尿には窒素が多く含まれる一方、木灰はカルシウムやマグネシウムなど尿にはない栄養素に富んでいる。何世紀も前から尿と木灰は別々に肥料として使用されてきたが、一緒に使おうとする人はこれまでいなかった。
プラダン氏らは温室栽培のトマトをいくつかのグループに分け、それぞれに別の肥料を使った。1つ目のグループは人間の尿とカバノキの灰、2つ目は市販の無機肥料、3つ目は尿のみが肥料として与えられたのである。 結果、尿と灰を与えたトマトは肥料を与えなかったトマトの4倍近く収穫できた。これは市販の無機肥料に引けをとらない収穫量だ。意外なことに、尿のみを与えたトマトは尿と灰のグループより、わずかながら収穫量が多かった。 ただし、尿と灰を与えたトマトはどのグループよりも大きく育ち、マグネシウムの含有率がはるかに高い栄養価に優れた実を付けた。マグネシウムは骨や筋肉、心臓などの生化学機能を正常に保つ働きがある。 プラダン氏によると、尿と灰を肥料にする最大の利点は「非常に簡単な収集方法」にあることだという。環境保護のために尿を分離するトイレを使えば、簡単に尿を集めることができる。自分の尿を缶に入れて集めるだけでもいい。 研究チームの試算では、1人の尿で年間6300株ほどのトマトを育てることができ、約2.4トンもの収穫量が見込めるという。 肥料の与え方も簡単で、尿を散布してから3日以上の時間を置き、そのあと灰をまくだけでいい。プラダン氏らは同氏の出身地ネパールで、このアイデアを実行に移そうとしている。 プラダン氏によると、尿中に排出される薬やホルモンが作物に悪影響を及ぼす恐れもあるという。例えば経口避妊薬の残留物などだ。こうした副産物がバクテリアの抗生物質に対する抵抗性を高めたり、作物に吸収されたりするかもしれない。 「ただし、家族で行う小規模な農業の場合、尿に残留する薬はごく微量で許容範囲だ」とプラダン氏は話す。また同氏によると、長年にわたって肥料として利用されてきた家畜の糞尿も薬やホルモンの残留物を含むが、農業に危険をもたらす証拠は過去の研究で見つかっていないという。 National Geographic
|
サイエンス
[ リスト | 詳細 ]
太陽からはるか遠く離れた木星の衛星エウロパの海に、魚のような生命体が生息している可能性があるという。エウロパは氷の外殻に覆われているが、地下の全域に深さ160キロの海が広がっていると考えられている。ちなみに衛星表面に陸地は存在しない。この海に従来モデルで想定されていた値の100倍の酸素が含まれているという画期的な研究結果が発表され大きな論争を呼んでいる。
酸素がこれだけ存在していれば、顕微鏡サイズを越えた生命体をはぐくむことが可能だ。研究チームの一員でアメリカのアリゾナ州ツーソンにあるアリゾナ大学のリチャード・グリーンバーグ氏は、「理論上、エウロパでは魚のような生命体が少なくとも3トンは生息できる。 “生命体が存在する”と断言はできないが、生命活動を支える物理的条件が整っていることは確実だ」と話す。同氏の最新研究は、先月プエルト・リコのファハルドで開催されたアメリカ天文学会惑星科学分科会(DPS)で発表された。 マサチューセッツ州のウッズホール海洋研究所に所属する深海分子生態学者ティモシー・シャンク氏は、今回の研究を受けて次のように話す。「判明している情報に基づくと、エウロパの海底の一部には、地球の深海に存在する熱水噴出孔周辺と非常によく似た環境があるはずだ。この条件下で生命体が存在しないとなると、その方が驚きだ」。 ただし今回の研究が示した結果だけでは、エウロパでどのように生命が進化しているのかは想像に任せるしかない。結論を出すにはあまりに早急すぎるだろう。 エウロパは1610年、イタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイにより発見された。しかし、この衛星が詳細に研究できるようになったのは、NASAの木星探査機「ガリレオ」が木星系に到達した1995年以降のことである。 探査機ガリレオは非常に興味深い調査結果をもたらした。特に、エウロパの表面下に塩分を含んだ海が広がっていることがわかり、生命が存在する可能性を見出した。万が一ガリレオがエウロパに墜落すると環境汚染の恐れがあったため、2003年、NASAはガリレオを意図的に木星に衝突させた。 