押さえ付けていた手を離し、
ベッドから離れて綾奈に背を向けた。

翔矢「・・・分かったよ。俺が悪かった。
   だから、もうそんな事言わないでくれ・・・」

綾奈「・・・・」
翔矢「もう、綾奈を困らせない。
   だから・・・今までの事・・・本当にごめん・・・」

綾奈「・・じゃあ、もう仲直りでいいの?」
翔矢「ああ・・・綾奈が、それで許してくれるなら・・・」

こうして2人は、お互いにあったわだかまりを解いた。
それから2人は、とりあえず今日の勉強はこれで打ち切り、
明日から一緒にちゃんと勉強をする事を約束した。
その時、輝明は、風呂に入っていた。
そして翔矢は、ある決意をした。

翔矢(綾奈以外の人を好きになろう・・・)

期末テストは、一緒に勉強した事もあって、
綾奈は学年2位、翔矢もクラスで5位の好成績を収めた。
そして、夏休みを前に翔矢は、
友達のコネを使ってフリーの女子を紹介してもらい、
その子と付き合う事にした。

第5話

翔矢と綾奈は、その翌日から気まずい空気になって、
何の用もないのに気軽に話し掛けるといった
昨日まで簡単に出来ていた事が出来なくなっていた。
お互い、そんな風になるつもりはなかったが、
顔を見ると、昨日の事を意識してしまって、
思考回路がショートしてしまうのだ。
けれども、綾奈は、何とか寄りを取り戻したいと思っていた。
なぜならば、5月には大きなイベントがあるからだ。
5月12日、その日は、翔矢と久留美の13歳の誕生日であった。
綾奈は、その日までには何とかしたかった。

ゴールデンウィーク前、久留美の病室を訪れた綾奈は、
輝明に告白され、付き合う事になった事を久留美に報告した。
それを聞いた久留美は、大笑いしていた。

久留美「お兄ちゃんが綾奈に? アッハッハッハ!!」

近日稀に見る大笑いだったが、
なぜ笑いわれたのか、綾奈には分からなかった。
それを久留美に聞いても、

久留美「私も分からないけど、なぁ〜んかおかしくて!」

・・・と、腹が痛い痛いと騒ぎながらしばらく笑い続けた。

久留美「でも、お兄ちゃんなんかでいいの?
    綾奈なら、もっと良い男捕まえられるのに。」

 綾奈「輝君カッコ悪いかな?」
久留美「ブ男じゃないけど、いい男だと思う?」
 綾奈「・・・・」

確かに・・・特別秀でた要素はないけれど・・・
綾奈は、結局、何も答えられなかった。

久留美「でも、綾奈がお兄ちゃんと結婚でもしたら、
    綾奈は、私のお義姉ちゃんになるね。
    そういう意味では歓迎するよ。」

 綾奈「そんな先の事まで考えてないよ・・・」

ただ、綾奈は、翔矢に告白された事だけは言わなかった。
言えなかったと言ったほうが正しいかも知れない。
久留美をあまり心配させたくなかったし、
翔矢の名誉とか、いろいろ考えても言えなかった。

 綾奈「ところで、今度の誕生日の事だけど・・・」
久留美あ、それはもう親と先生に話通してある。
    ここで3人だけで集まって、泊り込みで誕生会が出来るようにね。」


3人・・・とは、もちろん、綾奈、久留美、翔矢の事だ。
綾奈は、この時、翔矢との寄りを戻すべく完全に決意した。

ゴールデンウィークに入って、
綾奈は、久しぶりに翔矢の携帯に電話した。
非通知にされたり、番号見て無視されたらどうしようかと心配したが、
翔矢は、意外と早く電話に出た。

綾奈「あ、翔君?」
翔矢「何だよ?」

そっけない返事だったが、それはいつもの感じであり、
それを聞いた綾奈は、ちょっとだけほっとした。

綾奈「話があるんだけど・・・今度の誕生日の事だけど・・・」
翔矢「誕生日って俺の? ああ、その話だけど・・・」

すると、翔矢から思いがけない答えが返ってきた。

翔矢「今年は、俺、久留美のところには行かないから。
   何か、友達が盛大に祝ってくれるんで。
   だから、久留美の事は綾奈に頼むよ。」

綾奈「え? ちょ、ちょっと・・・」
翔矢「とにかく俺は友達とやるから。じゃ〜ね。」

そう言って、翔矢は、一方的に電話を切った。
綾奈は、慌てて今度はメールを打ったが、
返って来た答えは、今の翔矢の言葉を確認するものだった。

綾奈(私のせいだ・・・私が翔君を傷付けたから・・・)

