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ぱっしょん・ぱっしょん・ぱっしょん。

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  西尾の章に入るまえに、前回の記事の最後の一行に、まず触れていきたい。

 勝又曰く「本当にソフトに勝ったのは、永瀬さんだけだと思う」という一言。
他にもソフトに勝った棋士は数名いる。だが、ここで言わなければならないことが一つある。ご存知の方も多いかもしれないが、私は知らなかった。何よりとても重要な事なので書いておく。それは、2014年の電王戦からルールの改正があり、対戦者=棋士に、その戦うソフトを事前に貸し出す。というルールだ。内容は以下の2つ。本文通り。
 
  ①使用するハードを統一する。それによって、コンピューターを何台もつなぐこと
   はできなくなった。要は単純なプログラム勝負にしようということだ。
  ②出場棋士へのソフトの事前提供が義務付けられた。さらに開発者はソフトを提供
   後、手を加えることができない。

 
 本来ならもっと早くに、この事実を書いておかねばならなかったが、最初の2名が、羽生、渡辺、と関わりない2人だったので省いた。
 
 「提供」と「提供後、手を加えることができない」。②のこの2点。どう考えても、どの角度から見ても、棋士側に有利な条件、と言わねばなるまい。ハッキリと「ハンデ」と言う者もいる。まともにやったら勝てません。と宣言しているようなものだ。
事実そうであろう。すると当然の疑問が浮かび上がってくる。
 私は、ここからはもう、将棋ではない、気がするのだ。
たかだか初段の私が、恐れず言わせてもらえば、本来、将棋は、本筋や新手を追及するもの。であるはずだ。現在そこにソフトという新しいツールが導入されて、棋士間では、常識になっている者もいる。そこに口を挟むつもりはない。時代と文化はある。当然、「勝負」という括りで見れば、相手の弱点を狙うのは常道だ。しかし、腑に落ちない感覚を覚えるのは、私だけではないだろう。敢て、天才達に申したい。機械のバグを探すことは、棋士の仕事ではない。美しい棋譜を残すことだ。

 この事実を加味しても、次に行われた第3回電王戦は1勝4敗。輝く星は豊島七段のもので、勝利後のインタビューを今も決して忘れない。本番まで1000番の稽古をした。というものだ。驚かれた方も多かったのではないだろうか。さすが豊島、やっぱモノが違うわ。と当時は思ったものである。早く本来の才を開花させ、爆発を期待したい。このままくすぶってもらっては困る存在である。実際、ライバルであった天彦は「名人」になった。
 っと、話が逸れそうなので戻ります。つまり、参加出場した棋士には、怪物ソフトが手元に残るのだ。これは、大きい。実際、この事実を鑑みれば?思い当たる棋士が2・3名出てこないだろうか? そうそう、あの人とかあの人です。
 
 2015年の電王戦FINALで、第一局が斎藤慎太郎。第二局が永瀬拓矢。
勝又は以下を述べた。[水平線効果]は専門用語なので調べると、より具体的に理解できます。以下本文。pp.101-102

  斎藤君は普通に勝ったように見えるかもしれませんが、やはり事前貸し出しがな
  ければ違ったことは間違いありません。彼は実に巧妙で、評価関数の水平線効果
  を狙っているんです。まず穴熊に囲おうとする。プロの穴熊の勝率は6割を越えま
  す。穴熊に囲った瞬間に価値が高くなるので、ソフトは「やられたらいやだ」と
  ばかりに暴れてくる。それを想定していたんです。しかも途中で斎藤君が長考し
  ているのですが、これはわざと時間を使って、ソフトに先読みをさせている。
  人間が考えている間にソフトも読みますよね。ちょうど玉を穴熊に潜る直前の
  局面で、ソフトは潜られたらまずいと思うから、ますます暴れてしまう。
  これは典型的な水平線効果です。で、その無理攻めをきっちり受け止めて勝つ。
  ズバッとはまりました。

 第二局での永瀬の△2七角不成の方が何かと注目されるが、さすがの視点という他ない。穴熊に潜る直前に長考するのは変に映るが、何かを考えているのかも、と素人目に、そこまで見抜く人は、極僅かだろう。この一節は本書で印象に残る一つだ。

 その後、勝又本人は、後輩に後を託し自身の道を進んでいるようで、ソフトとのこれから、とか、棋士の存在意義は、とか、この本のお決まりの質問を受け終了する。
だがやはり最後には、人間との将棋が一番、という胸の内を述べている。
 やはり、言動と行動が一致しない人である。

  そしてソフトといったら、の代名詞の一人。西尾明の登場である。

 まず、東工大にストレートで入学、物理好き、学歴=知性、で冒頭は入っている。
否定はしないが、将棋が強いか?と問われれば、ほぼ全員が、弱い。と答えるであろう。米長の有名なセリフ(兄はバカだから東大へ行った、僕は天才だから棋士になった)。があるが、学歴が高くても仕事の出来ない人はゴマンといる。一般社会においては、一つの目安になるだろうが、将棋に学歴は関係ない。片上など最たる典型だ。
 今でこそソフトといったら、と言われているそうだが、以外にもコンピューターに興味を持ったのは遅いという、2007年のボナンザvs渡辺を見て少し興味を持ち始め、本格的に強くソフトを意識するようになったのは2012年だという、これは以外だ。2011年はそう強くは感じなかったそうだが、翌年には相当強くなっていて、これはヤバイ。と思ったそうで、ある棋士は、もう抜かれたな。という者もいたそうだ。

  西尾はハッキリと言った。現状トップ棋士よりソフトの方が強い。と。

 2012年から本格的にソフトに触れ始め、今や代名詞の一人だ。この辺は理系に強い人ならではだろう。そのソフトも使い方次第と述べ、認知科学。なんて言葉が出てくる。(認知科学については、アドラー辺りを読めば理解しやすいです)要は共感できるものは、理解も早い、先入観はあまりよろしくない。っといったところ。(もっと詳しく書けますが、ここは哲学・心理学の時間ではないので省きます)そして、西尾自身が使用しているソフトはフリーソフトの「エイプリー」という。そして各自各々が使用するソフトについては、自分が共感しやすいもの(この辺も認知科学に通じる)が良い。と、単に強いソフト(たとえばポナンザ、鬼攻めの棋風)ではなく、好きなものが良い。と述べる。自身の勉強にも多くソフトを導入して、懸案の局面や詰みまで、幅広く活用しているという。

 そして、その知識から電王戦の棋士側のアドバイザーになっている。
事前貸し出し、それに加え、プログラムや評価関数などの知識を持つ西尾が棋士側の味方になって、様々な対策を施すのだ。この様な事実があるから西尾=ソフト代名詞になっているのだ。

 それでは今日はこの辺で、西尾の後編については後日また。


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