ガリレオ本体から分離されたプローブ(小型探査機)が海をダイレクトに観測したわけではないが、エウロパ表面に広がる氷の外殻の年代や構成物資、地質的構造から、地下に海が広がっていることは確実だと考えられている。 前出のグリーンバーグ氏はこう話す。「例えば、エウロパのキラキラと輝く表面は年代が比較的新しいことを示している。太陽系に属する惑星や衛星はすべて誕生してから40億年以上たっているはずだが、エウロパの表面には衝突クレーターがあまりなく、氷の外殻は形成後わずか5000万年しか経過していないと考えられる」。 なぜ表面の氷が若いのか、それを解くカギは潮汐力(ちょうせきりょく)である。地球が太陽の引力により膨張・収縮するように、エウロパも木星の引力の影響を受ける。この潮汐力から生じる摩擦熱がエウロパを温め、太陽から7億7800万キロ離れていても、液体状の水が維持できるというわけだ。 また、氷の外殻は潮汐力によってひび割れを起こし、そこから比較的高温の地下の海洋水が染み出てくる。表面に達した海洋水は凍り付くが、それと同じ比率で古い氷は沈んで地下の海に溶けていく。このようにして、氷の外殻と地下の海は循環していると考えられる。 この“再製氷”サイクルにより、表面の氷が若々しく保たれる理由を説明できる。同時に、表面で生まれた酸素が地下の海まで運ばれている可能性も示される。エウロパの酸素は、木星の磁場から放たれた荷電粒子が氷にぶつかるときに生まれる。「再製氷のペースから推定すると、最初の表面酸素が地下の海に到達するまでに10〜20億年かかったと考えられる」とグリーンバーグ氏は話す。 同氏の推測によると、再製氷プロセスの開始から数百万年後には、エウロパの海の酸素レベルは地球の海を超える現在のレベルにまで達していたという。 変化がこのようなプロセスで進行したのであれば、私たちの知るような生命体がエウロパに定着した可能性は大いに高まる。グリーンバーグ氏は次のように話す。「まず、最も原始的な生命体が誕生するとき、無酸素の環境が必要となる。酸素はほかの分子体を分離させる性質を持つので、酸素があるとDNAなどの遺伝物質が自由に集結できなくなる」。 また、酸素レベルが急激に増大すると、活性度の高い酸素に未順応の単純生命体は生きていくことができなくなる。しかし酸素レベルがゆっくりと上昇すれば生命は耐性を持つように進化することが可能になり、それどころか酸素に依存するようにもなる。これが初期の地球で起こったと考えられているプロセスである。 このような主張に対し、反論も出ている。例えば、「魚のような生命体が存在するという可能性は、再製氷が5000万年ごとに周期的に行われていたら、という前提に立っている。しかし、再製氷はもっと断続的なプロセスだった可能性もある。その場合、酸素レベルは研究結果よりも低くなり、生命体の可能性も低下する」といった意見である。 アメリカのカリフォルニア州パサデナにあるNASAジェット推進研究所の上級研究員ロバート・パッパラルド氏は、次のように話す。「おそらく、5000万年前に大規模な循環があったのだろう。しかし現在では循環ペースは遅くなり、どんどんと緩慢になっている」。 パッパラルド氏によると、このシナリオでも酸素が海まで到達する可能性はあるが、複雑な生命体をもたらすようなレベルにはならないという。「エウロパの潮汐活動が断続的なものだとすると、岩石のマントルからもたらされる熱や栄養素の度合いも大きく変化することになる。環境の変化に対して耐性を高めるような進化が起こるだろうが、必ずしも地球で生まれたような複雑な生命体が誕生するとは限らない」。 また、パッパラルド氏は、潮汐摩擦がエウロパのコアまで温めるほどのものかどうかも、生命の可能性に大きく影響すると指摘している。 地球外知的生命体探査(SETI)研究所の宇宙生物学者シンシア・フィリップス氏も同じ意見で、「たとえ水中に酸素が大量にあったとしても、エウロパに微生物以上の生命体が生息している可能性は低い。生命を支える化学的栄養素の量が十分ではないと予想されるからだ」と話す。 それでも、ウッズホール海洋研究所のシャンク氏などは、「微生物だとしても生命の可能性があるのであれば、研究する価値は十分にあるはず」と考えており、いずれエウロパに降りた宇宙探査機が氷を突き進み、地下の海を探索する将来に備えて研究を進めている。