マーケティングの現状と未来を語る

2014年ヤフトピに8度の記事掲載。わかりやすい裏読みでメディア取材多数。マーケティングコンサルタント。個別相談も受付中

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2014年7月25日、日本マクドナルドは上海福喜食品だけでなく、中国のすべての工場からのチキン輸入をストップした。これによって、チキン関係メニューの供給が減り、販売中止の店舗も出ている。

ファミリーマートが、今回の問題に絡む関連商品購入者に対して、返金対応を打ち出したのと対照的に、日本マクドナルドは返金対応などは打ち出していない。その中で、中国工場からのチキン供給だけは中止すると発表した。

■ 経営的ダメージの大きいマクドナルド

今回の問題で一番割りを食うのはマクドナルドだ。ブランドイメージはますます下降する。それだけでなく売上も下降する。カサノバCEO体制発足以降、必死になっているファミリー層の呼び戻しはますます遠いものになるだろう。それ以上に経営にとってマイナスのインパクトもある。それは利益率の問題だ。中国の工場で安く作っていたものが別国の工場に移管されることによって、少なからずコストは上がるはずだ。数年前から利益率にこだわってFC化を進めるなどしてきた日本マクドナルドにとって生産コストが上がることは痛手だ。とまらない客数減、客単価減のトレンドが加速することに加え、コスト高は大きなダメージになる

ここ数年の不調、そして今回の問題の根幹にあるのは、業務効率化を追求しすぎた経営の問題なのだ。マクドナルドのスタッフからスマイルが消え、オペレーション力も落ちた。客数減・客単価減は行き過ぎた業務効率化がもたらした弊害だ。今回の問題は”行き過ぎた業務効率化”を見直すための重要なシグナルだ。”行き過ぎた業務効率化”によって痛手を被った企業は少なくない。

すき家が深夜時間帯に一人の店員がすべての作業を行う「ワンオペ」を実施し問題になったことは記憶に新しい。行き過ぎた効率優先であったため、店舗スタッフが揃わなくなり、時間短縮や閉店に追い込まれた店舗が続出した。マクドナルドは、ここまで問題が表面化してはいないが、不調の根本要因は同じところにある。”行き過ぎた業務効率化”は、一時的には利益率が上がるなど企業にメリットをもたらすかもしれないが、実は企業の資産を徐々に食いつぶし、企業の体力を弱めている面がある。マクドナルドがやるべきことは”行き過ぎた業務効率化”を見直すことだ。

では具体的にどうすれば良いのだろうか。現実に即して考えてみると以下のようなことになる。

■ 泥沼から抜け出すために、日本マクドナルドがやるべきこと

一つ目はFC加盟店との関係の見直しだ。FC展開を進める中で、FC店からは本部の高い要求を厳しいと感じる店舗も少なくない。FC店から見れば、マクドナルド本部との関係は”主従関係”なのだ。そうではなく本部とFCが”WIN-WN関係”になるよう関係を見直さなければならない。お客さんと接するスタッフ一人一人が本部の考えを理解し、自主的に行動するような関係になるためには、主従関係ではなく、一緒になって働いている関係でなくてはならない。細かい点は省略するが、マクドナルドとFC店の契約関係も含めた関係の見直しをするべきだろう。

二つ目はオペレーションの単純化だ。期間限定メニュー、メニュー数の増加によって、店舗でのオペレーションはますます煩雑化している。店員からスマイルが消えただけでなく、ホスピタリティも弱くなっている。それだけでなく提供されたハンバーガーなども包みを開いてみると、すでに崩れかけているような雑な提供のものもある。スタッフがもっとシンプルにオペレーション出来るよう一時的にでもメニュー数を少なくすることを提言したい。これはマクドナルドの経営効率化にも寄与する。なぜなら、今回の問題でチキン関係商品の生産コストは上がるはずだ。経営的には、生産コストが上がる分をどこかで補填しなければならない。メニュー数を減らすことは、オペレーションの改善だけでなく、調達コストの削減も期待出来る。少品目大量生産の方が多品目小量生産よりも効率的だからである。期間限定メニューや豪華メニューで来店客数増加を図ったり、客単価の向上を図ろうとしても、今のマクドナルドには相当難しい。まずはスタッフのモチベーションを上げるための戦略こそ進めるべきものだ。

賞味期限切れ問題全体は2,3ヶ月程度でうやむやに終息するだろう。なぜなら日本マクドナルドやファミリーマートだけでなく、また上海福喜食品だけでなく、多くの企業が関わっていることに消費者が気づいたからだ。例えば、2013年10月の阪神阪急ホテルグループに始まったメニュー偽装問題。最初に謝罪会見をした阪神阪急ホテルの社長は辞任に追い込まれた。その後、次々にホテル各社が偽装問題を公表。中にはホスピタリティで世界トップと言われるホテルもあったが、阪神阪急ホテルのように経営陣の辞任に発展することはなく、大きく叩かれることもなかった。そして、いつのまにかうやむやで問題は話題にのぼらなくなった。

リスクマネジメントPRの鉄則として「不祥事が起きたらすぐに包み隠す事なく謝罪をする」というものがある。これは1〜3社レベルで問題が発生した時には正しい。しかし、ホテルでのメニュー偽装問題のように、あまりにも多くの企業が問題を抱えていたことがわかると、消費者の感覚は薄れてしまうのだ。これだけ情報が溢れていて、日々の生活を抱えている消費者にとっては、嫌なことが起きれば最初は憤慨しても、その問題だけにずっとこだわって生きることは難しい。したがって、どんなことも徐々に関心は薄れいく。良くも悪くも人間にはそういう面があるのだ。3ヶ月も経てば、問題が起こる以前とほぼ変わらない状況に戻ってしまうのだ。

今回の問題も構造は同じだ。その問題を真摯にとらえて、本気で改善していくのか、それとも大きな被害にならないよううまくやり過ごそうと考えるか。この経営判断こそが、企業にとって本当に重要なことなのだ。

閉じる コメント(3)

消費者もバカではありません。
様々な点でマックは顧客満足度と言う原点から考えていかないと、益々傷口深くなると思われますね。

2014/7/27(日) 午前 10:44 vegeeta

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ただでさえ中国食品に不信感があるときに、現地ではチェックできない状態だったことが発覚して、供給先を変えても不信感を払しょくするのは容易ではないと思われます
残業代不払いとか名ばかり店長とか、ブランドイメージも落ち過ぎたかも・・利益だけしか見ない経営って、本当にそれでいいのか問い直す時期にきていないでしょうか

2014/7/27(日) 午後 8:57 [ ねこかげ ?影 ]

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Vegeetaさん、ねこかげさん、コメントありがとうございます。ファストフード業界の行き過ぎた効率重視経営のツケが出た感じだと思います。本当は抜本的に経営を変えなければ今のポジションを保つのは難しいと思います。ただ「多少ダメでも、安かったら良い」という消費者も徐々に増えているので、マクドナルドは最終的にはそういう人達には受け入れられるものになるのかもしれません。

2014/7/28(月) 午後 2:53 [ ラッキーマン ]


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