マーケティングの現状と未来を語る

2014年ヤフトピに8度の記事掲載。わかりやすい裏読みでメディア取材多数。マーケティングコンサルタント。個別相談も受付中

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今日は「テレビの現状と未来」について書きたいと思います。

2010年と2011年の今を比較すると、テレビ広告事情は大幅に改善しています。2010年の年12月末時点で、2011年2月までのキー局スポット枠は満稿となり、1月時点で3月までのスポット枠も満稿になっている状況です。4月も順調に推移しています。大幅に改善した最大の理由は、広告主の業績が向上したことによります。広告費というのは、広告主にとって経費扱いに入ります。つまり、基本的には、広告主企業に利益が出て増えるものです。裏を返せば、広告主企業に利益が出ない状況の中では真っ先にカットされるものなのです。従って、広告費は不況が本格化する以前から減少していくこととなります。日本経済は本格的に不況を脱したとは言えません。むしろ、日本の99%を占める中小企業の停滞感は改善されるどころか増している部分さえあります。99%を占める中小企業が停滞しているということは、国民全体ひいては日本経済にとって問題が爆発していないだけということが現状と言えるでしょう。

テレビは戦後の高度経済成長期において3種の神器の一つでした。最初は、テレビを持っている人の家や街頭テレビに人が集まり、その後は一家団欒の場に欠かせないものになっていきました。最初は一家に一台であり、チャンネルの選択権は父親が握ることが多く、巨人戦、相撲、ドラマ、歌番組が人気となりました。その後、一家に複数台となって、チャンネルの主導権が分散されても、テレビは中心的存在であり続けました。職場や学校に行けば、昨日のテレビの話題がコミュニケーションの中心だったのです。テレビが新聞や雑誌と比べて全ての人の中心であり続けたのは、新聞や雑誌と異なり、テレビが無料で楽しめたり、動画メディア(広告もそうですが、静止画よりも動画のほうが人の興味は引きやすいもの)という理由が挙げられます。しかし最大の理由は、自分の知りたい情報を能動的に得るためのメディアが少なかったということです。

インターネットの登場と検索エンジンの登場はイコールと言っても良いと思います。インターネットの登場によって、多くの人は自分から情報を入手する手段を得ました。例えれば、今まで親から食事を与えられていた赤ちゃんから、自分から食べたいものを食べることが出来る少年青年に変わっていったイメージです。自分が欲しい情報を選べるのですから、わざわざ与えられた情報を待つ事が少なくなりました。ただ、少年青年大人になっても与えられた食事の方が楽である時もあるように、人は与えられた情報のほうが楽であるということもあります。しかし、多くの場合には自分の情報が入手出来るインターネットが主メディアであり、テレビは副メディアとなってしまったのです。雑誌の凋落が激しいのは、細分化されたターゲットニーズに適合出来ないからです。これは、「紙を印刷して販売する」という現在のビジネスモデルでは採算が取れなくなってしまったことも理由としてあります。マスメディアと個メディアの中途半端なポジショニングでは生き残れないのです。今日はテレビについての話なので雑誌の生き残りについては割愛させて頂きますが、ここもビジネスモデルの転換が必要なのです。

さて、今年に入りテレビ広告出稿に勢いが戻ってきた背景には、数十万から数千万人の人に情報を伝達する手段として、コストパフォーマンスも含めテレビが最も良いということが広告主側にもわかってきたことも挙げられます。もともと、一人当たりにリーチ(情報を届ける)コストがネット広告と比べても高かったのですが、それが実感出来たことが寄与しています。また数年前と比較して出稿単価が落ちていることもあります。出稿業種の規制緩和などもあるでしょう。しかし、問題の本質は変わっていないのです。

