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このところ、私の朝は遅い。
半月前までは、お年寄りが起きるような時間帯にぱちっと目が覚めていた。
目覚ましアラームなんて不用。
朝食を用意し、弁当を作り、化粧を終えた頃
「遅くなりました」と鳴り出ししたアラームを止めてた時期が嘘のよう。
主治医のナイスチョイスな眠剤によって、今はアラーム予約時間ぎりぎりに目が覚める。
夜が明けようともしていない時間帯に起きていないと、なんだか損した気分になる。
そんな時間帯に起きていたとしても、これと言って有意義な時間を過ごしているわけじゃないのに。
布団から這い出して、日課一番の体重を量る。
そこまでの短い距離、花が足下に絡みついて何度か蹴りそうになるが花は気にせず前を行こうとする。
知っているよ。おはようの挨拶と同時に「美味しい餌」を要求してるんだろう?
分かっているなら先に餌を与えて洗面所に行けばよいものの、
起きぬけの頭はサービス後回しだから、花はしつこく足に纏わりつく。
体重計の電源を入れて、00の数字が表示されるまでの数秒間にも
体重計の上に乗り降りするもんだから、なかなか自分の体重が量れない。
花が洗濯機の上に飛び乗り、にゃーにゃー鳴いてる隙に体重計に乗るんだけど、瞬時に下りていやがらせのように私の足の間から顔を出す。
体重計はありえない数字を示すものだから、もやもやした気分になる。
お望みの餌が皿に盛られるまで、花の足下攻撃は続く。
花がサッカー選手なら、十分にプレッシャーを与える役割をこなしてると言える。
サムライブルーに貸し出してあげたいくらいだ。
昨日は強い雨がよく降った。
梅雨に入って雨らしい雨が降らなかったので、これは水不足になりやすいこの地方には
ありがたいことなんだけど、外に出る時間帯に降られるのは困りもの。
強雨が続くなら、じじいさま宅訪問は取りやめにしたかったけれど
その時間になる頃には雨も上がり曇り空になっていた。
このところ、じじいさまはおとなしい。
前回は土日に顔を見せに行ったのだけど、
その後は電話でプレッシャーをかけてくることはなかった。
ああ、一度だけ電話があったけれど「死ぬ死ぬ電話」ではなかった。
じじいさまの顔を見るまで、「もしかして、冷たくなってたらどうしよう」と毎回思う。
それは、じじいさまの死ぬ死ぬ詐欺のせいなんだ。
余命1カ月の自己申告から、すでに半月は経っている。
それがじじいさまの思いこみだと分かっていても、頭の隅に置かれてる余命は気になるところ。
合鍵でじじいさまの部屋に入ると、ベッドで横になっていた。
テレビは、耳の不自由なじじいさまにしては小さな音量でつけっぱなし。
ぱっと見ただけでは、起きているのか眠っているのか判断がつかない。
大声で声をかけて手が動いた時にようやく「あら、起きていたのね」と分かる。
昨日のじじいさまは元気がなかった。
訪問看護の時間になっても、ベッドに横たわったままでため息をつく。
ヘルパーさんたちが到着するまで、私は血圧計の記録を血圧手帳に書き写す。
その間、じじいさまは高齢者住宅付きのヘルパーさんたちの愚痴をこぼす。
「部屋の外で会っても、声もかけてくれない」
「朝昼の食事を持ってきても、手渡すだけで話もしてくれない」
そんなことが不満らしい。
訪問介護にやってくるのは病院付きのヘルパーさん。
昨日は、美玲ちゃんの当番ではなかった。
曜日別に薬をセットしてもらいながら、ヘルパーさんの問いかけに答えるじじいさまだけど
「落ち込みが激しい。目が見えないからもう死ぬ時期も近いだろう」と
いつもと変わらぬことを話す。
眼科5軒行っても異常は見つからない。どこへ行っても「ドライアイ」の診断。
眼科の出すヒアルロン酸でどうして改善しないんだろう?とずっと不思議だったけど
昨日、じじいさまが目薬をさしている場面に出くわして漸く分かった。
じじいさまはヒアルロン酸を差した直後に、市販の目薬を差していたのだった。
せっかくヒアルロン酸を差しても、その後市販の目薬で洗い流せば
ヒアルロン酸の効果などあるわけがない。
それを私が指摘してもじじいさまは聞かないので、ヘルパーさんから話をしてもらった。
このところ、「外に出る気分ではないから外出もしてない」と落ち込んだ顔のじじいさまに
ヘルパーさんが
「最後に外に出たのはいつですか?」と問いかける。
「最後に出たのは…昨日、買い物に行った」
ずっと外に出ていないといいながら、前日に出かけてるじゃん…。
それも行った場所を聞くと、そこからゆうに5キロは離れた場所。
杖をついたよちよち歩きでよく行けたものだ。
「何を買いにいったんですか?」
「あれもこれも買いたいと思ったけど、いろいろ買っても死ぬなら勿体ないと思って、蠅たたきを買ってきた」
指さす方向を見たら、壁に真新しい蠅たたきがかかっていた。それも色違いで二本。
「どうして二本も買ったの?一本でよかったじゃない」
と私が言うと
その言葉にはスルー。責められたくなかったみたい。
時間になり、ヘルパーさんたちが帰ると
じじいさまは私に二つの紙袋と小銭の入った袋を差しだした。
「もういらんけん、ヤスミンが持って帰って」
所持金も全ていらないと言う。
預かるのは構わないけど、所持金なしだと買い物に行きたくなったら困るだろう。
お金がいるたびに呼び出されてもかなわないから、一つの封筒だけを受け取った。
また蠅たたきが欲しくなったら困るもんね(笑)。
帰り際にまた肉をもらったよ。
昨日は、鶏肉に豚肉。どちらも冷凍してあった。
バスで帰るので荷物は困ると断ったけど、
「死ぬまでに食べきれん」と押しつけられた。
弱々しくなったじじいさま。
次回の訪問看護では美玲ちゃんが来てくれるといいけれど。
美玲ちゃんとのお散歩なら、じじいさまも少しは一緒にお散歩したくなるんじゃないかな。
来週までの様子をみて、精神科の受診を早めようと思う。
高齢者住宅を出ると、空は晴れていた。
じじいさまの心が晴れることはあるのかなぁ。
見守りは続けなきゃ
☆昨日の一日一善
・バスで、アンパンマンのぬいぐるみを持った彼にまた遭遇。
昨日は席を譲った。
★昨日の一日一悪
・昨日は疲れていたので、夕飯作りをさぼりわらしと外食。
疲れていると言いつつ、ひとりで風呂屋へ行った。
のんびり炭酸泉に使ってリフレッシュ。
わらしにはコーヒー牛乳買って帰ったよ。
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