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ぱっしょん・ぱっしょん・ぱっしょん。

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その男 高橋道雄

 最近高橋九段の将棋を見ている。訳は色々ある、それが重なる、それが訳だ。
藤井九段の解説や雑談をユーチューブで見たり、羽生の昔の映像を見たり、んでもって一番印象深いのは「私は名人に成り損ねた人間ですから」と俯きながらいった姿。
全ては過去のことで、遠い昔を回想するような語り口と表情、(僕の全てはあそこにあった)と言わんばかりの口ぶりに思わず見入った。後はこの理由に周りの彼に対する反応を追っていけば、あ〜これは全棋士、それもトップが高橋の将棋を見てきたんだ、とわかる。米長・加藤らをストレートで破って防衛とか絶頂期は結構すごい。んで今日はまだ数局だが、高橋らしい、と唸るような将棋を見つけたので紹介したい。

 谷川がウサギなら高橋はカメ、誰もが疑わないだろう、これほど俗な例えがしっくりくる2人も逆に珍しい。そしてこの時ウサギはカメの恐ろしさを身をもって知った。このシリーズは3-1で高橋がタイトル奪取。谷川がはじめて後輩に抜かれた瞬間ともある。

1987年棋王戦第三局 58手目
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4筋で銀交換をした直後、後手の谷川は狙いの一手を指す。端から香を入手して4四から打つ狙い、対して高橋の次の一手は観戦記者中平邦彦によると「谷川には絶対指せない手」と記している。『棋士ライバル物語』強者たちの盤上盤外、参照。
 高橋は黙って4八に飛車を引いた。以下△9六歩に▲9八歩と受けた。中平は無条件の屈伏、と書き、屈伏を二回重ねた後に「これが高橋将棋の強さ」と述べている。
 プロにとってはそんなに指しにくい手らしい、だが高橋は「この手が一番粘れる」と忍んだ。非を認め、砦一個タダでやった、って感じだろうか?まぁ〜私の感覚などどうでもよいが、ともかくこの飛車引きを堺に谷川がおかしくなったらしく、形勢は高橋へと傾くわけだが、そこはプロ、そんなに簡単ではない。

 図から高橋が放った一手に驚愕しこれを書いているわけなのだが、さぁ〜果たして当てられる人はいますかな?まぁ〜難しいと思う。
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  30秒〜













  55秒〜  7.   8.   9.



 87手目 先手▲3九角  打てる?これ。

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打たれてみれば、なるほど納得できる理屈は見えてくる、が8四とか8二とかが自然で、もしこの角が空ぶったらそれでおしまいである。ギャンブルするには、にしてもこの角は打てない、まぁ〜すごい感覚だ。5七の銀を取ってしまえば話が早いということだが、それにしても、まだ6三歩成りとかのがわかる。谷川にしてみれば文字通り、一秒も読んでない手であったであろう。事実この二十手後に谷川は投了に追い込まれる。

 全盛期を知る人ならタイトル獲得数5期の実力は承知だろうが、今はアニメ好きのオッサンである。そして謙虚でいつも所在なげなやさしいオッサンである。当時の読み物を見ると、相当無口だったらしい、中原曰く「あんまり無口なのもね」と周囲に愚痴をこぼしたらしい。なんでも自分が勝った感想戦でも喋らず、指摘されると黙って駒を動かすだけだそうで、なるほど、それはちょっと困る。藤井九段戦の藤井の敬意の態度とか、羽生のコンピューターのデータにやたら高橋の文字が並んでいたとか、理由はそんな小さな断片が積み重なって私はこの角に行きついた訳だが、そんなことで、次の一言で締めたいと思う。

 「流行の雁木より終わった矢倉」

 増田君、アマにも捻くれた意地は確実に存在するのだよ。タイトル5期以上取って高橋に言ったら認める、今は勝って当たり前の時期、履いた唾呑むんじゃね〜ぞぉ。と嫌味を言いつつ、純文学の再ブームを待つとしよう。

 以下はその棋譜です。↓

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    「矢倉は終わりました」発言は高見じゃなくて増田ではないのかというつっこみは野暮かw

    [ ただの通りすがり ]

    2018/8/23(木) 午後 2:35

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    > ただの通りすがりさん
    ご指摘あざ〜っす。すっかり勘違いしてました、増田ですね。直しときます。> ただの通りすがりさん

    [ teiru ]

    2018/8/31(金) 午前 6:11

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