テレビがもっとも強いのは、どの家庭にも必ずある普及率の高さとスイッチを入れればすぐに見る事が出来る手軽さだと思います。何を見るわけでもなくテレビをつけるという人が、日本人の多くを占めるのではないでしょうか。つまり、テレビ、テレビ広告が強いのはコンテンツが面白いとか面白くない以前の問題なのです。テレビは日本の家庭にとって電気や水道と同じようなインフラと考えるほうが自然なのです。インフラですから、多少コンテンツが面白くなく視聴率が落ちてきても一気になくなることはありません。それが現在のテレビだと言って良いでしょう。

しかし、そのポジションも絶対安定ではない時代に入ります。いわゆる「放送と通信の融合」です。テレビ番組をベーストするHDD録画ではなく、インターネットそのものがリビングや部屋にあるテレビ画面というインフラに登場する時代が徐々に来ています。TSUTAYAやDMMなどのオンライン映画レンタルではなく、インターネットそのものがテレビ画面のトップに入ると、そこから映画はもちろんのこと、youtubeなどの画像サイトにもアクセスでき、通常インターネットも出来ることになります。つまり、現在のテレビが最も強みを持っていた「ながら視聴」=「視聴率(テレビを流している率)」が強みではなくなるのです。デジタル化によって、今のような脆弱な視聴率集計ではなく、はっきり数値が出てしまうこともテレビにとっては逆風となります。では、テレビはどうすれば良いのでしょう。

テレビ局はもっと早い段階からインターネットへの進出をすべきでした。なぜなら、インターネットコンテンツ(動画コンテンツ)を揃えることで、細分化するユーザーニーズに即した番組を提供することが出来たからです。それが出来れば、インターネットとテレビが融合する時代になっても「とりあえずテレビ」という中心的役割を担うことが出来る可能性が増すのです。しかし、この点においては既に出遅れました。BSやCSがあるではないかという声もあるかもしれませんが、これらの多くが通販番組や同じような紀行映像です。広告や番組制作側の立場から言えば、視聴率が地上波よりも不明瞭かつ0に近い視聴率のデータが出ている中で、テレビ局から提示される番組制作費/電波利用費は高すぎるのです。広告主がつかず、現状のようになるのは当然の成り行きだと私は感じています。脱する方法として最も良いのは、テレビ局はインフラに徹して、番組内容や広告主に関しては外部に解放することです。つまり、テレビ局は何から何まで囲い込むのではなく、プラットフォームを提供する側に回るのです。プラットフォームに徹することで、番組の質/量とも高め、テレビの存在感を失わないようにする。圧倒的なインフラである現在のテレビだから出来ることなのです。ただ、残り時間は少なくなってきています。

最後に、ニコニコ動画を見てみましょう。ニコニコ動画の人気があるのはインタラクティブ性ということが挙げられるでしょう。ここ1年くらいでテレビも、インタラクティブ性の魅力に気づき、地上波でも積極的に採用する方向にあります。ニコニコ動画は、このインタラクティブ性や連動イベントというものを軸として有料会員を増やし、昨年ついに黒字化しました。本来は、テレビ局が進めていくべきビジネスモデルでニコニコ動画は成功してしたのです。この点において、テレビ局はまだ遅くありません。基本無料という視聴スタイルとは別に有料化の道を作る事は可能です。ニコニコ動画に人気が出たもう一つの理由は、コンテンツの豊富さです。政治からお笑い(決して質が高いと言えないマイナーなもの)まで、とにかく幅広いのが特徴です。つまり、コンテンツを増やすことが、細分化した視聴者のニーズを掴むのです。おそらくニコニコ動画は、この先にさらなるユーザー連動の仕組みについて考えているのではなかろうかと思います。

インターネットとテレビが融合しても、リビングからテレビが消えることは無いでしょう。そうなる時代はすぐそこです。その時代に、トップ画面/トップ数画面に入ることが非常に重要なのです。テレビは今までのビジネスモデルを守ろうと囲い込みばかりをするのではなく、新しい時代のビジネスモデルをぜひ推進して欲しいと思います。そして、それが10年後のテレビにとっては死活問題になるのです。


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