大文字山を食べる

『大文字山を食べる』(改訂増補版)が、螢灰肇灰箸ら出版されました。

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子どもの頃に見ていたアニメに「妖怪人間ベム」というのがあった。
暗い色調の絵が怖かった。
これが子供向けなのか?
一番怖かったのは、本篇が始まる前のナレーションだった。
「…3つの細胞が生まれた・・・・それは、人間でもない、動物でもない…妖怪人間なのだ」
みたいな感じだったと思う。
不定形の「細胞」がドロドロと動いているだけのシーンが怖くて見られなかった。
このナレーションで「細胞」という言葉を知った。
そして、「細胞とは恐ろしいものだ」と思いこみ、
「もし細胞に出会ったら、どうしよう」
と不安におののきながら少年時代をすごした。

さて、ここに粘菌という生き物がいる。変形菌とも言う。
(↓『粘菌』誠文堂新光社、2007年、より)
イメージ 10

「菌」という字がついているが、菌類ではない。
アメーバのように動くが、動物でもない。
細菌でもなければ、ウイルスでもない。もちろん植物でもない。

粘菌のライフスタイルは大きく分けて、「子実体」と「変形体」とに分かれる。
(↓『日本変形菌類図鑑』平凡社、1995年、より)
イメージ 11

「子実体」はキノコに似ている。
とは言っても、いわゆる「傘型」のキノコではない。
もっと小さくて目立たないヤツである。
「子実体」は胞子をつくって飛ばす。
そういう点では菌類や植物に近い。

ところが、胞子が生育適地に落ちて発芽すると、大形アメーバ体に成長して動きだす。
これが「変形体」である。
「変形体」の粘菌は網目状に伸びていって、細菌やバクテリアなどの微小生物を食べる。
こういう点では、まさに「動物」だ。
粘菌研究の第一人者:南方熊楠は、「粘菌」が「動物」であることを強硬に主張し、従わない学者らに対して強い調子で非難しているくらいだ(当時は、生物は「動物界」「植物界」の2分法だった)。

現在の生物学では、生物は5界に分けられ、粘菌は「プロチスタ界」という種類に分類されているようである。
が、「プロチスタ界」というのは、他のどこにも入らない「その他」みたいな「ゴミ捨て場」で、その「プロチスタ界」の中でも粘菌には親類がいないというから、よほど変わった生物のようである。
動物でも植物でも菌類でもなく、細胞がアメーバ状になってドロドロと動く。
まさに「妖怪人間」を思い出させる!

   ×  ×  ×

粘菌については、わたしも勉強中で、あまりよく理解していない。
観察例も少ない。
粘菌の変化のスピードはとても早く、ある日突然、目につく。

2009年7月30日↓
イメージ 1

自信はないのだけど、粘菌の一種ススホコリ(キフシススホコリ?)だと思う。
ピンボケで申し訳ないが、変形体だろう。
これは翌日には姿を消した(見えなくなった)。

2009年8月11日↓
イメージ 2

さきほどと同じ切株に、同じススホコリ(キフシススホコリ?)。
子実体を形成しているところか???
大きさを比較するものがないので分かりにくいかもしれないが、一塊が直径1センチくらい(写真では3つの塊になっている)。

2009年8月20日↓
イメージ 3

別の木で。やはりススホコリ(キフシススホコリ?)だろう。

2009年8月28日↓
イメージ 4

イメージ 5

イメージ 6

変形体は細胞壁がなく細胞膜がむき出しなので自由に形が変えられる。
そして、ここから網目状になって、秒速1mmくらいで進行していく。
時間がなかったので、ゆっくり観察できなかった。

2009年11月27日↓
イメージ 7

イメージ 8

季節がとんで、比較的最近。
やはり、倒木に発生。
図鑑で名前を調べたら「トビゲウツボホコリ」が一番ちかい。
この粒々の一つ一つが子実体だ。たぶん。
一粒が1〜2ミリ程度。
イメージ 9

赤い球の部分が子嚢(しのう)で、この中に胞子が入っている。
よく見ると、赤い子嚢の下に白い柄がある。
名前が分かれればよい程度に大雑把な写真だけ撮ってしまった。
もっと接近して、微細な写真を撮っておけばよかったと後悔している。

先日の「大文字山ハイク」の案内の前に、
「当日、何かお見せできるものはないか?」
とキノコを探していたら、上の粘菌を見つけた。
帰宅して図鑑で名前を調べ、粘菌について説明できるように一夜漬けの勉強。
しかし、その成果を出す場面はなかった。
翌日見に行くと、もう粘菌は見当たらなかったのである。
キノコよりもさらに消長の早い、一期一会の森の妖精である。

閉じる コメント(21)

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☆kimidoriさん。
秒速1mmというのは後で本で知りました。
そのため、現場では移動の観察をしてなかったのが残念です。
いつも「その場かぎり」だと心に戒めなくてはなりません。
トビゲウツボホコリは、わたしもイクラを連想してしまいました。
これならベジタリアンのわたしでも「疑似イクラ丼」として食べられるかな?
わたしたちが気付かないだけで、いつでも空中には妖精たちが飛び交っているのでしょうねぇ。
まさしく神秘です。

ポチありがとうございます。

2009/12/6(日) 午後 3:49 安田陽介 返信する

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こんにちわ。
ウチの植木台にしている丸太の端の方から上の黄色いのが出てきたことがありました。
とっても気持ち悪く、すぐふき取ってしまいましたが、菌なんですね f(^_^;
イクラのようなものといい、黄色いのといいまさに妖怪のようですね!!
ポチ♪

