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2017年6月25日から7月4日まで、韓国、ソウルの Mullae に。
千秋楽終えての打ち上げにお客さんたちの何人かも残ってくれた。
この地区は言ってみればアーティストやパフォーマーたちの町。
古くから鉄工所などが集まっている町だが、空いた工場や事務所、倉庫跡の安い物件にアーティストたちが目をつけた。今では押しも押されもせぬ折り紙付きのアート地域。
そのお客さんたちのほとんどはただ者ではない。
パフォーマーやアート関係の方々。
緊張の十日間でしたが、おかげさまで予想を超える入りだったとか。
少しほっとしたけれど、まだまだだというアドバイスやヒントもたくさんいただき。
ありがとうございました。
最後の日は、パフォーマーの女性に案内いただき、この料理。
熱々の豆腐とキムチ、そしてマッコリ。
あらためまして、
今回ショーを観に来て頂いた方々、
そしてこのイベントを設計頂いた「スタジオQDA」に感謝いたします。
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私が海を嫌うのにさしたる理由はない。
ただただ不気味なのだ。
生きとし生けるものはすべて海から産まれたという。ならば私の感覚は原初的な畏れから来ているのだといっても、そう外れてはいないだろう。とにかく海があると、あ、先になど行けようはずもない、ここで行き止まりだ、と思うのだ。
そう、あの頃、すぐそばの国で戦争があり、さびれた漁村だったこの町は外国兵たちの保養地として開発が始まった。大艦隊が沖に停泊し、空母の上で文字通り翼を休めていた戦闘機。それをホテルのプールサイドから遠く眺めた、というのがこの町での最初の想い出だ。陸の歴史と喧噪を見ながら、海は黙ったまま急激に汚されていった。戦は終わり、いつしかこの国を代表するリゾートとして観光名所になった町はいまこのとき、これまでのイメージを脱ぎ捨てて、二階建てのバスで押し寄せる言葉を解しない団体客のために衣装を着替えようとしている。
けれど海辺はやはり海辺だ。
夜になると地平も水平線も消えて海から魔がさしてくる。
この町の最後の想い出は彼女の声だった。
海辺の丘の上に建つホテルのベランダから遠く漁り火を眺めたとき、私は携帯をとりだしていた。一時帰国の際、焼けぼっくいに火がついた同級生の女の声が聴きたくなったからだ。色々あるけどもう子供じゃない、間に海はあるけれど、やり直すのは不可能じゃないはずだ。
そうだね、もうこの歳だから、やり直せるね、と彼女は応えた。
あの時の電波はいまどこの虚空をさまよっているのだろう、と思うとき、私はやっぱり海が嫌いだ。
2017/06/08
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タイ人は皆、霊の存在を強く信じている。だからこの国では霊も自由に闊歩できる。
なんでこんな、というようなことがタイ人の身の回りにはよく起こるらしい。
かく言う私に霊感はない。
が、
昨日の夜中のこと、いつものごとく舞台のあれやこれやを悩みながら
いつの間にか眠りこけていたとき、
耳のそばで
「トッテ・・・」
という日本語をささやかれて目が覚めた。
ひとりの声ではなかった。何人かの、男女の区別もつかぬ、声。
「トッテ・・・」 「トッテ・・・」
寝ぼけているのだろうか、見回しても暗い部屋の中には私ひとり。
明かりのスイッチに手を伸ばそうと立ち上がったとき
ベランダの戸がドンッと音を立てた。
見ると、戸が風に吹かれるようにゆっくりと外側に開いていく。
そしてその向こう、ベランダの外からまたささやくような声。
「トッテ・・・」
きっと私はまだ寝ぼけているのだ。
けれどなぜかその言葉の意味がひらめいた。
「撮って・・・」
なのだ。
私はふらふらと机の上にあったデジタルカメラを手にとり、ベランダへ出た。
だれもいない。風だけだ。
外の夜景に向かってシャッターを押した。
普通だったら撮れるはずがない。
けれど
この写真が撮れていた。
ベランダのまわりを舞う無数のオーブ。
そうか、そういうことか。
なぜかこの夜、私の棲むこの部屋が、そしてベランダが、
彼らの通り道になってしまっていたのだった。
なんてね。
昨夜の大雨をフラッシュで撮ったら
こんなん撮れましたっと。
少し涼しくなりましたか?
こんな文はすぐ浮かぶんだけど、近づいている舞台の案は
なかなか浮かばず。
今夜も悶々としてます。
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6月末からの韓国ソウルでの舞台のポスターが送られてきた。
仮面を使ったマイムがいいだろうというアドバイスを受け、仮面もの中心にプログラムを立てた。
Soul Mime in Seoul といきたいところ。さて、どこまでやれるか。
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昨夜、酔っぱらう。
久しぶりに会った知り合いたちの夕餉。
破恋(失恋ではない)の話で盛り上がるおじさん3人と青年一人。
二次会の呑みに移った。
外に雨が降り出した。
じゃあこのへんでお開きにしようということで。
お店の素敵なママさんが、どうぞ、と渡してくれたのは
私の飲みかけの冷えた濁り酒の瓶。
わざわざそれを小洒落た紙袋に入れてくれた。
外へ出ると少し雨が強くなり始めていた。
友はタクシーを拾った。
私は高架鉄道を選んだ。
この雨で道路は混み始めている。
タクシーは必ず信号2回待ちくらいになるだろうと私は読んだのだ。
高架鉄道なら3駅で着く。
少し混んでいた電車に乗り、紙袋の中の濁り酒を覗いてにんまり。
部屋にたどり着いたらこれで独りの三次会。わくわくである。
うまくいくと思っていたのはここまでだった。
降りた駅はいまが盛りの土砂降り。
傘を持たない乗客たちが駅の出口に溜まっていた。
ちょっと気取ってバッグから折りたたみ傘を出す。
お先に、と雨の中を歩いた。
うまくいったのはここまでだった。
この雨の中、タクシーの空車はない。
いつものバイクタクシーもなかった。
駅から住み処まで歩くしかないことに気付いた。
よっしゃ、久しぶりに歩こじゃないか、僕も男だ、へっちゃらだい。
しかしその時!
なぜか雨が強くなった。風も横殴りに吹き始めた。
右から左から前から後から。雷まで来やがった。
頭からずぶ濡れになると風邪が怖い。
傘を目深にかぶるようにして風と雨に向かう。
久しぶりだなこんな経験。パントマイムでやる時にこりゃ良い経験だぞ
なんてこと考えながら。胸から下はこの時点でもうずぶ濡れ。
アパートに続く小道に入ったときは水たまりはもうなかった。
道全部が川になっていたからだ。
くるぶしまで水につかりながら歩いた。
あと一〇〇メートルで着く。
部屋に入ったらすぐ濡れた服を脱いでシャワーを浴び、
たばこを一服吸って、この濁り酒を飲むのさ。ざまあみやがれ、ハッピーハッピー。
すると足下で「ポリン」とかわいい音がした。
濡れた紙袋の底が抜け、足下に割れた瓶。
白い酒が雨の川ににじんで広がっていた。
泣くもんか。振り向いてなんかやるもんか。
記憶にあるのはここまで。
そして今朝、私は素っ裸で部屋のドアを開けたまま寝ていた。
靴を干そう。
バッグの中身を出して乾かそう。 |



