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ぱっしょん・ぱっしょん・ぱっしょん。

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NHK杯 康光光る!

ご覧になった方は、やっぱプロってすげ〜なぁ〜、と思っているのではないだろうか。
同じ「佐藤」対決。しかも新会長と名人、準決勝、これだけでも激アツ必死である。

 「将棋はそんなに簡単なものじゃない」

 そういって、ソフトに否定的な立場をとっている康光。新会長として将棋界を背負っていこうとする気合と覚悟、メラメラと燃えるような熱い魂が、そのまま駒に乗り移ったような、そんな素晴らしい将棋だった。この一局で、新会長を応援したい、そんな思いにさせてくれた。いや、させられた将棋だった。とかく▲1八銀は鮮烈だった。

 三手目、リアルタイムで見ていた私は、思わず声を大にして叫んだ。
「はぁ〜!角頭歩!!!」 やってくれたぜ、康光。見せてくれるじゃね〜かよ。
序盤から画面に釘付け必死である。
 天国か地獄か、それともどちらでもないか、そんなところにいるとされる米長は、しっかりとこの将棋を見ていたことであろう。新会長は、どうやらやってくれそうだ。
しかし冷静に見てみると、最近得意としている角交換向かい飛車の理には適っている。ふむふむ、なるほど、なるほど。

 だが、相手は名人である。駒を並べている最中、康光が「玉」を持つのに物凄く違和感を感じて見ていた。だがそこは序列。強いもの、勝ったものがエライ世界という単純で厳しい世界だ。どこの世界にも「肩書が人を変える」と言われる。一年間名人を務めた天彦は、三手目▲8六歩を受け、にわかに表情が曇った。「俺、名人だぞ、名人だぞ、ゴルアァァァぁ!」表情はあまり変わらないほうだが、四手目△8四歩を指す姿は、怒りに満ちていたように見えた。となると力戦調になるのが自然な流れ。
挑発的な一手は将棋の流れを決めた。激流必死である。

 ここで小話を。挑発と康光といえば、真っ先に浮かぶのが竜王戦での出来事だ。
ご存知の通り、将棋界は強い者が一番エライ世界。この序列を巡って過去に様々な盤外戦が繰り広げられてきたが、康光は若き竜王を目の前に、それをやってのけた。康光本人にすれば、意図的ではなかったのかもしれないが、タイトル戦慣れした康光がそんな無礼をするとも思えない。私は挑発と捉えている。
 それは昼食休憩を迎える時に起こった。確か第4局ぐらいだったと思う(正確ではない)通常、昼食のメニューを頼む際、タイトルを保持している者、つまりこの場合は渡辺が「先に注文する」のである。ところがその日に限って康光は年若き竜王を尻目に「自分が先に注文した」のである。その時の情景を記事で読んだが、当然渡辺は面白くなかったらしく、康光を睨みつけたが、康光は知らんぷりで下を向き、盤面を見つめていた。確かこんな感じの記事だった。
 いくら若年だろうが、憎かろうが、生意気だろうが、読み筋が合わなかろうが、etc、竜王は渡辺である。竜王戦である限り、いや序列一位である限り、相手が羽生だろうが優先されるのは渡辺でなければならない。ましてや永世称号も持つ棋士でウッカリとはとても思えないのである。
 もっとも、少しの気後れも遠慮もない相手に腹が立った、といったところが本音ではないだろうか。あるいは本気で揺さぶりを仕掛けたのかもしれない。
 その昔、康光はとある棋戦で米長とあたった。米長はご存知なんでもやる。米長は早くに現れ、下座に座り、当時タイトルを持っていた康光を待った。そこへ現れた康光は、下座に座る米長を見るやいなや、「先生、困ります」と言い続けて、小一時間のすったもんだのやりとりの末、米長に上座に座ってもらって、対局が始また。その将棋は米長が勝った。このことを老師は痛烈に批判していたのが忘れられない。「こんなみえみえの盤外戦にやられているようでは、お話にならないよ、康光君」こんな感じで書かれていた。
 
 見返すとエライ長い小話になってしまったが、とにかく康光という人は、「礼儀を重んじる一方で、挑発もする」ということを伝えたかった。若かった頃は礼儀正しく定跡形の正統派の将棋だったが、羽生に連敗を食らったことがキッカケで独自の棋風を開花させた。今の康光の将棋はひとつの完成形に見える。今だからこそ、その独自の将棋は強烈に輝いている。事実、これまで破った相手が凄い。増田、慎太郎、千田、そして天彦である。ソフトにはない血が確かに見える。これはこれで物凄く魅力的に映る。糸谷、山崎、(順位戦・・・何やってんだ!あんな見え見えのミス待ちに・・・)当然だがこの辺りにはもっと活躍してもらわなければ困るし、何よりファンとして面白くない。

 今日のNHK杯は冷静を取り戻した天彦が持前の丁寧な受けで長期戦になったが、将棋の内容は終始、康光がリードしていた。好守の切り替えの早さ、正確さ、そして何より指し手が語るほんとうの康光がたまらなかった。
 「名人?まだ一期でしょ?どれ、どんなもんかいっちょやったろうかいの〜」
 勢いと気合で盤面をリードし、冷静と正確さで完璧に勝った。
 康光流ここに在り。完勝のもう一つ上の完勝ぐらいの完勝。

 なんだか気持ち悪いぐらいベタ褒めの内容だが、本心なので仕方がない。何より今日の康光は凄くかっこよかった。指す姿、決断の速さ、気合、指し手、内容、結果。どこをとっても文句の付けようがない。相手の天彦にとっては、角頭歩でやられたと悔やむだろうが、さすがは名人、すごいなぁ〜と皆思っていると思う。恥じることなど何一つない。最後まで諦めない粘りとトッププロの技術、そして執念を存分に表現していた。

 だた、今日は新会長の日であった。佐藤康光ここに在り。
 こんな将棋が指せる人だ、きっとやってくれる、やってくれなければ困る。
 

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    押したり引いたり、指して参考になりましたねー。

    [ 棋楽 ]

    2017/3/13(月) 午前 9:10

    返信する
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    > 棋楽さん
    ええ、とても参考になりました。
    トッププロの底力を見せつけられて震えました。
    今更ですが、プロって凄いですね〜。

    [ teiru ]

    2017/3/14(火) 午後 1:26

    返信する

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