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希望の王
投げ出さない限り、どんな絶望の壁にも差してくる・・・

書庫ほっとドッグの会話

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3月30日 14:46
季節の変わり目
とくに女は、季節の変わり目には敏感なのかも知れない。
赤い血を、生きた体から流すと言うのは、俺には解らないと、私は胸の裡に呟いていた。
……男には解らない痛みを抱えて、一番艶やかな時代を生きるんだもんな、と私はエレベーターに乗り込む女の背を、見詰めた。何か、孤愁を着ているのか……? 見ては行けないはずの、客の姿態を、密やかに看ていたのだった。迎えに上がってきていた初老の運転手も、女の寡黙な様子に、気圧されたように、籠の中に紛れ込んだ。閉まり掛けた扉から絡んだ視線は、男のそんな、戸惑いらしかった。ちらっ、とだったが、女の肩越しに、私はその男の疲労を受け取った気がしたのである。
 女は私のフロント越しに下げる頭を、気づかないようにさせたのかも知れない。
 女は、もうホテルの外に心を歩き出させていたに違いない。私は、開けきらぬ早朝の、帳のブラインドを少し上げて、寝入っているような国道に入って、走り出したタクシーを見送っている。
 こんな駅からは、遠くはずれた小さなビジネスホテルにも、その残り香がシーツにしっかりと、落ちているものと私は、冬の終わりを聞いていた。
 「若い女の人ですよね、昨日の泊まりの客は?」
 解るのか……と、内心私は、訝りもし関心もさせた。若い男のクリーニングの集配係には、匂うものらしい。もう季節の色にすら関心の薄れた私には、春の変わり目も怪しい。

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