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え、毎度おなじみの前振りでご機嫌を伺います。
わたくし、「エマージェンシー」という題名のパントマイム作品をもっております。
交通事故をモチーフにした演目でございますが、そのなかに、救急車が渋滞に巻き込まれて立ち往生するという一場面があるのです。
この場面を挿入したときに、はたと困りました。渋滞からどう抜け出すか、なかなか名案が浮かんできません。ストーリー自体が渋滞してしまったわけですな。
で、無い知恵絞って結局どうしたか、というと。
この救急車には飛行装置がついておりまして、スイッチを操作すると飛行艇の翼が出てきて空を飛べるようになる、と…。
そこの方、ずっこけないでください。こんなもんなんです、私の作品は。
しかしこの場面、舞台に上げましたらタイ人のお客様に大ウケ、爆笑とともに拍手喝采、もうたいへん。こんなこと滅多にあるもんじゃありません。
次のようなジョークがあります。
バンコクの救急車のサイレンは「ターイ・レーオ、ターイ・レーオ(もう死んじゃった)」、消防車のそれは「マーイ・モット、マーイ・モット(燃え尽きちゃった)」と鳴る。文字じゃ伝わりませんが音声でサイレン調にこのタイ語を発音しながらやると、思わず膝を叩いて納得、でございます。
あの拍手には渋滞のときホントに空を飛べたらいいな、よくぞ飛んでくれた、というお客様の切実な願望とカタルシスが込められていたと勝手に思うのでありますが。
世の中すでに大きなとんでもない「エマージェンシー」のなかにあるはず、というのが最近の舞台を創るうえでの私の予感であります。泣くが嫌さに笑い候。
おあとがよろしいようで。
2005年11月5日 情報誌DACO 179号
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