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さぁて、どうするかな・・・・

タイで生まれた

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いろんな写真とか、タイで活字として発表したエッセイなど短・長文の数々を、発表時期不同で。
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地獄に囲まれて、島。

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アソークの交差点に行ってきた。日曜夜11時に近かった。人はまばらで、大スクリーンに映る映像だけがあたかも人で一杯かのようなアングルを狙って明るかった。
アソークを見た限りでは今回の「バンコク・シャットダウン」はまったく新しいデモの形態をつくり出すことに成功していると思えた。「島」がないのだ。島があれば攻撃する側も標的を定めることができる。しかし今回の島はあたかもひょっこりひょうたん島のように、時によって、日によって動いたり消えたりする。島の岸辺だったはずがいつの間にかだだっ広い海になっているようなものだ。


私は海が怖い。その水面下を見るのが怖い。底がない。足元がない。休める場所が無いしその底なしの暗がりから何が出てくるかわからない。ほんの少し潜っただけで急に水温や流れが変わるし、地上では絶対に見られない景色や色が無音のなかに広がっている。その向こうは暗い藍色。消えゆく先で何を語るでもなく、誘っているのか拒絶しているのか知る人はない。人は海のなかから生まれ、そのデジャブを味わえるなどというアクアラングの人の言い分など私には信じられない。母の胎内にある海のなかにいたときほどに無心でいられるのであればいいのだが、現実の海はそうではないからだ。戸板一枚下は地獄という船乗りの言い方はけっして比喩でも言葉遊びでもないだろう。
その海に浮かぶ島は、地獄に囲まれているからこそ天国になる。
島を楽しむ人の想いはそこからくるのではないだろうか。
とすれば、
島に憧れ、いつまでもそこを天国であらしめたいという人の気持ちも分からないではない。                                                                                               2014.01.26

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華僑と華人

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華僑と華人という言い方に実は大きな違いがあるのだというのはつい最近知ったことだ、お恥ずかしい。
俗に「僑」には「仮住まい」の意味があってと書いてある本もあるが、国籍を中国あるいは台湾のまま外国に住むものを華僑といい、タイにいる多くの中華系住民のように国籍がその国にあるものを華人と呼ぶらしい。
いまわたしの手元にタイの高校生のクラス名簿があるのだが、このなかのどの子が華人系かは容易にわかる。苗字がやたら長いという子は間違いなく華人系の家庭の子だ。この名簿は某有名私立バイリンガル校のものだから、当然のごとく華人系の裕福な子弟たちということにもなる。
この名簿を見ているとあのヤワラートの錯綜した迷路と人いきれと汚れた空気を思い出す。その店々の奥にいつもあるあの紅い灯。その紅と金とで縁取られた漢字の列。汚いエプロンで働きながら実はベンツを自ら運転する女将さん。痩せた胸をあらわにしたまま茶をすすりつつ何もかもを諦めたような目を見せる爺さんたち。生き生きとした華人たちはその地域をすでに離れ、高層ビルのなかを闊歩している。政治も経済も意のままだ。ヤワラートの古いたたずまいは彼らにとって再開発の絶好の場所に変わっていくにちがいなかろう。


わたしの知るある日本人の大学教授の言だが、いま人類ははじめて漢民族という人種がどういう人々かということを知りはじめたばかりだという。
パンドラの箱が開かれたということだと私は理解している。

                                                                                               2013.11.10

川沿い

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河沿いに町がある。

どこの町かは言わないでおく。

私が一番好きで、できれば変わってほしくないと願う町だからだ。


河の向こうには異国の街が見え、遠くまで続く緑のかなたに異形の山々が望める。朝日は向こう岸の地平線から昇り、泊まる安ホテルの窓のカーテンを透き通って、まだ眠る者の肩を揺する。夜は夜で、川面に突き出した食堂のテラスに座ると、月の明かりが河に橋をかけて誘うのだった。


私の友人もまたこの町の風情が好きで、あるとき、しめし合わせてバンコクから男ふたりの旅に出た。事前に凧を買いこんでおき、その凧を川岸から揚げて国境を越えさせようという案が酒の席で出たからだ。