綾奈は、自分を責めた。
今まで、必ず3人一緒に誕生日を祝ってきたのに、
今年になってそれが出来なくなったのは、自分のせいだ。
綾奈はそう思った。
翔矢を責める事は全く思わなかった。
そして、久留美になんて言えばいいか・・・
それを思うと、綾奈は、悲しくて涙が止まらなかった。

でも、伝えなければならない。

誕生日の前日の11日、綾奈は、電話で久留美に翔矢が当日来ないことを伝えた。
久留美なら、「あいつ勝手な事ばっかり言って・・・」と怒るかと思っていたが、

久留美「そう・・・」

・・・と力なく返事をして黙り込んでしまった。
がっかりさせたのも自分のせい・・・綾奈は、この時も自分を責めた。

そして、誕生日当日。
久留美の病室を小学校時代の同級生が大勢訪れ、
誕生会を始める前から、久留美の病室は、
お祝いの花とプレゼントでいっぱいになっていた。
けれども、久留美の心は晴れなかった。
みんなの前ではいっぱいの笑顔を見せていたが、
その夜、綾奈と2人きりになると、顔を曇らせ無口になった。

久留美「初めてだね。翔矢がいない誕生日って・・・」

綾奈は、一応、翔矢の分もプレゼントを用意した。
メールも改めて打った。
もしかしたら気が変わって来てくれるかも知れないからだ。
けれども、翔矢はやっぱり来なかった。

久留美「うらやましいな、友達と誕生会なんて。
    私も元気だったら、友達を家に泊まらせて、
    みんなに誕生日祝ってもらえるのに・・・」


そう言うと、気丈な久留美が綾奈の前で涙を見せた。

久留美「ごめんね、綾奈。泣くつもりはないんだけど・・・
    でも、何か止まらなくて・・・」


綾奈も泣いた。自分のせいでこんな事になって、
それを久留美に言えなくて・・・
とにかく、久留美に申し訳なくて泣いた。

その時だった。誰かが、久留美の病室をノックした。
久留美が、涙を拭いて返事をすると、入ってきたのは輝明だった。

輝明「あれ? 何で2人して泣いてるの?」

誕生日だから大騒ぎしてるだろうと思いきや、
お通夜みたいに泣いている2人を見て、輝明はきょとんとしてしまった。

久留美「な、何でお兄ちゃんが・・・」
 輝明「妹の誕生日を祝いに来たんじゃん。何か問題でも?」
久留美「問題はないけど・・・」

そして輝明は、泣いている綾奈に近づくと、
まるで父親みたいに、その頭を抱いて頭を撫でて笑った。

輝明「何で泣いてんだよ。誕生日なんだから笑えよ。」

でも、輝明の腕に抱かれて、綾奈の涙は益々止まらなくなった。
それを見た久留美は、何だか2人が微笑ましく見えて、
涙も枯れてしまっていた。

久留美(綾奈が幸せそうでうらやましい・・・)

結局、誕生会は、久留美を祝うというより、
綾奈と輝明の仲の良さを見せ付けるような場になってしまった。
でも、久留美はそれで良かった。
いや、それが何よりのプレゼントになった。
綾奈の幸せそうな顔が、久留美の心を癒したのだ。

 輝明「ところで、何で泣いてたの?」
久留美「私の誕生日だからに決まってるでしょ。
    綾奈は優しいから。」

 輝明「・・・そっか。綾奈は優しいんだな。」
久留美「そこにお兄ちゃんは惚れたんでしょぉ〜?」
 輝明「・・・・」

その翌日、輝明と久留美に元気をもらった綾奈は、
本人のいない翔矢の部屋にプレゼントとバースデイカードを置いた。
バースデイカードには、シンプルにこう書いた。

1日遅れだけど・・・
かけがえのない翔君、お誕生日おめでとう


それが、綾奈の偽らざる本心だった。

第4話

その翌日の事だった。
結局綾奈は、満足に眠る事が出来ず、朝から寝不足でぼうっとしたまま登校したが、
その日の中休み、翔矢が綾奈のところに来て言った。

翔矢「今日の放課後空いてる?」
綾奈「どうして?」
翔矢「いや、一緒に帰ろうかと思って。」
綾奈「部活休みなの?」

翔矢は、小学校の時と同じサッカー部に所属していた。
しかも、県内では実力校として知られる名門サッカー部だったため、
朝練があり、放課後も遅くまで練習があって、
登下校の時間は、綾奈や輝明とは完全にずれていた。