2009/12/6(日) 午後 4:10 アキチャン 返信する

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☆アキチャンさん。
粘菌は「菌」ではないのですが…
多くの人が「気持ち悪い」と感じられるようですね。
アキチャンさんは「妖怪」派なのですネ。
人間に特に危害を加えないので、次はそっとしておいてあげてください。
すぐにどこかに行きますよ。(米国では3週間居座ったという例がありますが…)

ポチありがとうございます。

2009/12/6(日) 午後 6:53 安田陽介 返信する

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びっくりしました。

時々木にべたっと何かがこびりついているようなものを見ますが、アレもこの類なのでしょうか。

それにしても・・・イクラですねほとんど。

そして、うごめくんですね、生きているんですねぇ・・・

2009/12/6(日) 午後 7:32 [ ks ] 返信する

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ついでながら
「妖怪人間」のベロが人間と友達になりたいのに避けられたりいじめられたりそういうシーンがしょっちゅうで、見ていて辛くなったことを思い出しました。

2009/12/6(日) 午後 7:33 [ ks ] 返信する

こんばんわ。
黄色の写真までは「ほぉ〜」と見てましたが、突然赤いツブツブになってビビりました。
ちょっと気持ち悪い。
イクラも苦手なもんで・・・(T_T)

2009/12/6(日) 午後 7:48 [ - ] 返信する

☆かかまるさん。
木にべっとり…おそらく粘菌ではないでしょうか。
「知るぞ知る」的なマイナーな存在ですが、山に行く人ならば、じつはあちこちで目にしていると思います。
わたしも今まであまり関心を向けていませんでした。
知ってしまうと興味がわいて探してしまいます。

妖怪人間…見ていたにもかかわらず、内容はほとんど理解していませんでした。
ベロが3本指で人間の子どもから気味悪がられているシーンは覚えています。
平成になってからのリメイク版では指は5本になったようですが、それでもやっぱりいじめられているのでしょうか?
昔のアニメは可哀想なところが沢山ありましたね。

2009/12/6(日) 午後 8:27 安田陽介 返信する

☆くらげさん。
あれ? ふつう、アメーバ状のを気味悪がって、つぶつぶ状のは平気〜だと思ったのですが…

イクラ、お嫌いですか?
わたしも、昔ちょっと食べたきりです。
このイクラ状の粘菌、どんな味がするのでしょうねぇ。

2009/12/6(日) 午後 8:33 安田陽介 返信する

どんな味(^_-)-☆
また、報告を読ませて頂きたいと思います♪

2009/12/6(日) 午後 8:48 [ - ] 返信する

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◇くらげさん。
そ、そんな…
食べさせないでくださいよ〜
(たぶん粘菌を食べた人はいないだろうなぁ)

2009/12/6(日) 午後 10:12 安田陽介 返信する

>これならベジタリアンのわたしでも「疑似イクラ丼」として食べられるかな?
(陽介さんの言葉より抜粋)
ヤル気あるじゃないですか(^^)

しかし、この記事は写真を避けるために一気に下におろさないといけないのが辛いところです・・・

2009/12/6(日) 午後 10:54 [ - ] 返信する

▽くらげさん。
ははは(^_^;)
身から出た錆、というわけですな。
わかりました。
疑似イクラ丼は無理ですが、今度見つけたら一粒食べてみましょう。
しかし、キノコと違って食/毒が云々されないのは、粘菌を食べた人も、食べようとした人もいないということでしょうねぇ。
食べて、そのまま妖精の世界に行ってしまったら…線香の一本でもあげてくださいませ。

2009/12/6(日) 午後 11:17 安田陽介 返信する

安全性が確認されてから、ご試食願いますm(__)m
誰か食べた人は居ないのかなぁ・・・。
赤いブツブツ、ちょっと危険な香りが漂ってますね。
イクラ嫌いのせいもあるかとは思いますが(^^ゞ

当面は大文字で食べられるものだけを食べていてください(^^)
イチョウのお茶も、銀杏も、そしてキノコも楽しみにしてます♪

2009/12/6(日) 午後 11:57 [ - ] 返信する

△くらげさん。
誰がどうやって安全性を確認するのでしょう?
くらげさん、おひとついかが?
おいしかったら、イクラ嫌いが変わるかもしれませんよ。

2009/12/7(月) 午前 0:24 安田陽介 返信する

一粒くらいなら、食べられますよ。
それに「イクラ」じゃないし!
魚卵一般が苦手なんです。

現場で群生している姿は、見られないので(気持ち悪くて)、5粒くらい取ってきて頂けますか(^^)
チャレンジャーですから、「初めて食べた人」になれるかも(^^)v

2009/12/7(月) 午前 0:29 [ - ] 返信する

○くらげさん。
禁断の赤い粘菌は、まず最初に女性が食べて、それから男が食べて…ですね。
今度、採ってきます。

2009/12/7(月) 午前 8:42 安田陽介 返信する

お医者さんの診察時間内に試食してみましょう!
何かあれば、すぐに医者へ駆け込めばいい(^^)v

2009/12/7(月) 午後 2:06 [ - ] 返信する

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□くらげさん。
どうか、くらげさん試食してください。
それで、わたしに医者をやらせてください。

2009/12/7(月) 午後 6:03 安田陽介 返信する

純粋な研究精神が・・・
流れが変わってますよ(-"-)
大文字山に失礼じゃないですか!!

2009/12/7(月) 午後 6:25 [ - ] 返信する

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◎くらげさん。
これは、これは、失礼しました。
大文字山にも失礼でしたかな。
ま、この件はこれくらいで・・・

2009/12/7(月) 午後 9:28 安田陽介 返信する

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