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ぱっしょん・ぱっしょん・ぱっしょん。

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 決勝、もう一つのイスの行方は、先週の将棋の熱が残っており自然と気になった。
橋本崇載八段対佐藤和俊六段、準決勝第二局、順当にいけば8割ハッシーだろう、そんな軽い予想は外れた。投了図、2八の歩が何とも言えない。羽生を揶揄った罪か、自身の罪か、あの受けしかなかったのか、ともかく歩が全てを語っている。私にはそんな風に見えた。やはりどんな競技も準決勝が一番アツイ、決勝も大事だが準決が熱い。

 過去の対戦は2局で、どちらも橋本が取っているとのこと、ただお互い過去はそんなに関係ないようだった。だいぶ時も経っている。お互いが是が非でも取りたい初の晴れ舞台への切符。▲1三馬を指した手つきはしなっていた。見返してみると、この▲1三馬を指した数秒後、相手玉受け無し、とみて自玉の詰みを読んでいる。頓死は食わないぞ、最後の集中力を使っているようだった、相手玉は全く見ていない。だが直後の△1二金を受けて手は両手とも頭部へ、秒を読まれる中「エッ」、一呼吸置いてまた「エェッ」。見返してみると▲1三馬で決まり、と読んでいたのがよくわかる。ついでに書くと、途中自分がアップになるところで呟くように「優勢」と言っている。これはイヤホン・ヘッドフォンで聞かないと聞き取れない小ささ。録画があり、暇な方はどぞ、▲4二銀を打つ前、すなわち決めに行く前である。解説の広瀬八段が「本人も何かあるとみているはずですね」の直後だ。それを聞いた佐藤はどんな気持ちだったろう。
 
 その後、両者とも広瀬八段の解説した通りに指し手が進む、先に手を変えたのは佐藤の方だった。銀で受けると思われたところに香、後にわかることだが、一手開けばこの銀があるので相手玉に詰み筋ができる。この時、相手玉の詰み筋まで読んでいたのは、世界中恐らく彼だけだろう。自玉の受けの時間に相手の玉の詰み筋まで読んでいたのだ。圧巻である。そう、彼は飄々としてポーカーフェイス、名前や顔は知っていても彼の将棋まで知っているファンは恐らく少ない。危なっかしいなぁ〜間違えそうだな〜と思う私を尻目に橋本王を一気に詰ませた。羽生に勝つこと、は棋士にとってどんな意味を持つのだろうか、結果を見ればそれは間違いなく彼にとってプラスの力となって背中を押した、広瀬八段いわく「見事なカウンター」で掴んだ自身初の大舞台への切符、決勝戦は「佐藤カード」となった。

 橋本は将棋以外でも何かと注目を集める稀有な棋士だ。貴重といってもいいかもしれない。奇抜なファッション、将棋BARの経営、連盟を「将棋ムラ」と揶揄した著書の出版、ツイッターで素人相手に本気で噛み付くヤンチャぶり、etc。閉鎖的で封権的でジメジメしてそうな世界を、1人声高に「壊せ〜!」と昔から叫んでいる。研究会などには参加せずにソフトには全否定の姿勢を取っている。極端にいえばソフトの将棋は別の将棋、と言い切る。先の三浦問題の発端にもなったツイッター発言(現在は閉鎖)もあった、是が非でも盤上で結果を出したかっただろう。新会長とはいえ、連盟のトップと決勝の大舞台で戦いたかっただろう。その無念はいつまでも感想戦を行えない投了直後の彼の姿が物語っていた。ただ、お茶の間へ礼儀として、カメラを向けられると凛として背筋を伸ばす演技が精一杯。だが、その背筋は時を経ず、すぐに崩れ落ちる。ほんとうに勝ちたかった、そのおもいが、画面から滲み出ていた。

 決勝は康光寄りが8割だろうか。正直見えないが、和俊が勝てば大金星になる。大殊勲の星として勲章物だろう。自身の棋歴にも眩しすぎるほどの星になる。△8七飛と打った時、しかめっ面で首を傾げる。(▲6八玉の変化はわかりません、調べてもいません)しかし、橋本が▲同金と応じると、一瞬頬が「ニャ」とした。(おぉ、とった〜詰んだ〜勝った〜)喜びを必死で抑えているのだ。これも録画しているとわかる。対局者心理を探っていく面白さである。この和俊の若き頃の文を別のサイトで読んだことがあるが、オッタマゲタ。私なんか問題にすらならない、ジャイアンも一撃級の生意気ブリブリの文だ。興味のある方はご一読あれ。
 
 それと触れておきたいのが広瀬八段の解説。さすがはタイトルを取った棋士だなぁ〜と思われた方も多いのではないだろうか。所々、スピードについていけない所が私にはあったが、わかりやすく他の変化なども参考になるものばかり、藤田との息もピッタリで聞いていて何のストレスもなく解説の言葉が入ってきた。これはなかなかあるようで、ない。好き嫌いはあるが、彼の場合は広く受け入れられるとおもう。

 ともあれ決勝は私にとってオマケのようなものだ、正直、この準決勝の二局でお腹一杯で、しばらく何もいらない状態にある。これで決勝がもっといい将棋だったらホントにタイヘンだ。こんな嬉しいタイヘンならいつでも歓迎なんですがねぇ〜。(苦笑)将棋を知って、覚えて、ほんとによかったなぁ〜と、こんな素晴らしい将棋を見るといつもながらおもうと同時に、確かな幸福に包まれる。だから、やっぱりプロの存在は、我々ファンにとって是が非でも必要なのである。

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