翔矢「いや、今日もみっちり練習あるよ。」
綾奈「あるんだったら帰り遅いじゃない。」
翔矢「だから、練習終わるまで待っててよ。」
綾奈「えっー! 嫌だよ・・・」
翔矢「たまにはいいじゃん。練習する俺の写真でも撮ってくれよ。」
綾奈「試合だったら撮ってあげてもいいけど・・・」
翔矢「練習でもいいじゃん。別に撮りたくなきゃ撮らないで構わないけど、
   とにかく、終わるまで待っててくれよ。」


翔矢は、長年の付き合いで、
綾奈が、とことん頼まれると断れない性格である事を知っていた。
綾奈も、今日は輝明との約束もなく、特に用事はなかったので、
結局、翔矢の部活を最後まで見ていく事にした。

放課後、綾奈は、一旦家に帰ってから、
体操着ではない自前のジャージに着替えて、カメラを持って学校に戻ってきた。
すでにサッカー部の練習は始まっていて、
先輩たちがシュートやドリブルの練習をする周りを
翔矢たち1年生は、何周も走らされていた。

綾奈は、そのグラウンドの隅、芝生のあるところに腰を下ろし、
しばらくぼうっとその光景を眺めていた。

綾奈「そういえば寝不足だった・・・」

今日は、優しい風もあって涼しく、
芝生の上で、心地良い睡魔に襲われそうになった。

綾奈(うちに帰って寝たいな・・・)

やがて、翔矢もシュートやドリブル練習に参加した。
小学校では、バリバリのレギュラーだった事もあって、
その姿は、素人の綾奈が見てもはっきりと分かると、
他の1年生たちと比べて様になっていた。

綾奈(こうして見ると、翔君も結構カッコいいんだよね・・・)

綾奈は、ちょっとだけカメラを構えた。
そして、綾奈は気付かなかったが、そんな姿がサッカー部の先輩の目に留まった。

先輩「あれ、神戸の兄貴の彼女じゃねぇの?」

先輩が翔矢に言った。
昨日の事を知らない翔矢は言った。

翔矢「彼女じゃないっすよ。」
先輩「でも、お前とは幼馴染だよな? 結構可愛いじゃん。」
翔矢「そうっすか? まあ、ブサイクではないとは思いますけど。」

だが、そう言った翔矢の顔は、まんざらでもなかった。
翔矢からも、時々、カメラを構える綾奈の姿が見えた。
撮られていることを意識した翔矢は、今日の練習をいつも以上に張り切っていた。

練習が終わったのは、午後6時だった。
学校には照明設備もあり、昔はもっと遅くまで練習していたらしいが、
最近は、物騒な事件が多いせいか、
学校の方針で、どんなに遅くても6時には終えるように決められていたのだ。
綾奈は、部活が終えたのを確認すると、
校門の方に移動して、そこで翔矢が来るのを待った。
だが、後片付けは翔矢たち1年生の仕事。
先輩たちが先に帰った後、翔矢たちが出てきたのは、
部活が終わってから30分くらい経ってからだった。

翔矢「よ! 綾奈。」
綾奈「遅いよ〜」

すると、翔矢の周りにいたサッカー部の仲間が、
翔矢と綾奈の事を冷やかした。

仲間「あれ、松下(綾奈)って、翔矢の兄貴の彼女だと思ってたけど、
   翔矢と出来てたの?」

綾奈「ち、違うよぉ。私と翔君は、そんな関係じゃないもん。」
仲間「あれれぇ、図星だったかな? じゃ、俺たちは邪魔みたいだから。」
綾奈「違うってば!」

誤解がとけてからかわれたのか、誤解がとけなかったのか、
分からないまま、友達は帰っていった。

翔矢「なあ、綾奈。真っ直ぐ帰るのもつまらないから、ちょっと寄り道していこうぜ。」
綾奈「えーっ、もう7時近くだよ。遅くなったら、お父さんに怒られる・・・」
翔矢「大丈夫だよ、部活だって言えば。寄り道するって言っても、いつもの公園だから。」
綾奈「もー、勝手なんだから・・・」

