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■ 追い込まれた代ゼミ
代々木ゼミナール(代ゼミ)は2015年度から全27校のうち20校を閉鎖し、全国模試も行わないと正式に発表した。かつて駿台、河合塾とともにSKYと呼ばれ、受験予備校御三家だった代ゼミは、どうしてこのような状況に追い込まれてしまったのか。SKYと呼ばれた時期は「生徒の駿台、机の河合、講師の代ゼミ」と呼ばれた。歴史をたどれば、1980年代には人気講師の多くが代ゼミにいたのだが、そのポジションは徐々に東進に奪われていった。2013年、流行語大賞にもなった「いつやるの、今でしょ」の林修先生がまさにその象徴であろう。
話を校舎にうつせば、代ゼミの校舎は本当に立派だ。代々木駅前にはタワーだけでなく多くの校舎が点在する。これだけ見れば、代ゼミの調子が悪いとはそうそう思えない。しかし、近隣に住んでいる私の目から見て、最近では予備校生の姿が少なくなったと感じていた。
それはそうだろう。これから大学全入時代は加速していく。2018年問題と言われる2009年を底にして下げ止まっていた18歳以下人口が、2019年以降にますます減少に向かう。2031年までに受験者にあたる18歳の人口は約33万人、大学入学予定者も17万人減少する。そもそも大学全入時代に入り、大学の経営すら危うくなっていく中で、大学受験のための予備校の存在価値は薄くなっていくのは必然だ。
だからこそ、ここ数年で代ゼミがSAPIXを、東進が四谷大塚を買収するなど、予備校が小中学校の受験塾を買収する動きが早まった。これは小中高という囲い込み戦略というよりも、大学受験予備校だけではビジネスとして厳しくなるのが明らかだったために取られた戦略だろう。富裕層は特に教育にお金をかけることが多い。富裕層だけでなく、良い小学校、良い中学校に入るためには、教育費用を惜しまない家庭は増え続けている。価格よりも質で勝負しやすい小中受験塾を買収することは、経営のポートフォリオとしても必然だったのだ。
■ 代ゼミの最大の間違い
予備校の人気講師の年収は数千万円にもなる。代ゼミがやるべきことは校舎を立派にしたり、校舎数を増やすことではなく、人気講師をそろえ、授業の質を充実させることだった。そしてインターネット時代を踏まえて、ネットを活用した授業や生徒とのやり取りを充実させるべきだったのだ。都市部よりも地方の方が、経済は厳しい。地方の家庭が都市部に浪人生を独り住まいさせたり、寮生活に入らせることは経済的にますます負担になっている。この中では生徒に都市部に来てもらうのではなく、ネットを使って自宅でも勉強出来るシステムを充実させることが必然だったのだ。代ゼミはそれが出来ず、東進はそれをやった。1990年前後には、ある意味色物的な存在だった東進は未来を見据えてサテライト授業を充実させ、講師を充実させてきたのだ。
■ 代ゼミの未来はあるのか
やや仕掛けるのは遅くなってしまった感はあるが、代ゼミの取るべき戦略はある。それは学校経営だ。現在の学校教育に満足していない家庭は少なくない。だからこそ日本の大学ではなく、海外の大学に進学する生徒も増えている。小学校から大学まで、社会経験のない先生がほとんどなので、社会に出てより役に立つ授業をして欲しいという生徒や親も増えた。その結果、大学では経営者や著名人が教授や講師になるケースが増えた。小中学校でも社会人経験者の教員採用少しづつは増えて来た。また海陽学園のようにトヨタなど企業がサポートする学校も出て来たのだ。
”親が高いお金を払ってでも子どもに行かせたくなる。生徒が授業を受けたくなる。”質の高さがまだ能古されているならば、代ゼミは学校を買収するか、講師を派遣する業務提携を交わすなど、学校経営に携わっていくべきだ。世界で活躍できるような子どもが育つ教育プログラムを用意し、世界の各種大学と提携プログラムを持つなど、学校教育をする中で高い質を提供していくことは出来るはずだろう。
もう一つ切り口があるのは生涯教育だ。少子高齢化が進むのは必然だ。大学受験者が減る一方、日々成長したい若い社会人は増えている。そして元気な高齢者も増えている。教育産業という点においては、受験にこだわるよりも、生涯学習を意識したビジネスモデルに切り替えるべきなのだ。
■ 最後に
ここ20年以上、競合と比べて後手後手の経営判断が続き、マーケティング的にも失敗が続いた。しかし、これだけスパッとやめた以上、次の一手が競合に先駆けた一手になる可能性は残されているだろう。次の代ゼミの発表が、代ゼミの存続を決める大きな発表になるだろう。
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