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今日はセルフディスカウントクーポン実施日よ。
近所のスーパーで、日曜月曜にお買い物をすると
値引きシールをいただけるの。
一枚に、45円、30円、10円がふたつ、 全部で4つの値引きシールがついてるわ。
1000円のお買いもので一枚もらえるの。 でも、それは一回のお買いもので三枚まで。
1万円分買い物したって三枚しかもらえない。 ここんとこ、ちょっと納得できないわね。 一度店長を呼び出して膝詰談判をしたいと思ってるわ。 私は背後にお買い物客を数十人程従えて、レジ後ろのスペースに立つ。 正面には店長が自信に満ちた余裕の表情で立っている。 間には西部劇決闘直前のように一陣の砂埃が立ったと想像してほしい。 「会社の方針ですから申し訳ございませんが、ご要望にはお答えできません」
ほらほら、口角をあげてにっこりほほ笑みを浮かべてるわ。 「いいでしょう。それでは全店の消費者に声をかけて、組合を立ち上げますわ。不買運動も辞さない覚悟です」
私はジャンヌ・ダルクになったつもりで背筋を伸ばす。
「お客様、セルフクーポンは日ごろご愛顧いただいているお客様に対するサービスとして実施させていただいているもので、お客様の権利とは異なるものです」
「1万円の購入も3000円の購入も同じ扱いでは納得できませんわ。店としては3000円より1万円購入してもらった方がありがたいんじゃありませんこと?」
「それはそうですが、配布枚数にも上限をつけませんと、店側の負担が大きくなりすぎます。それで皆様の平均購入額は三千円ぐらいだろうと上限を決めたわけです」
「納得できないわー。ねぇ、みなさん?」
「一回3000円なんて、少なく見積もりすぎよっ!」長ネギを握ったご婦人がネギを突き上げる。
背後の支持者たちは「そうよそうよ」と口々に声をあげる。 「もう、ここで蟹なんて買わないわよ!」と背の低い年配の女性が声をあげる。 えっ?蟹?正月でもないのにこの人蟹を買うの? 団体のご婦人方が一斉に年配の女性の顔を見る。驚きと羨望の眼差し。 「いやいやいや、たくさんご購入いただく場合はレジを何度かに分けてお支払いいただければ、購入金額に応じたシールをお渡しすることができますから」
年齢の割に白髪交じりの髪がぼーぼーの店長は裏技でも披露するように自慢げな顔。けれど何度も髪に手をやるのは焦りが生じた印。 「それって、とっても面倒なのよっ!」私は負けない。
ご婦人方も「そーよそーよ」と声を合わせる。 団体を扇動するって気持ちいい。
「大体ね、50円シールが45円に変わったのも客をばかにしてるわ」
「そーよそーよ」 「消費税8%になったと同時に、商品の定価を同時に上げたでしょう!悪徳スーパーだわっ!」 「そーよそーよ」 「いえ、それはですね。それまで会社側としても値上げを堪えに堪えてきたんです。赤字覚悟で抑えてきましたが、あの時に上げておかなければ当社も経営が成り立たなくなってきていたのです。ご理解ください」
「なーに言ってんのよ。周辺のスーパーより高いくせに!」
「そーよそーよ」 「ですがお客さま方、ここは一般スーパーとは差別化した高級食材を扱うスーパーですので」
「同じ商品でもが高すぎるのよー!」
「そーよそーよ」 店内はご婦人がたの声の大合唱。集団ヒステリーの中で私も躁状態。
店長の首を取り、クーデターを成功させるのも時間の問題だ。笑いがこみ上げる。 するとその時、館内アナウンスが流れる。 『本日はご来店ありがとうございます。只今より鮮魚コーナーにおきましてタイムセールを実施致します。1280円お刺身盛り合わせを30分間に限り780円でご提供いたします』
一瞬静まり返ったご婦人たち。はっと我に返り土石流のごとく鮮魚コーナーへ流れて行った。
取り残された店長と私。私はがっくりと膝をついて革命の失敗に唇をかんだ。 「お客様、今後とも我がスーパー○○をよろしくお願いします」
店長はにやりと笑って深深と頭を下げた。ふっさふさのかつらを取って。 …いけない。また悪い癖で妄想に走ったわ。
買い物カートをつかんで、買い物かごを乗せ、さあお買いもの開始。 片手にはセルフディスカウントクーポンを束で持つ。 まずは肉のコーナーから。
牛にしようか豚にしようか、それとも鶏? うーん、毎週思うのよね。クーポンの日の肉の高さ。 これじゃあ、クーポン貼ってもいつもと同じぐらいの値段になるんじゃないの? ほんと、不徳のお店だわ。 こんな手には乗らないと、普段と値の変わらない鶏肉あたりを買っておく。 鮮魚コーナーは普段と同じお値段。
お刺身買おうかしら…。 ところがお刺身コーナーには必ずと言って男性が立っている。 早く選んで立ち去ってほしいのに、いつまでも頬に手を当てて立っている。
品物を見定める目は厳しそうだけど、買う気はあるのですか? やっと立ち去りかけたかと思いきや、後ろ向きにバックして戻ってくる。 私だって見たい。買いたい。すぐに選ぶからどいてくれ!と思う。 その男性のそばに歩み寄るご婦人。どうやら奥様のよう。 男性の横を通りすがりに 「買わないよっ!」と一声告げて歩いて行った。 男性はその声にも動じず、一層前かがみになって刺身を見る。 さっきのご婦人に詰め寄って、「あれをどうにかしてくれ!」とお願いしたい気分だった。 夕刻すぎの買い物はとてもイライラする。
夫婦で買い物に来ている男性に、イライラする。 買わないくせに商品に貼りついて動かないし、 奥さんにくっついて歩いてるが、周りの客の動きは頭に入ってないから あちこちで客の通行止めをしている。 客の行き来を阻むのは男性だけじゃなく、おばさんおばーさんにも多いけどね。 目ぼしいものを買ってしまって、残るのが10円シール。
要るものは買ったんだから、残ったシールは潔く捨てるか 他の買い物客にあげればいいんだけど、なんだかもったいなくてそれができない。 売り場をぐるぐる回って、65円の猫の餌かブラックサンダ―にぺたぺたと貼ってしまう。 必要以上に財布を開けさせる店側の策略にまんまとはめられてしまう私。 情けない…。 こんな私の姿を、してやったりとかつらの店長はにやにや顔で見てるに違いない。
今日も買い物しすぎちゃったなー。店の思惑に今週も乗っかってしまったよ。 来週こそは別の店で買い物しよう〜。 毎週そう思ってるのに、なぜだか彼がそこで買い物してシールをもらうはめになる。 もしかして、彼は店長のまわし者なのかも…。 逆ハニートラップ?(笑) こらそこ!、○○トラップって言ったの、聞こえたよ! 奥さん!旦那さんの賞味期限
切れてますよ
☆今日の一日一善
・レジに並んだ時、後ろの男性の方がビール一本しか持ってなかったので順番を譲ってあげた。
★今日の一日一悪
・「すみません」と声をかけても避けない男性客にショッピングカートをぶつけた。軽くだよ、軽く。
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妄想ショー
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