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ぱっしょん・ぱっしょん・ぱっしょん。

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  なんというか、来るべき時が、来てしまいましたね。

 今、巷を賑わせているM九段、『不屈の棋士』の出版時期が、いかにギリギリのタイミングだったかが将棋ファンならずとも、容易に想像できる。ここではM九段の件については、深く触れない。他に詳しく書いている人もいるし、週刊誌のネタになるぐらいだ。私などの一個人が太刀打ちできるはずもなく、する気もない。
 
 M九段の棋士生命は、もう終わったも同然だからだ。
 たとえ公的に許されても、周りが許すはずがない。

 部屋に入る時・席につく時・終盤の一手争いの時・すれ違った時・一人になった時。

 認めれば、認めてしまえば、……。そのことが、瞬時に理解できたから、否定するしか道がなかったのだと思う。仮に、認めてその場で謝ったとしても、彼の生きる世界での状況が変わっていたか、と問われれば、そうは思わない。それほどの差はなかったと思わないだろうか。軽蔑と便乗した悪意、それらを周りの棋士から、対戦相手から、関係者から、これから先、一生向けられる。耐えられる人間がいるだろうか。
 今は、ただ、静かに経過を見守りたい。別にM九段を擁護しているわけではない。不正疑惑のことではなく、居並ぶお偉いさんを前にして、彼の立場になって問い詰められた時、もし自分がM九段だったら、同じ決断をしたかもしれない。という自分を完全に否定できないからだ。ワレオモウ・スルト・オナジカモ。という自分があるからだ。

 だが、罪は重い。今は事実ならば、という前提付きだが、白だと思っている人は、恐らくいないだろう。そして事実ならば、永遠に、汚点として将棋史に刻まれることになる。正味のところ、冷や汗を掻いた者もいるだろう。だがそれは彼だった。
 ソフトという怪物に、礼を見失った者として。

 それでも私は、人間の将棋はなくならない。と信じている。
 
 
  さて、少々長くなったが西尾の続きに入る。
 自身の研究にソフトは欠かせない、と言い切る西尾。研究会で感想戦はあまり好きではない、とまで言う。「ソフトを使って解析する方が精度の高い検討を行えるので」。端的に言えば、時間の無駄ということだ。それも立派な意見の一つといえる。個人の時間をどう使うか、はその人の生き方そのものだ。
 だが将棋は2人で行うゲームだ。半分は相手を尊重するのが、正しいといえるのではないだろうか。後は好き嫌い、相性の問題になる。

 2015年に行われた「電王戦ファイナル」では、棋士側のアドバイザーになった。
その仕事内容は凄まじい。「2ヶ月間、連日10時間以上5台のパソコンを動かしていて、外出中もスマートフォンで遠隔操作をしていたくらいです(笑)。とにかくデータを取り続けました。ただ私からは『こういう線型にしたほうがいい』とは言っていません。あくまで依頼があったものに協力するという姿勢です」。pp129-130.
 中でも村山慈明には相当手を貸したようで、村山の相手ソフトは「ポナンザ」
持ち時間5時間が本番の持ち時間だが、練習ではとてもじゃないができない。しかし、持ち時間が増えると、ソフトもそれだけ思考し、手が変わるのだという。それなら、ということで考え出したのは、ポナ対ポナ。それを5時間で100回とか対局させてデータを取ったそうだ。実際、それが実って有利な局面に誘導できる道は見つけていた。
 だが、ポナンザ開発者の山本一成 氏は20%の確率で自力思考するプログラムを組み込んでいて、本番ではその20%をポナが選び、村山は敗れた。
 
 ここで私は大いなる疑問を抱いた。将棋は平均で100手弱まで指す。100回の半分の50回、50回の20%は?そう考えると、作戦そのものが破綻している。本著や他の記事では「運が悪かった」などと言っているが、20%という数字は、運、という言葉で片づけられる数字ではない。むしろ、ある、と考える数字だ。村山対ポナ戦に関するこの種の類の言い訳は、言い訳にもならない暴論に思えた。

 後は、チェスに関する話が多い、1997年、ガリル・カスパロフが「ディープ・ブルー」に敗れたのは将棋ファンならずでも記憶にあるのではないだろうか。それだけ大々的なニュースになった。ついこの前、という感覚だが、もう20年近く時が経っている、あぁ〜無常。彼はそのチェスに関する論文(英文)を読み漁り、多くのチェスプレイヤとフェイスブックなとを利用して交流を深めているそうだ。ヒントをもらうこともたくさんあるという。

 後は、たいした話はなく、謙虚で自分の意見はあまり口にしていないが、一つドライな面があった。ニーズが全てを決めるので、棋士の存在意義もその範疇。将棋は文化、とかそんな言葉を簡単に口にする人は、仮にそうだとしても、知ってもらう努力をすべき。と、こんなところがあった。

  そして棋士の魅力は。の質問には、強さが一番。

  憧れの棋士は、山崎隆之八段。
 
 アドバイザーまで務めるソフト代名詞である西尾の憧れは、最も人間らしく、反骨心の塊のような独自性、棋譜に名が見える強烈な個性。私の一番好きな棋士であった。

 人間とは不思議なものである。

 

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