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難波大助が父・作之進にあてた「長文の遺書」のつづきです。
母親の早死には何故ですか。
健亮や義兄(註、次兄・吉田義人)が
金持ちに売られたのは誰の御陰ですか。
(今時のものは女学校ぐらいへやらねば嫁の貰い手がない)
―こう考えられたあなたは、
安喜子(註、妹)を金持ちの家に嫁にやる資格をつけるために
、女学校へ入れられた。(略)
・・・もし正兄が強いてあなたに奨めなかったら、
私はあなたのために中学どころではなく、
小僧奉公にやられたでしょう。
あなたの口癖に言われた(倹約せよ、倹約せよ)から想像すれば、
わが一家は早晩破産すべきが当然であった。
―しかるに驚くべし!
あなたは一般金持ち家並みに代議士の候補に立たれた。
あなたはその時まで、私が信じていたような貧乏人ではなかった。
自分の名誉のためか―祖先の名誉のためか―
要するに名誉を買うために、
あなたは祖先伝来の財産を売ることも敢えて辞せられなかった」。
一切は判然した
「終生を通じての最も憎むべき敵」である
父の「専横と貪欲」を追及する大助の「遺書」は痛烈だ。
そして、大助の「遺書」はまだまだ続く。
(『虎ノ門事件と難波大助―天皇暗殺』岩田礼著、P272)
「一切は判然した。
――従順なる羊共は、あなたまたは先祖の名誉にすら価しなかった。
あなたに取っては生きておる子孫より、
死んでしまって土と化しておる祖先の方が大切であった。(略)・・・
従順なるものは
いつも専横にして貪欲なるものの犠牲に甘んじておる。
多くの兄弟姉妹の内から従順ならざる
―醜い利己心の犠牲となるを甘んぜざる―
反逆者が一人ぐらい出たからといって、今さら驚くにはあたらぬ。
世間のまぬけ共はいっておるであろう―
(あんなりっぱな家から、あんな極悪非道者!)
原因あれば結果あり、
―結果を遠くさかのぼれば原因あり。
誰がこの自然現象を否定するものぞ。
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