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朝早く
4階までの階段をトントンとリズムよく上がってくる
足音が聞こえてくる
きっと彼女だな
色白でほんの少しの山口県なまりを
時折披露してくれる小学3年男子児童のお母さん。
「きっつぅ〜おはようございます 悟空さん」 どうしました?何か良いことありましたか?
「昨日、実家から毎月送られてくる野菜の詰合せ段ボール箱が届いたんです」
素敵な親御さんですねぇ
「いえ、実家が農家ですから、
そんな大したものは入っていないのですけど。大根とか人参とか、
こちらでも買えるものばかりなんですけどね、
その野菜の中にいつも一冊、息子に本を入れてくるんです」
黙って頷きながら、それで?と目で先を促す
「今回、「おおきな木」が入っていました」
私は意表をつかれ、一瞬にして涙が出そうになるのを堪えながら
「どなたの翻訳のもの?」と短く聞きました
「村上春樹さんでした。それを伝えたくて朝から来ちゃいました」
それを聞いた途端、悟空はカウンターに置いてある
トイレットペーパーをむしり取り顔を覆ってしまいました。
流れる涙で、紙がとけてしまい汚ったないのなんの。
親御さんは遠く離れた孫を思い、娘を想い、
畑から、本屋さんへ走り、この本を選び
手塩にかけた野菜たちとともに詰めた。
そんな多くの大事な尊い時間が入った箱が
夜の高速道路をぶっとばして
山口からはるばる来たのでしょう。
あなたへの応援歌なんでしょうね
ようやっと震える声で言いました
親の愛はなんて大きく深いのでしょう。
ちょっと照れたように彼女は
「そんな大したものじゃ無いですよ」と言いました。
その笑顔は
とっても眩しくてキラキラしていました。
実は今日は少し低空飛行中でしたから元気になりましたよ
ありがとうございます
親として、与え続けられる人になりたいと
なれるように努力しようと心底思える、ほっこりなお話でした。
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ほっこりしたお話
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