いつもの公園とは、綾奈たちの家のすぐ近くにある、
ブランコやジャングルジムなどの遊具設備を揃えた、どこにでもある公園だった。
ただ、幼い頃は、よく遊んでいた公園で、
綾奈には、輝明、久留美、翔矢との思い出がたくさんある公園だった。

翔矢「少し遊んでいこう。」
綾奈「あれだけ激しい練習したのに疲れてないの?」
翔矢「疲れってけど、遊びの体力はまた別だ。」

ただ、ジャングルジムや滑り台は、
もう翔矢や綾奈にとっては、小さいものになっていた。
幼い頃は、綾奈は、ジャングルジムが高くて怖かったのに・・・

綾奈「懐かしいけど、もう昔みたいには遊べないね。」
翔矢「そうだな。遊べるのは、ブランコくらいかな?」

2人は、ブランコに乗っていた。
綾奈は、最初はゆっくり揺れていたが、
翔矢が立ち漕ぎを始めると、それを見て綾奈もブランコに立った。

翔矢「昔は、よく遊んだな。」
綾奈「そうだね、私と翔君と久留美の3人で。今は2人だけど・・・」
翔矢「早く久留美も退院出来るといいな。」
綾奈「翔君がそんな事言うの珍しいね。」
翔矢「綾奈がさみしそうに言うから、言っただけだよ。」
綾奈「・・・・」

やがて、翔矢がブランコを降りた。
帰るのかと思い、綾奈もブランコを降りた。
しかし、それは突然やってきた。
綾奈がブランコを降りると、いきなり翔矢がその背中を抱きしめてきた。
突然の事に、綾奈は昨日と全く同じに頭が真っ白になったが、
綾奈が抵抗しようとすると、翔矢は、さらに強く抱きしめて言った。

翔矢「俺、綾奈が好きなんだ。」
綾奈「え・・・」
翔矢「今日、そのつもりでここに来た。」

綾奈は、まさかと思った。
翔矢に告白された事自体もそうだが、
昨日、輝明に告白されたばかりなのに、
今日は、弟の翔矢に告白されたのだ。
ありえない・・・それが綾奈の素直な気持ちだった。
けれども、翔矢の気持ちには応えられなかった。
だって、昨日輝明と付き合う事を決めたばかりなのだ。
応えられるわけがない。
しかし、どうそれを伝えればいいか、
綾奈には、全く分からなかった。

ただ・・・

それとは別に綾奈は、妙な感覚に襲われていた。
部活を終えたばかりの翔矢の汗臭い体。
けれども、ぜんぜん嫌な感じはしなかった。
翔矢が一生懸命練習して出た汗だと知っていたからだ。
そして・・・

綾奈(兄弟だからかな・・・輝君と同じ感じがする・・・)

綾奈は、いつしか翔矢と輝明をだぶらせて、
輝明に抱きしめられているような感覚になっていたのだ。
さらに綾奈は、翔矢の体が鍛えられてたくましくなっている事に気付いた。

綾奈(少し前までは背の高さも同じだったのに、いつの間にか大きくなって、
  久留美が入院するまでは、喧嘩も久留美の方が強かったのに・・・
  やっぱり男の子だなぁ。本気になったら、元気な久留美でも勝てないだろうな・・・)


そう思うと、今告白された事も忘れて、綾奈は、何だか嬉しい気持ちにもなっていた。
けれども、やっぱり正直に言わなければならない。
綾奈は、背中を翔矢に抱きしめられたまま言った。

綾奈「駄目だよ・・・私、好きな人がいる。」
翔矢「知ってる。兄貴だろう? 
   だから告白したんだ。綾奈が兄貴に告白する前に。」

綾奈「・・・もう遅いよ。」
翔矢「え?」
綾奈「昨日、輝君に告白された。」
翔矢「うそ?」

その瞬間、綾奈を抱きしめる力が緩んだ。
それを感じて、綾奈は翔矢の腕をおもむろにほどこうとしたが、
翔矢は、再び強く抱きしめて言った。

翔矢「だったら、俺は兄貴に勝ってやる!」

すると翔矢は、強引に綾奈を振り向かせ、いきなり、その口唇を奪った。
その瞬間、綾奈の全身を電気が貫き、
全身から力が抜け、腰砕けになるように、綾奈はブランコにへたり込んだ。
そして翔矢は、口唇を離した後、
何も言わずに綾奈の前を去っていった。

綾奈「そんなの・・・勝手だよ・・・」

綾奈の目には、自分でも正体の分からない涙が溢れ、
しばらく、そこを動く事が出来なかった・・・

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