その際には、地球の深海で熱水噴出孔から湧出する栄養素を遠隔操作無人探査機(ROV)で探知するような方法になると考えられる。 ただし、地球で使うような装備では役に立たない。まずは、DNAやRNAなど生命を示す化学的サインを探知できるセンサーを開発しなければならない。そして、小型化・軽量化などはもちろん、確実な通信機能が欠かせない。「地下の海にたどり着いて生命を見つけても、それを知らせることができなければ何の意味もないからね」とシャンク氏は話す。 しかしながら、NASAがエウロパ探査の次のステップとして行うのは、オービター(軌道周回観測機)によるものとなる可能性が高く、海中探索はおあずけのようだ。NASAは欧州宇宙機関(ESA)と共同でミッションを行う計画も立てている。 NASAジェット推進研究所のパッパラルド氏は、次期エウロパ・ミッションを担当しており、「NASAが計画しているオービターは、放射線などさまざまな影響に対しておよそ1年は持ちこたえられるはずだ。エウロパに“複雑な生命体”が存在する具体的な証拠を見つける可能性もあるが、それは楽観的と言えるだろう」と話す。「まず、有機体の成長に十分な化学エネルギー量が存在するかといった基本的な証拠が必要だ。可能性はゼロではないので、今後の探査活動に期待しよう」。 National Geographic
|
今年もしし座流星群の季節がやってきた。専門家の予測によると、時間と場所にもよるが今回は1時間に30〜300個の流星が期待できるという。
しし座流星群がもっとも多く出現する極大時は、アメリカ東部標準時の11月17日午後4時45分(日本時間18日午前6時45分)で、北アメリカやヨーロッパでは実質的に観測不可能である。しかしこれらの地域でも街明かりの少ない郊外へ移動すれば、17日午前2〜4時に1時間に30〜50個の流星を観測できるはずだ。 今年一番の観測スポットはアジアであり、夜明け前に極大を迎える。 NASAの流星体環境室(Meteoroid Environments Office)で室長を務めるビル・クック氏は次のように話す。「コンピューターの処理能力が向上し、1990年代以降は流星群の活発化を予測できるようになった。今年のしし座流星群は大出現が予想され、極大時には1時間に最大300個の観測を期待できる。仮に最大のピークを逃したとしても、今年は短時間の極大が予期せず起こる可能性があるので、とにかく夜空を見上げてみることをお勧めする」。 しし座流星群は、午前1〜3時に北東の地平線から姿を現す“しし座”に放射点があるためそう呼ばれている。 ペルセウス座流星群やオリオン座流星群と同様、この流星群も彗星の軌道に乗って太陽系を周回している“ちり”の帯(ダストトレイル)の中を地球が通過することで発生する。 具体的な発生メカニズムはこうだ。彗星は主にちりと氷で構成されているが、太陽に接近すると一部の氷が溶けて砂粒大のちりが放出される。しかしこういった粒子の大きなちりはそれほど拡散せず、彗星の軌道上を流れるダストトレイルを形成するのである。太陽を公転する地球が年に1回ダストトレイルに差し掛かると、ちりが地球の上層大気と衝突して発光し、地上からは流星として見える。 しし座流星群は気まぐれで流星の出現数が安定しない。たいていは1時間に15個程度と小規模であるのに、年よっては1時間に1000個を超える壮大な“流星嵐”が展開される。 その理由としては、流星群を作り出すちりが均一に拡散していないことが挙げられる。母彗星であるテンペル・タットル彗星は33年周期で太陽に接近し、そのたびに新たな流星の種をまき散らしている。 アメリカのシカゴにあるアドラープラネタリウムの天文学者ゲザ・ギュク氏は次のように解説する。「地球はまれにそのような非常に新しいダストトレイルに飛び込むことがあり、その際に流星嵐は発生する。例えば1833年のしし座流星群では、1時間に10万個もの流星が出現した。1秒当たり約30個という驚異的な数である」。 今年は流星嵐こそ起きないが、それでも大規模な出現を期待できると専門家は予測する。1467年と1533年のダストトレイルで構成された大規模なちりの雲(直径10万キロ)と接近するからだ。 NASAのクック氏は、観測者のために次のようなアドバイスをくれた。「しし座流星群はほかの流星群と同様、高価な光学望遠鏡がなくても観測できる。むしろ何も使わない方が、視野が広くなって都合が良い。温かいココアや毛布を用意し、仰向けになって夜空を見上げよう」。 National Geographic
