マーケティングの現状と未来を語る

2014年ヤフトピに8度の記事掲載。わかりやすい裏読みでメディア取材多数。マーケティングコンサルタント。個別相談も受付中

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テニスのATPファイナル、予選ラウンドBグループ。錦織選手の第二戦は、テニス史上もっとも素晴らしい選手と言われているロジャー・フェデラーに6-3,6-2のストレートで敗北した。ここ数年のテニス界は、ジョコビッチ、フェデラー、ナダル、マレーのBIG4と呼ばれる選手がおり、そこに食い込むようにワウリンカ、フェレール、ラオニッチ、錦織、ベルティヒなどがいる状態だ。錦織選手は初戦でBIG4の一角であるマレーをストレートで下し、第二戦のフェデラー戦勝利への期待も高まっていたのだが、結果としては完敗に終わった。

ファーストサーブは入らなかったものの錦織選手の状態はとても良かった。第1セット第1ゲームから、いきなり120%の力でプレーしていたように思う。120%とはパワーのことだけでなく、狙うコースの厳しさだったり、試合展開の作り方も含む。通常、勝利への駆け引きをしながら徐々にペースを上げ、ここ一番で仕掛けて行くテニスの世界では、最初から120%で攻めて行くことはあまりない。錦織選手は、その120%のスタートを見事に成功させ、序盤はフェデラーと互角に戦った。

■ 全盛時に近かったフェデラーのプレイ

錦織選手は良かったのだが、それ以上に良かったのがフェデラーだ。史上最強のテニスプレイヤーと呼ばれるフェデラーだが、全盛期は数年前のことだ。今は33歳。全盛期のプレーを知っているものからすれば、現在のプレーは物足りない。そのフェデラーがこの試合では全盛期に近いプレーを見せた。錦織選手が主導権を握ってプレーしても、前回のマレー戦のようにBIG4を含むすべての選手が普通は取れないようなストロークのエース級のショットをフェデラーはエースで返した。自分が120%の力を出しても相手に及ばない状態。錦織選手としては、ここ数年無かった状態ではないかと思う。

BS朝日で放送していた松岡修造さんも、この状況を見て「失礼な言い方かもしれないが、フェデラーが引退するまで、あと何回できるかわからない。その状況で、最高のフェデラーと戦える機会は貴重」というような発言をし「フェデラーを感じ、さらに自分のステージを上げ、強くなれ」ということも言った。そして第2セットの後半からは、あの熱い松岡さんの言葉数がほとんど無かった。

私は錦織選手や松岡さんとは天と地ほどかけ離れているが、私なりにテニスにすべてをかけた時期がある。学校の修学旅行に行かず、インターハイ関係の試合を優先した。1年365日、ラケットを振り、本気で日本チャンピオンを目指したこともある。だから、多少はテニスのことがわかる。昨日の試合は異常な状態だったのだ。

自分が120%でプレーしても、相手に及ばない。コートに入れば、誰の助言も受けられず、自分しかいない。錦織選手の置かれた環境は、どうしようもない状態だった。ただ、そんな状況でも、錦織選手は必死に考え、最後までまったく切れることなく素晴らしいプレーを続けた。テニスをやっていたから、わかるのだが、この手の打ちようもない状況において、最後まで切れずに、しかも素晴らしいプレーを続けるのは身体的にも精神的にも相当つらいものがある。松岡修造さんが無言になったのも、どうしようもない状態がわかるからというだけでなく、その状況の中でも切れずに戦っている姿に感動したという点もあるのではないだろうか。

■ 羽生選手、錦織選手に見るスーパースターの条件

先日、フィギュアスケートのグランプリシリーズ中国大会でアクシデントに見舞われた羽生選手。強行出場には賛否両論が渦巻いた。選手生命を考えたら、何か懸念点があれば棄権した方が良いと考えるのは普通だろう。しかし、最終的にすべてを背負うのは本人だ。羽生選手がリンクに立てば、誰のアドバイスも受けられない。錦織選手がコートに立てば、誰のアドバイスも受けられない。選手生命がどうのこうのではなく、今自分がなすべきことを、自分の責任で判断している限り、アドバイザーや観客に過ぎない私たちがどうこう言える話ではない。そこで棄権したり、あきらめて後悔するのか、それとも出場して後悔するのか、それを決めるのは選手自身でしかない。


普通の人が「無理だ、無謀だ、できない」と言うような状況であっても、突破していくからこそ時代は動き、人々は感動するものだ。普通に考えれば、無理をしない方が良い。そして良い状態の時に、良いプレーを見せれば良い。しかし、それはスポーツの上手な選手のことだ。数年、数十年に一度のスーパースターとは、多くの人が無理と言う状況でも想定外のプレーを見せる。だから、人は感動し、時代は変わる。錦織選手も、羽生選手も単なるうまいスポーツ選手ではないのだ。

■ 最後に

フェデラー選敗戦後のインタビューで「これを良い機会にしたい」と語った錦織選手。そこには悲壮感はなく、どこか楽しげな雰囲気と今まで以上の目の輝きがあった。第3戦のラオニッチ戦。すでに予選敗退が決まっているラオニッチだが、BIG4の次の座を狙う意味で、ラオニッチも一勝は取りたいところだろう。決して楽な相手ではない。ただ、錦織選手はやってくれることを期待したい。そして出来れば決勝でフェデラーと再戦し、勝利し、新たな伝説を作って欲しい。

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