マーケティングの現状と未来を語る

2014年ヤフトピに8度の記事掲載。わかりやすい裏読みでメディア取材多数。マーケティングコンサルタント。個別相談も受付中

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■ 重なる問題

・2014年12月31日、東京都江東区の店舗で白いビニールが混入。ビニール片はスタッフが紛失。製造工程ではなく店舗での混入の可能性について調査中と発表。

・2015年1月5日 青森県の店舗でチキンナゲットにブルーのビニールが混入。タイ工場での製造過程において混入したものと発表

2014年夏、大阪府にて、でフライドポテトの中に人間の歯。製造工程での混入の可能性は低いと発表。

・2014年12月19日、福島県店舗にて、サンデーチョコレートを食べた子どもがケガ。製造機械の損傷によるプラスチック片混入。保健所に提出済で、購入した消費者にも説明済と発表。


■ とにかく早くと開かれた謝罪会見

今回の会見は日本マクドナルドの菱沼取締役、日本マクドナルドHDの青木取締役によって行われた。2014年夏から現在にかけて発生した問題についても発表された。今回の会見において、カサノバCEOは海外から帰国出来なかったため出席出来なかった。さまざまな重要案件を抱える大企業のCEOともなれば、海外のVIPとの会合などでスケジュールも埋まっているだろうから、すべてをキャンセルして急遽帰国することは難しいことも現実的にはあるだろう。上海福喜食品問題の時には、問題発覚から1週間経って初めてカサノバCEOが会見を行ったことで、より多くの批判を受けたマクドナルド。問題発覚からいち早く会見を行うべきという判断は妥当だろう。したがってCEO不在の会見でも、感情的にカサノバCEOとマクドナルドを批判すべきではないだろう。そのあたりを踏まえた上で客観的にマクドナルドの構造的な2つの問題点について指摘したい。

■ 理由1:根底で変わらない経営陣の危機意識の甘さ

まず最初に言えるのは、マクドナルドの経営陣は本当の意味で「安全面に対する危機意識」を持っていなかったということだ。今回の問題が発覚する前に、いくつかの問題が発覚している。それらは問題を訴えた人、保健所への届け出などを行い、解決済みだったり、内容調査中というものだった。その時点で世の中に公表していなかったことを、今回の問題が起きたことで公表した。上海福喜食品問題以降、少しのミスも致命的になりかねない中、出来るだけ波風を立てたくない経営者心理もわからなくもない。ただ、厳しい状況だからこそ、些々な問題も消費者にオープンにすべきだったのだ。

今回の問題が起きなければ公表する必要がないと考えていたものを、今回の問題が起きたことで公表した。この対応も消費者からすれば印象が悪い。上海福喜食品問題以降、工場を変更したり、テレビCMや店頭等で安全面を強調したり、ホームページで製造工程や原材料産地の公表などをすることで、消費者に理解を求めていた。しかし今回の問題で、マクドナルドは不祥事を隠していたという印象を消費者に与えてしまったのだ。つまり、かえって悪い結果となった。広報視点からみれば、経営陣の危機意識は甘かったと言える。また、実際に問題が散発していたことを考えると、根底の部分で、安全面への経営陣の危機意識は甘かったとも言えるだろう。

■ 理由2:文化の違いへの認識の甘さ

日本の消費者は世界の中でもっとも品質に厳しいとよく言われる。それは製品だけでなく食に関しても同様だ。性能面、品質面だけでなく安全面についてもとても厳しい。だからこそ、日本製品は世界の中で愛され、日本のホスピタリティは世界の中でもっとも高く評価されているのだ。

食の安全面において、日本企業のスタンスは、些細なミスもゼロにしようというものだ。一方、アメリカ企業のスタンスは、ミスはどうしても起きてしまうものであり、人体に影響が及ばなければある程度は仕方がないというものだ。したがってアメリカにおいて問題にならないようなレベルの問題でも、日本では大きな問題になってしまう傾向がある。そして、不具合というニュースはソーシャルメディアを通して、一気に広まってしまう。数十年かかって築き上げたブランドイメージも一瞬にして落としてしまい、時には企業の存続すら左右する問題になる。私は、このスタンスの違いの良し悪しを論じるつもりはない。ただ、一つ気になる点がある。上海福喜食品問題発生時、カサノバCEOが7日後にようやく開いたこと、その中で記者からの質問に対して「自分の子どもにも自信を持って食べさせられる」と返答したこと、生産体制における安全面に自信があると発言したことはカサノバCEOの本心だったのではないかということだ。上海福喜食品問題では賞味期限切れの肉を使っていたこと、床に落ちた肉をラインに戻したことなどが取り上げられたが、必ずしも人体に影響を及ぼすかどうかわからないものだ。もしかしたら、生きてきた文化の違いから、カサノバCEOは本当に大丈夫と思っていたのかもしれない。会見以降、想定以上の逆風が吹いて、安全面の見直しは進めてきたが、本当の意味では理解できていなかったのかもしれない。

■ 理由3:「店舗・スタッフへの配慮」の甘さ

これには2つの理由がある。共通するのは、マクドナルドのビジョン、仕事へのマインド、仕事の手順や接客方法などのスキルを現場まで徹底し切れていないことだ。

その裏にはある2つの理由の一つ目。それはFC(フランチャイズ)加盟店との関係悪化だ。原田会長(前CEO)時代から、マクドナルドは徹底した経営効率化を図ってきた。その結果、本部は潤って、FCが潤わない仕組みになってきた。また直営店を減らしてFC店を増やすことでも経営効率化を図った。つまりロイヤリティ収入などを増やすことにより、本部は一定の売上額を常に得られるようになった。その一方、本当は一番イキイキしていなければならないFCは苦しむようになった。FCのオーナーがイキイキせず、本部に不満があれば、現場のスタッフがイキイキと動くようになるはずがない。

二つ目の理由はアルバイトスタッフそのものの問題だ。10年前、20年前と比べて、アルバイトをする若者の仕事への意識は低くなった。きつい、苦しい、忙しい仕事はやりたくない。その仕事に就いたとしても、10年前、20年前のような仕事ぶり、気遣いは難しくなった。これはマクドナルドだけでなく、ファストフード、牛丼チェーン、コンビニなど多くの業界が抱える共通の問題点だ。若者の働き手が少なくなり高齢者と外国人スタッフの割合が増えている。私は若者を悪く言うつもりはない。10年前、20年前のアルバイトとは育ってきた環境が違う。その環境の違いを若者だけのせいにすることは間違っている。私が言いたいことは、これが現実であるということだ。

今回の問題は工場だけの問題ではない。ビニール片を無くしてしまったり、本部に報告がなかったという問題もある。実はこの2つの理由によって、店舗や現場意識はなかなか向上しないのだ。 このような問題が起きると”再発防止策の徹底”という言葉がよく使われる。重要なのは、マクドナルドの経営陣が現場のことを本気で理解しているかどうかということなのだ。それが無ければ、防止策は絵に描いた餅でしかない。

かつては超優等生企業だったマクドナルド、多くの子どもたちに愛されたマクドナルド。立ち直って欲しいからこそ、あえてマクドナルドに厳しい意見を書かせていただいた。

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