無駄な遊びとはこういうことをいうのだろう。けれどもこういう時間の使い方が必要なときが人にはある。無駄のうえに無駄をつけたし、その向こうにカタルシスを求めたい欲望。その欲望に素直に従えば、もしかしたら贅沢な遊びが生まれるかも知れない。


町について二日目の朝。

友人はテラスで冷めたコーヒーを前に退屈していた。今日は凧を揚げる日のはずだが、その凧が彼の手元にない。私は昨夜のアルコールが残る声でたずねた。

「凧は」

「飛んでいった」

「どこへ」

この時季、風は常に国境の向こう側からこちらへ向かって吹いたのだった。国境を越えられるはずはない。やけになった彼は私を待たずに凧を揚げ、その凧は糸を切ってこちら側の街なかへ落ちていったという。

遊びは終わった。

「二日酔いだ。もう一眠りする」と言い残して彼は去った。

私はウェイターを呼んで新しいコーヒーを注文した。

(写真はイメージです)  2013.06.10

騒魔宮

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バンコクの日本人学校の正門へ続くソイに隣接して有名な心霊スポットがある。十数年前にやはりダコさんの特集で深夜にいくつかの心霊スポットを訪れてルポを書かされたのだが、そのいくつかに入っていた場所だ。
そのときのままでいまもある。
その廃屋は「祈祷師バラバラ殺人事件」の現場だと当時聞かされた。いまも手付かずだ。だれも再開発しようとしない。地所としては一等地に当たるのだろうがだれも近寄らない。


バンコクという都会は必死でタワーを建ち上げ、明かりを点け、見えないところを暴き出しながら次から次へと闇を追放してきた。昨日まで暗かった路地が今日には絢爛豪華なショーケースの明かりをまとったモールになってきた。
ただ、どうしても、人々が触りたくないところは実にたくさんあって、タイ人がタイ人としての情をもち続ける間はけっして侵されることなくそこにうずくまるのだ。信じている人々がいるからこそ呪も霊も妖も存在できるのだから。


私個人の霊的体験は一度しかない。小学校4年のときだ。誰もいない部屋の奥にある仏壇から飛んできた黄色い造花がわたしの眉間を打った。他の部屋で祖母とけんかをして彼女をののしりながらその部屋へ入った瞬間だった。造花を投げたのは位牌となっていた祖父だったのだろう。その祖父は祖母が息をひきとる数日前、その枕元にちょこんと座っていたという。ふすまを開けて部屋に入ろうとした従妹はその祖父の姿を見た途端に立ったままで金縛りにあったという。


あのときの造花の痛みが教えてくれる。
メトロポリス・バンコクは騒魔宮だ、と。
(写真はイメージです) 2014.02.20
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インドには行かないと私は昔から言い続けている。
学生時代から言い続けている。
嫌いだからだ。
インドやインド人が嫌いだというのではない。行ったことも付き合ったこともないのだから国や人を嫌いになるのは早計だ。では何がこの嫌悪感をわたしに植え付けたのか。インド帰りのバックパッカーの群れだ。それも70年代終盤から80年代にかけての。今の旅行者たちと何がどうちがうのかは分からないし、分かろうという興味もない。ただあの頃の自分が彼らを嫌ったことだけは確かだ。
当時のバックパッカーにはまだどこかに自主性があって、「自分探し」とやらも現在のように商品化されていなかった。それをインド帰りという恰好の演出で演じていた。鼻につくとはこういうことだ。妙にだれた長い衣装をまとい、ひげと髪を伸ばし、どこか真摯にインドの想い出を語りながら、君たちには分かるまいね、インドへ行ってごらん、価値観が変わるよ、なんてせりふを喫茶店で吐くのだ。
そんな彼らが、では30年経ってどうなっているか。悟った感とか気づきとか、いろいろと言葉を操ってはいるけれど、そんなものは時が来れば向こうのほうからやってくる。
インドの一歩手前、バングラデシュには何度か行った。インドの上を飛んでその向こうのパキスタンにも行った。しかしインドはかたくなに避けてきた。
あんたみたいな人がインドに行ったら絶対にはまるよと、これまでに何人の人から言われただろう。
バンコクの至るところにインドの香りはあって、私はそれを避けて通る。自分が消えるのが怖いからだ。

2013.10.09

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