|
ハッブル宇宙望遠鏡が2002年に撮影したいっかくじゅう座の変光星「V838モノセロティス(Monocerotis)」と周囲のちりの雲。この星が、2012年に地球に衝突する幻の太陽系第10番惑星、俗に“惑星X”、“惑星ニビル”と呼ばれる天体が存在する証拠だとする風説がある。
だが、NASAの宇宙生物学者デイビッド・モリソン氏は、「そんな天体は存在しない。きわめて単純明快な話だ」と話す。 実のところ、この惑星衝突説は“2012年人類滅亡説”への関心が高まる以前からあった。地球外生命体からのメッセージを受け取ったと主張する女性などが広めたもので、惑星ニビルの衝突による“地球最後の日”は当初は2003年と予言されていた。 「惑星や褐色矮星など、いまから3年以内に内太陽系に接近する天体があれば、10年前から天文学者たちの研究対象にされているはずだし、いまごろは裸眼でも確認できるはずだからね」とモリソン氏は語っている。 National Geographic
|
この新しい方法は皮膚細胞を使用する従来の方法よりはるかに効率的だという。また、この発見により、ヒト胚性幹細胞(ES細胞)の使用に関する倫理的な問題を回避できる可能性もある。
「人間の脂肪は豊富な天然資源であり、再生可能でもある」と、研究に参加したアメリカにあるスタンフォード大学の形成外科医マイケル・ロングエイカー氏は話す。今回の研究で使用した脂肪は、同氏が脂肪吸引手術を施した患者から提供されたものだ。 患者から採取した脂肪を使ってその患者用の新しい組織や臓器を人工的に培養するといった未来を、同氏は思い描いているという。 しかし、“脂肪”だからといってこれは肥満体限定の手法ではない。同氏によれば、患者が痩せていても、ほとんどの場合で十分な量の脂肪を採取できるという。 人工多能性幹細胞(iPS細胞)と呼ばれる初期化された細胞は、体内のほとんどの細胞に分化できる能力を備えている。科学者たちは現在、この細胞を用いた病気の研究を熱望しており、将来的には新しい組織や移植用臓器の培養も行いたいと考えている。 これまでの研究では、iPS細胞は普通の皮膚細胞からも作製できることが確認されている。 しかし研究を率いた、スタンフォード大学で幹細胞研究の専門家であるジョセフ・ウー氏によると、脂肪を使った手法の方が時間では2倍早く、効率でいえば20倍ほど優れているという。 この研究成果は、「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌のオンライン版に掲載されている。 研究チームは幹細胞を製作するため、血管を包んでいる脂肪内の平滑筋細胞に“トロイの木馬”のような働きをするウイルスを注射した。そのウイルスにより内部では筋細胞を初期化する遺伝子が導入され、新しい形態への成長が促進されたのである。 「以前はマウスの細胞由来の栄養素を投与し、培養皿で幹細胞を育てる必要があったが、マウスのタンパク質から不純物が混入する危険性が指摘され、それが政府の承認を得る障害となる可能性があった。今回、新しい手法で幹細胞を製作することに成功したが、いくらか不明な面もあり、依然として謎に包まれている」と、前出のロングエイカー氏は解説する。 これまで体外受精で作られた余剰胚を供給源とする胚性幹細胞を使用することには倫理上の問題が指摘されているが、脂肪や皮膚を使えばその論争を回避できる。 「また、患者自身の幹細胞から培養した組織や臓器を移植すれば、拒絶反応も抑えられるはずだ。脂肪を使えば時間も短縮されるため、それだけ助かる命が増える可能性もある」とロングエイカー氏は指摘する。 「例えば、心臓発作の患者が病院に運び込まれてきたとしよう。その人自身の脂肪から培養した新しい心臓組織を移植する必要があると外科医が判断しても、時間的な猶予はあまりないかもしれない。瘢痕(はんこん)組織が形成されて手術に危険が伴う恐れがあるからだ。しかし数週間のうちに組織を培養できるとしたら、手術の成功率は飛躍的に高まることになる」。 National Geographic
|


