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酔った足どりで居酒屋を出る。
月も出ていないが星もないバンコクの夜空。
日付が変わるまでにはまだ間があるけれど人通りはもう少なくなっている。
遠くの高いビルの窓々も街灯も大通りを走るヘッドライトたちも明るいようだが、歩くソイの足元はなぜか湿って暗い。一年のうちのわずかな長さのバンコクの寒季。
地上のネオンをぼんやりと反射しているような夜気のこちら側に、眠りについた建物の黒い影がいくつもある。その間を見え隠れしつつ無音のままに過ぎる灯りの列は高架を走る電車の灯だ。ひときわ明るい駅舎の灯りのなかに今しも吸い込まれていこうとしている。灯の集まりのなかに灯の列が吸い込まれていく。
ソイの真ん中あたりで立ち止まり煙草をくわえて眺めていると、その無音の営みが妙に愛おしい。窓の明かりの向こうにはそれぞれの人がそれぞれの想いであまりしゃべらずに座っているのだろう。
目的の駅へ、目的の場所へ、静かに静かに人は移っていく。
いま居る所からその次の場所へ。
人は決して一つところにとどまることはできないらしい。そう思わせてしまうそんなドラマを勝手に想像しながら定点観測している私がいる。
あの灯りがほんの少し垣間見せてくれるイメージは銀河鉄道だ。
子供の頃から憧れ、何度も読み返し、そしていまだにわからない『銀河鉄道の夜』。
訪ねてみるか、あの街を。
芝居をやって旅費を稼ぎながら。
助けてくれる人がいるさ。どこかで誰かが待っているさ。
そんな夢想をちょっと信じてみよう。
バンコクを不意に襲ったこの寒さと街の灯りに私は背中を押された。
2016 01・16 |
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2016年01月30日
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タイの高校生たちへの日本語の授業で、筆を使って「お」というひらがなを書けというお題を出した。事前に日本の書道のビデオを見せ、書道の歴史なんてことを知ったふりして言い散らかしたあとに。 買っておいた「筆ペン」を彼らに渡した。 キャップを取って「?」という高校生たちのリアクションが面白かった。 始めたは良いけれど、書き順は違うし、字ではなく画の方に移っていくし、 最後には書道ではなく「筆ペン」の面白さに彼らの興味は直行した。 こうして授業時間をごまかしながら、今日は過ぎた。 |
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