|
■ 「アイス・バケツ・チャレンジ」の盛り上がり
ALS患者救済のために始まった「アイス・バケツ・チャレンジ」。一人のALS患者から始まった氷水をかぶるか100ドル寄付するか、その両方をするかというアクションは、インターネットの動画サイト、ソーシャルメディアを使って、世界中に広がっていった。芸能界ではレディーガガや浜崎あゆみなど国内外を問わず氷水をかぶり、経済界でもビル・ゲイツ、豊田トヨタ社長、三木谷楽天CEOなど多くの経営者が氷水をかぶった。そして、その多くが同時に寄付をした。
そもそも「アイス・バケツ・チャレンジ」の目的は、患者救済への寄付とALSという病気自体をより多くの人に知ってもらうことだった。その点において、多額の寄付金を集め、ALSの存在を広く知らしめたという点において大成功だろう。2014年8月29日現在、約2ヶ月間に渡って全世界で加熱した「アイス・バケツ・チャレンジ」のブーム的な勢いは一段落した。ただ、あれだけの盛り上がりが長く続く方がおかしかったのであり、人々がALSに興味を失ったということではない。
■ 賛否両論の裏に見え隠れするもの
「アイス・バケツ・チャレンジ」については決して賛成意見ばかりではない。内容は理解できるもののチェーンメール的なやり方はやるべきではないという意見。他にも難病はたくさんあるから、このようなやり方でALSだけに寄付が集中するのはおかしいという意見。「アイス・バケツ・チャレンジ」をやった人は、次の3人を指名するのだが、指名された人がやらなければならないという無言の圧力がいやだという意見もあった。
「アイス・バケツ・チャレンジ」の目的に照らし合わせれば、今回のプロモーションは成功であり、批判されるべきものではない。その一方、多くの否定的意見が出るのも健全な状態だと考えている。やりたい人はやれば良いし、やりたくない人はやらなくても良い。最初は氷水をかぶっていた人達ばかりに注目が集まったが、徐々にに氷水をかぶらない人達が増えるようになった。芸能人でも武井壮氏が、自らの意見をきちんと言って氷水をかぶらなかった。その後、氷水をかぶらなかった人はさらに増えていった。
私が良かったと思う点は「氷水をかぶった人/それを支持する人」にも「氷水をかぶらなかった人/それを支持する人」にも極端に流れが傾かなかったことだ。
寄付やボランティアという行為は難しい。本人は本気で寄付やボランティアのことを考えてやっていても、別の人から見ればまだまだ考えが足りないという見方になることもある。企業も同じで、企業イメージのPRのためではなく、本当に社会に対して善を行おうとしてやっていることも、ある人から見れば偽善的に取られることもあるのだ。今回の「アイス・バケツ・チャレンジ」は今後、企業や個人が寄付やボランティア活動をしていく上で、重大な教訓まで残してくれたのだ。
■ 「アイス・バケツ・チャレンジ」がブレイクした4つの理由
最後に「アイス・バケツ・チャレンジ」がなぜここまで広がったのかについて触れたい。
1)人々が応援したくなる内容だったこと
2)インターネット特にソーシャルメディアによって拡散されやすい状態であったこと
3)ある段階から著名人が本プロモーションに自主的に参加したことが挙げられる。これによってソーシャルメディア上だけでなく、一般的なニュースのトピックスになって、ネットの中だけでなく、より広い一般の世界へと広がっていたこと
4)コンテンツ自体に面白味を感じた人が多く(ALSのことを面白いと言っているわけではありません)、自分も参加したくなる要素を秘めていたこと(※残念ながら理解不足すぎる人もいましたが)
■ 「ホワイト・バンド」プロジェクトとの共通点
実はソーシャルメディアでの拡散力の違いという部分を除けば、「アイス・バケツ・チャレンジ」の多くの要素は、2005年に世界の貧困を減らそうとする「ホワイト・バンド」プロジェクトと似ているのだ。ホワイトバンドの場合には、バンドを購入するということだったが、その時も著名人がこぞってホワイトバンドを購入し、腕につけて、一時期売り切れになるほどのブームになった。
もちろん重要なことは、ALSにしても、貧困問題解決にしても、一時的なブームで終わらせるのではなく、気にし続けることであり、継続的に支援を続けて行くことである。そのきっかけとして、今回の「アイス・バケツ・チャレンジ」は良いものだった。きっかけがあるからこそ、広がりができるものだ。
病気に関しては、企業の製品やサービス以上に、患者さんへの配慮が必要であり、繊細な部分を気にする必要がある。だからこそ軽々しいことはやりにくい。それでも「アイス・バケツ・チャレンジ」や「ホワイト・バンド」のようなやり方によって大きな成果が生まれるのも事実だ。このことはマーケティングに何らかの関わりを持つ人ならば覚えておくべきポイントだ。
|